第15話 胸を張る

「YOH !!  YOH!!」


 そう意気揚々と雨の門を開けたのは、年端もいかないような女子二人組。


 男達は顎を突き出し、女子二人を睨みつける。


「ここのボスを出せ!」


 そう言うと、ニグレがのっそのっそと動き出し彼女の方へ近づいていく。レンはその後ろを付いて行く。


「君がボスかい? いい体格してっ……」


 彼女の言葉をぶった斬るかのように、片腕を掴んで壁に叩きつけた。


「ちょ ニグレ」


「へ へへ……」


 彼女は壁に叩きつけられた衝撃で舌を切ってしまった。しかし、意外にも血の出る舌を出しながら作り笑いを浮かべニグレを見上げた。


「機嫌を損ねてしまったんなら 謝るよ……」


「手離せ」


 レンがニグレの手を掴み、彼女から離した。


「結構重いの貰っちゃった〜 まあ全然余裕だけど……」


 明らかな痩せ我慢に、もう一方の彼女は呆れ気味だ。


「レン」


「誰ともわからん奴にいきなり掴みかかるな」


「そ……そうだ! まだ私…… 俺らが何者か説明してなかった! 俺の名前は雪菜!」


「私は雪乃」


「ちょちょ ちょっとー!!」


 雪菜が慌てて雪乃の耳に声を当てる。


「一人称は俺に統一しようって約束したじゃん!」


「さっき 私って言ってた……」


「言い直せ!」


「え……」


「言い直せ!!」


「いや……」


「い! い! な! お! せ!」


「俺は雪乃……」


「ということで俺らは…… 聞いて驚け!!」


 ニグレ含め男達が静かに耳を傾けた。


「『新生ムサシ会』だ!!」


「……」


 肩透かしを食らった男達。それもそのはず、誰一人として『新生ムサシ会』の名を知るものはいない、いるはずがない。


「ごめんだけど 『新生ムサシ会』ってのは?」


 レンが彼女に聞いた。


「『ムサシ会』知らないの?!」


「『ムサシ会』は知ってるけど……」


 『ムサシ会』、カナガワの隣“武蔵トウキョウ”を主に火場所とする暴力組織。


 かつての勢いは衰え、他勢力との抗争を避けるようになった。現在は自衛の為の最低限度の武力しか残っていない。


「そうその『ムサシ会』の後継組織! まあまだ『ムサシ会』はなくなっていないんだけど…… 嘗ての『ムサシ会』を私た…… 俺達『新生ムサシ会』が取り戻すんだ!」


(ムサシ会の名前使って大丈夫なのか?)


 とインガは思うだけで口には出さなかった。


「二人だけ……?」


「ああ! 構成員は常時募集中だ!!」


 そう自信満々とレンに胸を張る。思わず、一部を除いて彼女達を笑いものにした。


「騒がしいね 来客かい?」


 ヒウが現れた。



✴︎後書き

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