第11話 新体力テスト ★室内編
〜次の日の体育の授業前〜
「昨日の合計点数31点だったけど、みんなはどうだった?」
「士郎は室内の種目で巻き返せそうだろ? 俺は39点だったわ。満点逃しちまったぜ」
「凄いね。俺は30点だった。士郎に負けたくないから今日は頑張る」
「お互い近い点数だと意識できて良いな。俺は33点だった。走る種目以外はあんまり記録伸びなかったわ」
昨日の話しで盛り上がっていると、先生がやってきた。
「今日はペアで、すいているところの種目を回ってほしい。私は上体起こしのタイマーをやっているので、何かあったら私か反復横跳びのタイマーをやっている佐藤先生に声をかけてくれ」
クラスメイトはそれぞれ散っていく。
「何からやる?」
「動く系の前に握力と長座体前屈やっちゃおうぜ」
「分かった。そうしよう。さっさと終わらせるか」
握力と長座体前屈はすいていたためすぐに終わらせることができた。
2回測ったが、俺は握力が49kg、長座体前屈は65cmが最高値だった。普段から柔軟をしっかりやっているので、長座体前屈は良い結果が出た。やっていることが結果として見えると嬉しいもんだな。
龍樹は握力65kg、長座体前屈は46cmが最高値だった。身体の少し硬いところが心配である。握力はやっぱり投手だなって感じの数値だ。
「握力凄いな。普段から鍛えてるのか?」
「ハンドグリップは積極的にやってないが、投手に必要なホールド力を鍛えてて、懸垂やデッドリフトとかのトレーニングに関連して握力が強くなったと思う」
「そうなのか。俺も取り入れようかな?」
「走一郎は、下半身はしっかりしてるけど、上半身はまだまだ発展途上だから少しずつやっていくのはありだな」
「陸上やってた時は、下半身のトレーニングを多くやってたからな。これからバランスの良い肉体作りをするために取り入れるわ」
早くも2種目を終えたため少しのんびりしたあと、反復横跳びの場所へ向かった。
「先どっちがやる?」
「どうせ走一郎の方ができそうだから、俺が先にやるわ。2回目は多分疲れてるから、1回目でベスト出せるようにするか」
「分かった。頑張ろうぜ」
タイマーのスタートと同時に動き出す。
反復横跳びはあんまり得意じゃないんだよな。とにかく20秒頑張るだけだ。後半少しスピードは落ちたが、しっかりと全力を出すことができた。
「どうだった?」
「53回だった。途中から姿勢が高くなって動きに無駄があったように感じたぞ」
「姿勢の意識してなかったけど、高くなってたのか。次は意識してやってみるわ」
スタート位置に立つ。とにかく重心を下げて素早く動くことだけを考える。始まったと同時に左右へ無駄なく動き20秒間スピードが落ちることはなかった。
「良い感じだと思うけど、何回?」
「71回だったぞ。人間ってそんなに速く動けるんだな笑」
「自己ベスト更新ならずだったかー。あと1回で自己ベストに並べたんだけどな」
「惜しかったな。2回目ベスト越え狙ってみれば?」
「全力出したから2回目は流すわ」
そして2回目、龍樹は重心を下げる意識をした結果、57回とさっきよりも良い結果になった。龍樹が頑張っている一方で俺は流していたため65回だった。
そして最後の種目、上体起こしの場所へやってきた。
「毎回、龍樹が先だから今回は俺が先やるわ」
「今回は積極的だな。その心は?」
「どうせ勝てんから。あと早く終わらせたい」
「それはやってみないと分からんぞ」
「何事にも勝てる可能性はあるからな」
こうして、ぐだぐだ言いながら上体起こしを終わらせた。
俺はどちらも31回だった。上半身の強化は必須だな。
龍樹は1回目38回、2回目は手を抜いていたため30回だった。
やる前から分かっていたが、勝てる可能性0%だった。何事も勝てる可能性があるだけで、努力をしないと確率は低くなっていくもんだよな。
「全項目終わったな」
「そうだな。士郎たちと合流するか」
「おう!」
士郎と弥一が体育館の端で壁に寄りかかり、まったりしていた。
「おつかれ。結局どっちが勝ったんだ?」
「俺が捲ったんだよ!士郎に長座体前屈で10点取られてキツくなったんだけど、他の3種目で巻き返せたんだ。合計63点だったよ。ギリギリA評価になれて良かった」
「悔しいが良い勝負ができて良かった。来年は負けないからな。俺は62点だった。A評価に一点足りなくてこれも悔しい」
「2人とも凄い接戦だったんのか。来年は逆転できると良いな。俺は73点だったぞ」
「1点恵んでくれよー」
「自分の力で点数は手に入れなきゃ意味ないだろ」
「だよなー。走一郎はどうだった?」
「俺は69点だった。来年は70点越えを目指したいわ」
「俺も満点目指すわ。みんな来年は頑張ろうぜ!」
「おぉー!」
こうして2日間にわたる新体力テストは幕を閉じた。
後日、表彰状を貰ったのだが、1人だけB評価で貰えなかった士郎は少し悲しそうにしていた。
ごめんな士郎……
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