第9話 県大会決勝の応援

 Aチームに選ばれた1年生の5人は近くの席に座り県大会決勝の応援をしていた。俺もベンチ入り競争に生き残れて良かった。他に選ばれた選手は、龍樹と佐久間兄弟、シニア上がりでファーストの芝野幸洋だ。


「Aチームに選ばれたからといって選手権大会に出られるわけではない。だからこれからの練習や練習試合などでアピールを重ねていかなければならないな」


「普段の練習からテキパキ動いて少しでも印象に残るようにしよう」


「Aチームは俺ら以外先輩達だから、雑用とかも俺たちが率先して動こうな」


「何はともあれAチームに選ばれたことを素直に喜ぼうよ」


「そうだな!おっ、そろそろ決勝戦が始まるぞ。しっかり応援しよう」


「おー!!」


 こうして話しているとAチーム1年生ズの結束力は高まっていくように感じる。


 決勝の対戦高校は、私立の強豪校の尽聖学園だ。走塁と守備を武器にしている。元々堅守であるのに加えて動画・編集部という部活があり、色々な角度から撮影をしているみたいだ。それを編集して要点をまとめているらしい。それによって守備シフトを組むのが上手い。動画・編集部は将来を見据えた部活であるため入部者も多く、色々な部活から重宝されているらしい。うちの高校にも欲しいものである。


 春季大会は上位2チームが4月下旬の土日とGWにある四国大会に進めることになっている。4つの県で計8チームが出場となる。


 試合は順調に進んでいき、両チームエースの投げ合いで6回までが終わり4-1でリードしていた。


 先週の紅白戦もそうだったが、赤座先輩の調子はとても良いみたいだ。失点しても後続をしっかりと打ち取る冷静さがある。左投げのサイドスローでMAX142kmのストレートと小さく曲がるスライダーと大きく曲がるスライダーを投げ分けることができて制球力も良い。


 練習で打席に立つ機会があったが、フロントドアを上手く使っていて、狙い球を絞っても上手くバットコントロールをすることができなかった。速いストレートにも慣れないといけないし、レベルの高い変化球にも対応しないといけない。甲子園にはもっとレベルの高い投手もいると思うから、赤座先輩や龍樹の球をしっかり捉えられるように練習をしようと心に決めた。


 7回表に桜田先輩の2ランホームランで6対1となった。相手の2番手ピッチャーはここで降板となった。


 7回裏、赤座先輩に代わって2年生の山口先輩が1失点してしまった。


 8回表は、7回表の途中から3番手ピッチャーで出てきた2年生の流川さんに無失点で抑えられた。速球も速く、かなり良いピッチングをしている。


 8回裏、山口先輩に代わって3年生の武藤先輩が2失点して6-4になり完全に相手のイケイケムードになってしまった。


 9回表、3人で抑えられた。完全に相手の流れになっていた。


 9回裏、武藤先輩に代わって2年生の白田先輩がマウンドへ上がる。ヒット2本と四球で満塁になり、犠牲フライを許すも後続を打ち取り1失点でなんとか持ち堪え6-5で勝利した。


「終盤は応援してるこっちがヒヤヒヤしたわ」


「相手の2番手が出てきてから嫌な流れになったよね。対戦することもあるかもしれないから対策しないといけないね」

 

「かなり危なかったよね。こっちは投手全員出すとは思わなかった」


「なんとか勝てて良かった。ミスもあったし、俺たちにもベンチ入りのチャンスがあるかもな」


「龍樹のベンチ入りは堅いんじゃないか?」


「中継ぎ陣の先輩達は、今日は結果が振るわなかった。だけど自分の持ち味を出していた。監督からの信頼も俺らより1年も2年も一緒にやっているからある。それでもベンチ入りするには努力をすること、結果を残すことだと思っている。選手権までの練習試合でアピールしてみんなでベンチ入りを果たそうぜ!」


「おー!」


 龍樹は常に上を目指していて凄いと思う。俺も負けてられないな。普段からの練習や練習試合でアピール頑張るぞ。

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