第6話 高校最初の練習

 グラウンドでは先輩方と向き合う形で整列している。先輩方は44人おり、1年生は23人だった。この中からベンチ入りできるのは20人で3人に1人しか入れない。1年生はそれぞれがポジションや目標などを言っていく。


 自分の番が回ってきた。


「改めまして、春休みからお世話になっている速水走一郎です。ポジションはセンター志望です。リトルでは野球をやっていましたが、中学は陸上部でした。自分は背が低いので、それを活かしたプレーをしていこうと思ってます。レギュラーになれるように頑張ります。これからよろしくお願いします」

 

 良し!しっかりと伝えられたはずだ。

 程なくして1年生全員の自己紹介が終わった。


「キャプテンの桜田圭介だ。1年生のみんな自己紹介ありがとう。1年生でもレギュラーを奪うつもりで頑張れ。チーム内の風通しを良くするためにも積極的にコミュニケーションを取っていこう」


「監督の加藤信也だ。これから1年生も加えた新チームになる。甲子園出場して勝っていくためにも個の力が大事になってくる。各自が出来ることを増やして成長しよう。早速だがポジションテストをする。アップが終わったら始めるから心の準備をしておけよ」


 キャプテンと監督の挨拶が終わりアップに入る。怪我予防で柔軟体操を長めに行ったり、サーキットトレーニング、キャッチボールをした後、ついにポジションテストの時が来た。とりあえずピッチャーは全員の適性を見るみたいだ。

 バッターボックスにはキャプテンが入り、1年生はそれぞれ3打席分投げる。ピッチャーはやはり龍樹がずば抜けていた。

 左投げの龍樹とそれ以外で選ばれた投手はシニアで投手をしていた右投げの渡貫誠と左投げであまり投手経験はないが直球が魅力の中川理央だった。

 俺もアンダースローで投げていたので、多少驚かれたがその程度だ。


 キャッチャーのテストでは、立候補という形を取っていた。キャッチャー適正は1日で見抜けるというものではないし、きついポジションだし、周りを見ることやピッチャーとのコミュニケーションが大事になってくる。きついポジションなので、まずはやる気がある人を選ぶみたいだ。後々部活をやっていく中で良さそうな選手がいれば監督が声掛けをするそうだが、大体は最初に立候補した選手で決まりみたいだ。


 あとは内野と外野のテストだが、これは人数も多かったため基本的にノックをして、肩が弱いなどのウィークポイントがある選手や希望するポジションが多すぎるなどの問題がなければ、希望通りのポジションを守ることが出来た。ショートが人気ポジションで何人か他のポジションへコンバートさせられていた。

 自分を含め、知り合いはみんな希望のポジションを守れるみたいで良かった。

 そんなこんなでポジションテストが終わり、その後は軽く練習をして解散となった。


「お疲れさん。センターを守れてよかったな。あとアンダースローは驚いたわ」


「おつかれー。アンダースロー出来たんだね」


「お疲れ様。みんな希望のポジションを守れるようになってよかったね。地面スレスレから良くコントロールできるね?」


「低身長からのアンダースローは面白いなって思って動画とか見て少しだけやってたんだ。自分の活かせる方法を1つずつ試してるだけだけど。センターなら足の速さと球際の強さを活かせるから守れるようになれて良かったわ。てかさ、佐久間兄弟の守備どっちも凄すぎるんだよな。取るまでも、取ってからも早いし、難しい打球も全くエラーしないんだもんな。ゴールデングラブ賞狙えるレベルで上手いな」


「ゴールデングラブ賞は流石に盛りすぎだね。でも守備は練習の積み重ねで成長することができるから」


「それに俺たちは双子だから、幼い頃からノック練習とか交代でやっててかなり上達できたんだよ」


「双子だと気兼ねなく練習を誘いあえて良いな」

 

 双子で同じスポーツをやっていたら一緒に練習できたり、お互いで意見を交わせたりして良いなと思った。


 みんなで雑談しながら下校した。ちなみに1年生のまとめ役は龍樹が務めることになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る