第20話 ベンチ入りに向けたそれぞれの努力
平日は学校で練習を行い、休日は練習試合の日々を過ごしていた。他県への遠征も多いがこれにもかなり慣れてきた。
練習試合では、活躍できる時とできない時がはっきりしていた。
理由は単純に相手のピッチャーのレベルによってバットコントロールできるかどうかが変わってくるからだ。当たり前なのだが、レベルが高くなるほど投手の癖はなくなっていく。
普段から龍樹や赤座先輩の球を打たせてもらっていて、だいぶ速い球や鋭い変化球を打てるようになってきたが、まだまだ自分の思ったところへ打球を飛ばせていない。それでも少しずつ成長しているなと実感できている。
ただバットコントロールできたとしても、それがヒットになるとは限らない。まだ他校にはそれほどバレていないがいずれは俺の非力さに気付くだろう。その壁に直面した時にどうするのか考える。事前準備と想像が大事だ。常に全体を見渡してヒットを打つ想像する。
内野安打を打つイメージ、前進守備の内野の頭を越える打球を打つイメージ、バントヒットするイメージ。色々な想像をして打席に立つ。
代走などで出場することも多々あるが、いまだに盗塁成功率100%を誇っている。自分の足を活かすために塁へどう出るかを課題にしてやっていこう。
高野練ではカットすることをよく思われないことがある。それでも出塁するために自分がやれることはやってみようと思う。
頑張っていくぞ。
走一郎は今日も気合が入っている。
俺は今、ブルペンで投球練習をしている。自分でいうのもあれだが、俺には野球の才能がある。
リトルリーグでは優勝。ボーイズリーグでは全国ベスト4になった。それも投球制限で準決勝は投げなかった。実質優勝みたいなものだ。
そんな俺でも打たれることがある。少しの気の緩みでヒットを打たれたりするのだ。そんな時に強豪校は、良いバッターが多いと実感する。自分の球に自信を持って投げるが、少しでも甘くなれば、良いバッティングをされてとても悔しい。どんなバッターが来ても抑えられるように、球の質やコントロールを向上させないとな。
投手陣は積極的な意見交換によって、全体的に球の質が上がっていたり、コントロールが良くなっている。俺も他の人と意見を交わすことで、自分の考えとは別の考えを持っていて驚くことや感心することがあり、練習メニューに取り入れたものもあるくらいだ。これからも良さそうなものは取り入れていこう。
結果を残し続けてエースナンバーを奪うくらいの気持ちで取り組むぞ。
龍樹は今日の練習も手を抜くことなく努力し続けていた。
俺は守備が得意である。日々の積み重ねで得た技術は、身体が勝手に動くくらい染み付いているんだよね。桜田先輩にも負けていないぐらいの自信がある。
桜田先輩と野球について語り合ったりしていて気づいたことがあるのだが、守備に関する考え方が似ていると思う。
守備からリズムを作って、良い流れで打席に立つために堅実な守備をするところや試合の流れによってピッチャーに声掛けに行ったりするところ、常に周りを見ているところが一緒だなって思っていた。
桜田先輩は走攻守でハイレベルなので、話していて参考になることがたくさんある。俺はチャンスでは結構打てるが、ランナーがいない時は打てないことが多い。そのことを相談するとカウントによって狙い球を変えているそうだ。俺はストレートを打つ方が得意なので来るまで待っていると話すと、その考え方もありだけど、ランナーがいないと自由に配球できるし、何打席か回ってくるとキャッチャーにも狙い球が読まれることがあるから、ストレートを待つにしても悟られないようにした方がいいと言われた。
確かにチャンスの場面は、配球を予想しやすいから結構打てていたのかもしれない。これからはチャンスメイクもできるようにしていこうと思った。
秀介はシートバッティングで桜田先輩に言われたことを実践して、打撃力向上をさせようと練習に励んだのであった。
俺は今、走塁練習とバント練習に力を入れて取り組んでいる。というのも自分が将来レギュラーになる時に2番が適していると考えているからだ。
秀介と共にやってきた守備はかなり上手く、ケースバッティングや単打を打つ力はそこそこあると自負している。足りないものを考えた時に、走一郎が出塁した後、盗塁してから俺がバントをすることやヒットを打って1塁、3塁になった時に盗塁をすることがあると思う。
盗塁のアドバイスを走一郎から貰おうとしたら相手の癖を見抜くと言っていた。ここまでは理解できたのだが、この後は何を言っているのか分からなかった。
例えば、赤座先輩だとグローブを5cmくらい高くセットしていると牽制は来ないとか、龍樹はグローブのポケットにボールを握り直すような動作をすると牽制しないとか言っていた。
視力も良いし、観察力や洞察力がずば抜けているのだろう。本当に参考にならなかった。
走一郎に聞くのは諦めて、野田先輩や渚先輩に盗塁やバントのコツを教えてもらった。
先輩たちのアドバイスで基本に立ち返ることが大事だと思った。
バントだと身体をクッションのように柔らかく使ったり、引きながら当てるようにしたりと自分に合った方法を探っていこう。
盗塁はまずは無理に狙わない。そもそも1塁、3塁でクリーンナップで点を取れないかったら勝てないと思う。
2塁、3塁になればワンヒットで2点入る可能性はあるが、1塁、3塁なら球種を絞らせることやプレッシャーを掛けることもできる。
もしも単独で走るのなら、相手のピッチャーのストレートの速さやクイックの速さ、キャッチャーの肩の良さを見て盗塁をしよう。
優介は走塁練習とバント練習を試行錯誤しながらも有意義に練習することができている。
俺は常に一発を狙っている。フルスイングをすることが信念で、芯に当たって遠くへ飛ばせた時の爽快感がたまらない。これは野球を始めた時から変わっていない。ただ高校ではピッチャーのレベルが上がって、昔ほど芯で打てなくなってきている。特にカットボールやツーシームで芯を外される場面が増えていた。
長打力がある新川先輩にアドバイスをもらいにいくと、とにかく素振りをしてフォームを固めること。ウェイトトレーニングで筋力をつけてスイングスピードを上げること。あとは球筋を見極めて捉えることだと言っていた。カットボールやツーシームはストレートだと思って軌道をイメージしてしまうため、どこでどう変化するのか見極めなければならない。
竹バットを使うと良いと言っていたので、早速他の1年生に借りることにした。芯が金属バットよりも小さいため捉えるのが難しい。だが竹バットで芯を捉えられるようになったら成長ができるだろう。
幸洋は高校通算100ホームランという目標を立てている。100本打てば自ずと未来が開かれると信じて日々の練習を精進していく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます