【KAC20247】ネコノセカイ【800文字】

ほわりと

第1話

 猫は赤色が見えないらしい。


 私、一ノ瀬愛良いちのせあいらは小学校の図書館でそんな本を読んだ。人間の世界は赤、青、緑が見える三色型色覚。猫は青、緑の二色型色覚の世界が見えているという。


 猫にとっては赤色の物は黒色の物になるようだ。赤色で作られている色の白色や紫色、黄色とかも違う色に見えるらしい。


 膝の上で丸くなって寝ているルカちゃんを撫でると、気持ちよさそうに喉をゴロゴロと鳴らしてのけ反った。首に付いている赤い首輪がチラッと見えた。


 ルカちゃんの誕生日に赤いリボンをプレゼントしたことがある。アニメに出てくる猫みたいに首に蝶々結びをしたら可愛いと思ったけど、遊んでいて首が締まったら危ないからと言われて棒に付けておもちゃとして遊んだ。


 あの赤いリボンは黒色に見えていたのかな?


 それなら、トマトやリンゴは黒いボール?


 猫のおもちゃのエビのけりぐるみは人間が見ると可愛いけど、体が赤で目は黒いから全身真っ黒のエビということになる。想像すると少し怖い。ううん、スーパーで売っているエビは黒いから至って普通のエビかも。


 そういえば肌色も赤色っぽい。自分の手を見て、青と緑だけの色に置き換えてみる。想像しただけで少し気持ち悪くなる。猫にとっては人間は宇宙人の肌のように見えるのだろう。宇宙人なんて見たことないけど。


「ねえ、ルカちゃん。猫の世界では、私ってどう見えているのかな?」


 せめて可愛い宇宙人って思われていたらいいな。顎を撫でながら他のことを考えているのがバレてしまったのか、ルカちゃんが私の膝から降りた。そして私の目をじっと見てこう言った。


「ニャー」


 ルカちゃんが私の体や家の柱に体を当ててすりすりしてくる。お腹が空いた合図だ。立ち上がろうとすると上手く足が動かせない。一時間くらい座ったまま動けなかったから、足がびりびりと痺れている。


「あはは、ごめんね。ご飯をあげてもいいか聞いてあげたいけど、もう少しだけ……待ってくれるかな?」

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