3話 ピンク色 前編
「ベイリーさんは、一人でいるのを好んでいらっしゃるようですが、お友達ともお喋りしてみると新しい出会いがあるかもしれないですよ。」
先生に何十回も言われてきた言葉。
学校で今学期最後の児童面談でアリスはぐっと歯を食いしばった。
イギリス・ロンドンから引っ越してきたアリスは学校が大嫌いだ。
お絵描きが大好きなアリスはいつも教室の隅で色鉛筆を眺めたり、絵を描いたりするのが好きだったが、喋らないと「ロンドンのお高いお嬢様」として扱われて馬鹿にされる。
「うちの子がもっと社交的だったらね。」とお母さんまで嘆いていた。
いつもそんな風に言われてむしゃくしゃしていたアリスは心の中で叫んだ。
「みんなとお喋りしたい!」
その時、アリスは間違えてバッグを倒してしまった。
「あーあ。」
すると、倒したバッグの後ろを覗き込むと可愛いカードが置かれていた。
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アリス・キャロル・ベイリー様
来色屋の店主・未来です。
今未来を変えたいと思いませんでしたか?
当店は未来を色にして売っている店でございます。
お時間がございましたら、ぜひ未来色屋においでくださいませ。
未来色屋・店主 未来
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地図を開けようとすると、眩しい光が優しくアリスを包み込んだ。
「いらっしゃいませ、本日の特別なお客様。」
美しい小柄な女の人が現れ、嬉しそうに目を細めた。
「あ、あなたをどこかで見かけたかしら?」
どこか懐かしいこの感覚。
「ふふ、さすがはアリスちゃんね。一年に一回しか会わない私を覚えてくれているんだもの。」
あ、思い出した!
「未来!あなた、私のいとこの未来ちゃんね?」
ふんわりと袴が広がった。
「正解よ!やっぱり覚えがいいわねぇ。」
また嬉しそうに笑った。
「わぁ、未来ちゃんだぁ!過去ちゃんにもこの間会ったんだ!」
私がはしゃいでそう言うと、未来ちゃんの肩がビクんと動いた。
「そうなのね…。過去はどうしてた?」
過去ちゃんと未来ちゃんは双子の姉妹だから、本当にそっくり。
「過去ちゃんはね、未来ちゃんみたいに、過去色屋っていうお店を作って、未来ちゃんと喧嘩した過去を一生懸命変えようとしてるよ。やっぱり、二人とも仲直りしたいんでしょ?」
未来ちゃんが一瞬だけ黙った。
「そうね…。やっぱりそうだけど。でも、あの子も悪いわよ。」
ぼそぼそとつぶやくように言った未来ちゃんにカッとした。
「は?テメェ何言ってんだ?自分の行いを振り返ってみろ。原因は全部オメエにあるわ!」
「え?」
私も驚いた。
振り返ると、そこに立っていたのは過去ちゃんだった。
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