第12話 仙椎

「……」


 インガは親指を顎にそっと当て、何かを考えるかのように黙った。


「無策なら 剣を振ろうか? ファイアはもう少し遊びたいみたいだけど」


 レンがそう言った。


「一応俺の責任だ」


「自覚あったんだ」


 テンがマガジンをリロードしながら言った。


「……」


 インガはゆっくりと獣の方へ歩き出した。


「インガ?」


「タイガ 待とう」


 レンはタイガの腕を掴んで引き留めた。




 人工的に創り上げた獣を戦場に送り出し、殺戮の限りを尽くす事は少し前に一部の国が行なっていた。


 しかしながら、創り出す労力に比して成果が著しいわけではなかった。


 科学力を示すパフォーマンスか、財政的な駆け引きとして使われ、専ら主砲とはなり得なかった。


 現在は完全な下火で、かつてのテンプレートが使われている可能性が高い。


 動物本来の急所はブラフ。味方がランダムを孕んだ獣をいつでも強制停死させられるように。


「インガ兄ちゃんも 遊びに来たの?」


「……」


 獣の動きを見て、予測して最低限の動作で死線をくぐる。


 インガが獣の首元から走り込み、一気に四肢の間を潜り込んだ。


 強制停死のボタンは決まって仙椎の内側。


 銃声が三つ連なって、獣は電源が切れたように身動きを止めその場で倒れた。


「あああああああああああああ っは っは っは」


 我が子を悼み男は発狂した。


「終わっちゃった」


 少し残念そうなファイアと男を睨むインガ。


「一つ言いたいことがある」


「あああああああああ」


「アートライブズを倒産まで追い込んだのは 国家警察じゃない」


「う゛ う゛っるさい!!」


「本当の敵は『安全ジルミ』だ」


 隣国『安全ジルミ』、かつてアートライブズとデザインペット業界で凌ぎを削っていた『創遠』の所在地。


 今なお『創遠』のデザインペットは販売され続けている。




✴︎後書き

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