3話 ピンク色 後編

「え?な、何で過去が?」

びっくりした様子で未来は双子の妹・過去を見つめた。

当然のように笑った過去の目は冷ややかに未来と目を合わせた後、アリスに顔を向けた。

「アリス、私はね、これっぽっちもこんな奴と仲直りをしたいとは思ってないよ。」

ふん、と鼻を鳴らしてアリスの顔を覗き込み、もう一度未来を睨んで見つめた。

「あんたに会うのは11ヶ月前だね。」

すると、未来も優しい笑みの仮面を外すようにして突然薄ら笑いを浮かべた。

「ええ、それぐらいかしらね。」

アリスは見たこともないくらい意地悪い感じをしている従姉妹たちを見て焦った。

「ねぇ、2人ともどうしたの?何があってそんなに怒ったの?」

ふぅっと息をついてから過去は面白いことを教えてあげるように楽しげに話し始めた。

「アリス、あんたにだけ教えてあげる。未来と私はこの通り、時の使い手。でもね、未来はあたしよりも上の魔法を使えるんだ。未来と過去、両方の時を操る魔法を使うのはほんの一握り。一方、私は時魔法の中でも過去しか使えない。最初からあたしは、あんたからしたおばさん、つまりあたしらのお母さんに失望されていたんだ。でも、未来はプレッシャーに押しつぶされそうになると、タイム・シャットダウンにしてしまう。あぁ、あんたもなったことあるだろ?時間を止めて自分を落ち着かせようとするやつ。それであたしが未来をタイム・シャットダウンを和らげようとしたけど、必死に未来は大丈夫なふりをした。それが嫌でたまらなくてあたしは未来を突き飛ばしてしまった。それでお母さんに家を押し出される時、未来はそれを止めようともせずにただじっと見ていたんだよ。」

アリスから涙がこぼれた。

ただ黙って泣くアリスを見て過去はため息をついた。

「ふん、わかったよ、今日のとこはここまでだけど、絶対また来るからね。」

いつの間にか消えてしまった過去ちゃんを見てアリスはふふっと笑った。

「あいつ、私が知らないとでも思ったのかな?なーんてね。」

「そうよね、アリスは完全に私側だもの。さすが演技の天才だわぁ。」

まぁね、天才子役を舐めてもらっちゃ困るんで。

そんなことを思いながらアリスは楽しそうに笑った。

「はい、今日のお代。」

アリスは未来から瓶を受け取ってから驚いたように瓶を見つめた。

「ピンク色?何で?」

未来に問いかけた時にはもう遅い。

気づけばアリスは自分の部屋にいた。

でも、瓶に貼ってあったメッセージを読むと色々わかるようになっている。

「なになに?へぇ…。はぁ、なるほどねぇ…。」

にやっと口角を上げて笑った。

「あの子は大したもんだねぇ。念の為、ピンク色・仲直りの色を仕込んでおいたんだから。」

きっと、未来は仲直りの色を全てバレてしまったら過去にかけるつもりだったのだろう。

「あはははは!!こりゃあもっと面白くなりそうだわぁ。」

その夜、不気味な笑いが近所で噂になった。

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