第23話

「皆さん、はいこんにちは。久しぶりですね。今日は空が綺麗です」


:綺麗ですじゃねえよw

:なんか数年振りくらいに声を聞いた感じが希ガス

:生存報告

:速報、主生きていた


「はい、ごめんなさいね。生存報告遅れちゃって」


:“2日くらい遅れている”

:遅すぎ

:本当に死んだと思ったジャマイカ

:なんで遅れた?


「いやー、実はですね。ボス討伐を終わらせた後になんか吹っ切れちゃって気絶したんですよね。それでなんと今の今まで寝ていたと」


:は?

:おいおい

:今なんて言った?

:サラッとやばい情報が

:え?

:9層ボス討伐?

:ちょいちょい理解が追いつかん

:えええ・・・・・・?


「ああ、そうか。みんなはあの後のこと知らないのか。では洗いざらい話しますね」


 そしてあの後起こった事を話し始める。

 ゴブリンロードに頭を潰されたことを。

 そして脳の自己治癒に成功したことを。

 ボスに勝利した事を。

 その後気絶した自分を尾間さんの部下が運んでくれたことも。


「──まあ、そんな感じですかね?あの後起こったことは」


:うん、なるほどね、そういうこと・・・・・・は?

:ちょい待ち、理解ガ

:言っている事は分かる。だが、何を言っているのかは分からん(矛盾)

:えあ?脳の自己治癒?

:そんな事出来るの?

:マジ?

:それってどのくらい凄いことなん?


「あー、脳の自己治癒はですね、これをするとしないとでは多分大きく戦闘の幅が変わると思います。現に私は新しい技術を身につけた訳ですし」


:要は魔力量が許すだけ身体強化を付与できるってこと?


「うーん、まあ、そうなりますね。私も細かい事はわかっていませんが、脳の魔力線だか処理限界だとかは気にしなくても良くなりましたね。すっごい便利になりました」


:それヤバくね?

:人類にはまだ早い技術

:脳への干渉って・・・・・・ええ?

:医療技術ですら未だに脳へ干渉出来ていないのにこの人ときたら

:普通にバケモノじゃん

:人外

:明らかにオーバーテクノロジー

:なお再現性は皆無につき

:やっぱ主は人じゃなかった?


「むう、失礼ですね。再現性皆無のオーバーテクノロジーを使用してすいませんね。でもそう言うのは乙女に向かって言う言葉じゃないですよ」


 無い胸をさすりながら述べる。


:wwwww

:乙女は草

:おと、め?

:頭を潰しても復活するのは人じゃ無いんよw

:やっぱり可笑しいわこの人www


「こう見えても私、24歳ですよ?まだギリ大学生って言える歳ですし」


:24歳、学生です(震え声)

:やめろ、その言葉は俺に効くッ

:留年ァ


 そんなこんなで下らないコメントを拾いつつ、ふうと一息つく。


「とまあ、そんな感じで9層ボス討伐しましたよ」


 こう言う時はなんだ?ドヤ顔をすればいいのか?

 ってことで精一杯の自信満々な笑みを浮かべる。


:ドヤってるけどシンプルに凄い

:映像としては残ってないけど凄くね?

:正直凄すぎてよく分からんが

:冒険者やってたら余計この人のやってることの凄さが分かる

:おめでとう

:イマイチよく分からんが凄いってのは分かった

:やっぱ流石やな。ワイはやるって信じてたで


 おおー、なんか捻くれ者のみんなが素直に称賛してくれてるぞ?

 てっきりいじられると思っていたが案外ちゃんと褒めてくれて、なんだかホッとするというか、くすぐったいというか。

 なんだか心のタガが緩んでしまいそうで怖い。


「・・・・・・うん、頭を割られた時は流石に死んだと思いました。でも、こうやって生きてみんなのコメントを拾えて・・・・・・私は幸せなんだな、ってなんか安心して、あれ?これは何?」


 何故だか水が目から溢れてくる。

 なんでだろうか。 

 悲しいなんて全く感じていないのに、苦しいなんて感じてないのに。

 でも、なんでだか涙が溢れてくる。

 

「ごめんね、みんな。泣いちゃって。でも普段は泣かないんですよ。ああクソ、なんで?止まれ・・・・・・止まれよぉ」


:えあ!?

:ちょ、ま

:ホッとしたんやな

:好きなだけ泣いてええんやで

:俺たちは離れんからな

:なんか・・・・・・初めて主が人間に見えた


「見苦しいところを見せちゃってごめんなさい。今日はもう配信できそうに無いんで配信切りますね」


:今日は休め

:好きなことでもしてどうぞ

:俺たちはいつまでも待ってるで

:ま、主が生きてたって事でいいじゃないか

:主も人間な訳なんやし、休んで気持ちを落ち着かせたらまた帰ってきてな

:【10000¥】美味い飯でも食って


 そして、配信を切った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る