第31話 手を強く握って

王子様インガさんの膝で寝てる…………)


 インガの胡座あぐらの上で猫が寝ている。インガが猫のお腹をそっと撫でる。


「落葉地区の破壊なら協力はしないぞ」


「なんで!! 意味わかんない! 危険な場所は無くなった方がいいに決まってる! 雪華も危険な目に遭ってたんでしょ?」


「っ?! っえ あ…… すみません どういう話ですか……?」


「私達は落葉地区を破壊して 成果が欲しいの!」


「え えと…… 破壊……?」


「雪華も危険な場所は無くなった方がいいと思うでしょ?」


「特定警戒区域だ」


 インガが雪華を試すように言った。


「っと?! 特定警戒区域?! 落葉地区がってことです……よね?」


 雪華は少しずつ声を細めた。表情もいくらか暗くして。


「ああ」


「特定警戒区域は無くしちゃダメです……」


「雪華もなんで?! あそこが無ければ雪華が危険に遭うこともなかった! どうして?!」


「雪菜さんの目的がこの街を危険に晒すことじゃないなら お勧めできません……」


 少し距離を置くかのような呼びに雪菜、雪乃が反応した。


「雪華……?」


 彼女達が雪華に対してした行動は優しいものだった。でも彼女達が味方であると認識していた。しかし、ほんの一抹の不安が拭えない。


 彼女達の正体が本当は恐ろしいものではないか。そう漠然とした不安が雪華の表情を暗くする。


「……ゆ…………」


 雪華の身体が自然と震えだす。


「雪華……?」


 雪華は手を力強く握り、彼女達を信じることに決めた。彼女達の優しさが嘘だと思いたくなかった。


「雪菜さん達は何者ですか……?」


「え…… えと…… 安全守り隊的な……?」

 

「嘘はわかります」


「そ…… そうだよね…………」


「誰でも構わない……です ただ私にしてくださったこと……嘘じゃ……」


「嘘じゃない! 嘘じゃないから…… 雪菜さんって……呼ばないでぇ……」


「え ちょ そんなに泣かないで…… 雪乃さ 雪乃も?!」


 雪華の涙が引っ込むほどに、大袈裟に雪菜が泣き、雪乃も泣いた。ついでにタイガも。


「タイガさんも?!」


「ご…… ごめん なんか涙が…… うつっちゃって…………」


(え)

 



✴︎後書き

最後まで読んでくれてありがとうございます。

この作品のジャンル、一応現代ファンタジーなんですけど、ファンタジー要素めっちゃ薄いローもローなファンタジーなんです。

SFだった時もありました。近未来ではあるんですが、他作品と比べると……

『バトル・アクション』みたいなジャンルがあれば……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る