第15話 四国大会 ★初戦 前半戦

 昨日しっかりと準備していたことでスムーズに会場まで向かうことができた。バス内も程よく雑談していてチームの雰囲気は良い。俺たちはスタンドで試合が始まるのを待った。


 初戦の相手は甲子園常連校で徳島県の鳴戸高校である。バッティングが良く県大会のチーム打率は.420と非常に高い。特に外野の2年生3人は走攻守でレベルが高く、1番打者〜3番打者を担っている。一守いちもり二ツ神ふたつがみ三刀屋みとやとすごい苗字が並ぶ。打順も相まって、階段上がりの3選手と呼ばれている。


「先発は赤座先輩だね」


「今日と明日を4人のピッチャーで乗り切らないといけないからな。今日はいけるところまで赤座先輩が投げて、明日は4人で繋いでいくんじゃないか?」


「赤座先輩はずっと調子良さそうだし、今日も良いピッチングして欲しいね」


「試合展開によっては、今試しているチェンジアップを投げてるって言ってたな」


「リードした展開で試せると良いね!」


「俺たちも声で貢献しよう」


「おー!」


 鷹松商業の先攻で試合が始まった。


 初回の攻撃は、野田先輩がヒットで出塁し、すぐさま盗塁でノーアウト2塁。その後送りバントと犠牲フライで1点を先制した。その裏、赤座先輩がマウンドへ上がる。


 皆が先制してくれたし、ここは気合を入れる投げるぞ。特に1番〜3番までは、5割を越えているし、しっかり押さえて流れを持って来たい。


 先頭バッター、一守への初球。

 低めのチェンジアップをバッターは空振りした。


 いきなりチェンジアップのサインが出た。2年生キャッチャーの吉岡は、大胆なリードをよくするんだよな。試すならもっと安心できる場面で投げたかった。だが感触は悪くない。


 2球目のアウトローのストレートをセンター返しにヒットされた。

 甘い球ではなかったと思うのだが、映像でも観たように打撃はやっぱり良いな。気を引き締めよう。ランナーも警戒しないと。


 1塁ランナーに牽制を入れる。あんまりリードしてないし、足もすごく速いわけじゃないからバッター勝負でも良さそうだ。


 2番バッター、二ツ神への初球。

 小さく曲がるスライダーをインコースへ投げ込む。肘を畳んでうまく打ちライト前ヒットになった。

 球自体は悪くないはずだが、初球からよく振ってきたちょっと嫌だな。1つアウト取って流れを止めないとな。


 3番バッター、三刀屋への初球。

 インコースへのストレート。フルスイングするも空振り。


 2球目はインコースへ小さく曲がるスライダー。

 このボールを完璧に捉えられて、スタンドまで運ばれた。

 相手のベンチは大盛り上がりである。


 すぐさま吉岡がマウンドへ来る。


「全部悪い球じゃないですよ。相手にストライク率が高いっていうのがバレてるかもしれないので初球は、ボール1個〜2個分外していきましょう。配球よりも使えるボールの確認を優先してしまってすみませんでした。」


「こっちこそすまん。最近はコントロールが良くなってゾーン勝負ばっかりだったからな。見せ球も使っていくわ。この回抑えたらじっくり話すぞ」


「焦らずいきましょう。」


「おう!」


 試合再開後も相手のバッターはボール球でもガンガン振ってきた。そのため4番から6番を凡打で抑えることができた。


 各選手ベンチへと戻る。


「すまん。打たれてしまった。」


「どんまい。まだ初回だし、立ち直れたみたいだからこれから逆転していこう」


「俺たちで取り返すぞ」


「おー!」


 士気が下がるかと思ったが、皆まだまだこれからという意志が強い。だが相手の士気も高く2回〜5回までは、両校ヒットや四球でチャンスを作るものの得点までは結びつかない。


 スタンドで応援している俺たちは大きい声で応援している。


「先制できたのはよかったけど、立ち上がりを狙われたね」


「だな。打たれたあと切り替えられたのは良かった」


「そのあとはいつもの赤座先輩って感じで安定感半端ないね」


「こっちの攻撃はヒットが出ても、相手にうまく抑えられちゃってるよね」


「まだまだこれからだし、俺たちが出来るのは精一杯声を出して応援することだけだ。先輩たちならやってくれるさ。このあともしっかり声出すぞ」


「おー!」

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