敵の位置を完全把握する能力で国家警察の身分を隠して暴力組織の下っ端から成り上がる(仮)

第17話 ジト目

「遅い！」

　インガが外に出ると、雪菜がそう言った。

(そんな遅れてないが)

「……」

　彼女2人はスーツケースを転がし、インガとタイガは歩き出した。

「2人だけってことなくない？　ねえ？　しかもあんまり強そうじゃないし……」

　インガをジト目で見つめて雪菜が言った。

「インガは強いよ！」

「ふーん　あなたがタイガって言ったっけ？」

「そう　僕がタイガで　こっちがバディのインガ　雪菜ちゃんと雪乃ちゃんは姉妹なの？」

「そ！　双子なの！　私がお姉ちゃん！」

「双子？！　凄い！」

「でしょ！でしょー！」

(さて…… どうやって諦めさせようか…… 彼女らは一体何者なんだ？　ヒウは知っているのか？)

「雪菜ちゃんと雪乃ちゃんはなんで『新生ムサシ会』を名乗ってるの？」

「それはねぇ　お爺ちゃんがムサシ会……」

「お姉ちゃん！？　ダメだよそれ言っちゃ！」

「んぐ！」

　雪菜が自分で自分の口を押さえた。

「ナシナシナシ！！　なんでもない！」

「お爺ちゃん？」

「タイガ！！　あー危なかった……」

「危なかった……？　アウトじゃ……」

「いや　セーフだから！！」

　必死の表情で雪菜は雪乃に訴えかける。

(祖父がムサシ会関係者……？)

「なあ　ちょっと聞いていいか？」

「何？」

「破壊って具体的に何するんだ？」

「え？　えっと〜…… ボス倒す？　的な？」

「……はぁ　正直に言うが　落葉地区がなくなる事は俺ら　ていうかカナガワにとって良いことがない」

「は？　どう言うこと？」

「落葉地区が無くなったら困るってこと」

「なんで？　ってかそっちのボスも『いい提案だ』って言ってたじゃん！」

「口だけだ」

「嘘ついてたってこと？」

「まあ　そういうこと」

「意味わかんない！　ってかそもそもなんで落葉地区が無くなったら困るわけ？　危険な場所なんでしょ？　無くなった方がいいじゃん！！」

「管理されてる危険な場所だ」

「どう言うこと？　管理？　危ないまま放って置いてるってこと？」

「そうだ」

「破壊できないから困ってるんだよね？」

「違う　破壊しないで　敢えて残してるんだ」

「は？　敢えてって？」

「まず大前提に落葉地区にいるような犯罪者がこの世からいなくなる事は絶対にない

　社会にあぶれる者の割合は決まっていて　ゼロになる事はない　

　だから落葉地区が無くなれば居場所を失った犯罪者がカナガナ中を蔓延（はびこ）る訳で　

　まあ要は　野犬を野放しにするんだったら　首輪をつけといて飼っといた方がいいって事」

「わわ……　わかった　わかったって」

「なら……」

「落葉地区ってどこ！？！？」

　雪菜は落葉地区の行き方を求めた。

「……」

✴︎後書き

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