第34話 頬を伝う

 私、雪菜が銃を握ったのは、六歳の頃だった。


 家の地下の射撃場で握った銃の感触は今でも覚えてる。六歳の私にとって、金属製の拳銃は十分重かった。


 私の一発目は的にかすりもしなかった。と言ってもその日、的に当たった事は一回もなかった。


 銃の引き金は、引いてはダメで絞るらしい。今でもよくわかっていない。


 数日練習してわかった。雪乃には才能があって、私にはないんだって。


 何か『ムサシ会』で作戦がある度、私はお留守番だった。雪乃もお留守番だった。でも、私は知ってた雪乃は私に気を遣ってるんだって。


 姉として情けなかった。頭の出る順番さえ違っていれば、こんな気持ちにもならなかったんじゃないかって。



 私も雪乃もお爺ちゃんが大好きだった。


 お父さんは私達のお母さんを殺した。特に私達を気にかける素振りも見せなかった。


 だから一層、面倒を見てくれたお爺ちゃんが大好きだった。


 私は、『ムサシ会』の為に何もできたことがない。それは、お爺ちゃんに何もできていないということ。


 私は勉強ができないから、正直お爺ちゃんの考えがわからない。でも、この最後の会議の為に私なりに精一杯考えた。


 これがお爺ちゃんにとって一番いいと思ったから。



「雪菜 やめなさい」


「私はやめない! 絶対やめない!」


 雪菜の頬を伝う雫が光を反射させた。


「私は 一人でも行くから!」


 雪菜が和室を出ようとした時。

 

「雪菜 絶対にわしの名前をだすんじゃない 本気なら自分の力で戦果を挙げなさい」


「私は本気!」


 そう言って雪菜は勢いよくふすまを閉めた。その後を雪乃が付いていく。


「お姉ちゃん! 待ってよ……」


「…………いいよ! 付いてこなくて!」


 雪菜の本心とは裏腹に強い言葉が飛び出る。


「私も お爺ちゃんの為に頑張りたいの!」


「! ……」


 また雪乃に、妹に私は甘えてしまうのか。


 雪菜は涙をこぼし、声を掠らせ言った。


「付いて来て…… 来れる……?」


「うん」


「あ…… ありがとう…… ほ 本当はもっと皆んなが…… 付いて来て…… くれると思ったの……」


「でも そうじゃないっぽいね……」


「うん 一人は嫌だよぉ……」


「一緒にがんばろ!」


「ありがとぉ……」


 雪菜が雪乃に泣きついた。




東バッドバッド! 俺も『新生ムサシ会』……」


「海 違うだろ」


 ヤナギが言った。


「え?」


「彼女達を逃す判断だ 痘痕あばたは確実にの雪菜を求めてやって来る」


 雪菜と雪乃が七歳の頃、二人は一度誘拐された。東バッドが助けに来た時にはもう既に。


 雪菜、誘拐犯及び関係者四十五名、自動拳銃一丁、完封。




✴︎後書き

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