24話 3回戦 鷹松西高校
初戦を終えた次の日、ミーティングを行った。3回戦の相手は鷹松西高校である。
中堅クラスの高校のため練習試合の映像はなかったので、春季大会の公式戦の映像を見ることになった。
2試合とも背番号1番をつけたピッチャーが最後まで投げ抜いている。
「フォームとか赤座先輩に似てるような?」
「球種もスライダーだけっぽいね」
「思ったよりもスピードが遅いかもな」
1年生で相手ピッチャーについて思ったことを話しあっていた。先輩たちも同じことを思っていたようだった。
赤座先輩に至っては「俺の真似をしているようだが、コピーがオリジナルを越えられる訳がないと豪語していた」
中学時代で対戦した時に色々聞かれてアドバイスをしていたらしい。それでフォームや変化球までほとんど同じように投げられるようになったみたいだ。赤座先輩の完成度に比べたら、どのボールも甘く感じてしまう。
「映像をみた通り、赤座のように投げているが球の質はかなり甘い。皆は普段から見慣れているはずだから積極的に打っていくぞ。注意するところは普段のタイミングで待っているとスピードが遅い分、思ったよりも球が来ない。各自タイミングが合わないと思ったらアジャストするまで見極めたり、カットして慣れていこう。相手の打線も特に注意するバッターはいない。白田なら十分無失点で抑えられるはずだ。次の先発頼んだぞ」
次の試合もレギュラー陣が試合に出る。試合展開によっては俺たちベンチ組も出番があるかもしれないという話だった。
そして迎えた日曜日。今日は第2試合の12時開始予定だ。日曜日ということもあり、学校の生徒もかなり応援に来てくれていた。
観客席を見回すと両親が手を振っていたので振り返した。その隣には幼馴染の芽依も観に来ていた。家が近所で小学校、中学校が同じだったので割と仲は良い方だ。今は女子校に通っている。昔から大会の時は偶に観にきてくれるんだよな。ありがたい。
1番前には担任の峠木先生率いる応援団部が学生服を着て声を張り上げている。顧問と一緒にできる応援団がモットーらしい。1人だけ歳の離れた人がいるのでかなりの確率でインタビューされるそうだ。
相手側のノックも終わり、試合が始まった。
前の試合に引き続きレギュラー陣は打ちまくった。4回表までに14得点をしたので、裏の守備から野手陣の総入れ替えで俺も出場することになった。
白田先輩は3回1安打1四球で1失点。納得のいかない表情をしていた。
白田先輩に代わって龍樹が3者連続三振をした。
俺もアピールしたいのに守備でボールが飛んでこない。
「打たせてもいいんだぞ。こっちが全くアピールできないじゃんか」
「投げては三振。これ天童流な。俺の球を打てない相手が悪い」
龍樹と冗談混じりに会話した。というのも俺は前の回のラストバッターのところに交代で入ったので打席が回ってくる可能性が低い。今日はアピールの機会がないかもしれない。
案の定、得点はしたものの俺まで回ってくることはなかった。
5回裏の守備、ここで点が入らなければコールドで試合終了になってしまう。この回は武藤先輩が投げるから飛んでくるかもしれない。アピール機会来いと願ったが、内野ゴロ3つで試合終了になってしまった。
昔から願えば願うほど思った通りにはいかないんだよな。今度からは願わないようにしようかな。
試合は17-1でコールド勝ちでベスト8進出。
次の相手から強豪校になるので、緩みがちな雰囲気を監督がピシッと締めて今日は解散となった。
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