7 思う様にならないことありますよね……それでも私は予定を変えません(震え声)
「――よ、よーし、行くぞぉ」
私達が異世界に召喚されて、4日目の朝。
私・
なにせ知らない人に会いに行くのだ……陰キャ的には気合を入れねばなるまい。
そうして、諸々の準備――護身用の装備も含む――を整えて、私は一人寮を出た。
目指すのは、レートヴァ教の聖導師長ラルエル様ことラルに教えてもらった、戦闘に慣れた、とても強い方が住んでいるという町の外れです。
召喚されて2日目の面談を終えた私達は、ラルからの一人一人へのアドバイスを踏まえた上で改めて今後の事を全員で話し合った。
結果、当初の予定どおり、冒険組と拠点組に別れる事になったんだけど、その内容はより具体的になっていた。
ラルがしっかりと皆と話してくれたお陰なんだと思う……感謝です。
私は――なんというか、非常に気が進まないんだけど、拠点組の女子の責任者という事になりました……いや、正気ですか?
そもそも私が初日にあの提案をしたのは、戦い難い人達への偏見を少しでも削ぐのが主目的。
なので実際に私がリーダーになるつもりはなく、むしろそうなるのは非現実的というか迷惑でしょ……と思ってたんだけどなぁ。
なんだけど、言い出しっぺの法則というか、
「提案したんだから最後まで責任を持つべきだろう」
という
ううう、どうしてこんな事に……?!
そんな訳で、私は拠点組女子責任者に任命されましたとさ。泣いていいですか?
あ、ちなみに男子責任者は堅砂くんです。
そこからさらに話し合いが進められ、拠点組は暫く拠点を作る為の勉強を進める事となりました。
今私達はレートヴァ教の皆様が町中に準備してくださった寮にいますが、いつかはそこから出なければならないわけで。
街の事、法律の事、資金の事――学ぶ事は多いですね、ええ。
時間はいくらあっても足りないなぁ。
幸い衣食住、さらにある程度の資金は、数か月与えられた猶予期間中において、レートヴァ教の協力のお陰で十二分である。
なんでも異世界人絡みのことは期間中ならレートヴァ教が全面的にバックアップしてくれるらしい。
だったら、その間に『独り立ち』の為の出来る事をしておかないとね。
で、心ならずも責任者に任じられた私は、ちょっとやさぐれつつ、拠点構築や独り立ちに繋がる事として『自分のやりたい事』についての許可を皆に求めました……はい、噛んだりどもったり声を裏返らせたりしつつ、ううう、この世界に来てから恥ずかしい事多くない?
いや、こう、目立つような事はしたくなかったんですけどね……これやっとかないと面倒な事になりそうなので。
ともかく私の行動については反対も覚悟していたんだけど、思いの他簡単に皆からの了解がもらえてホッとしました。
そうして全体で詰めた意見を元に、3日目の昨日は各自休息や買い物を行い――いよいよ召喚の4日目の今日、本格的に私達はそれぞれの活動を開始する事となっております。
「うん、こっちで大丈夫だった」
ラルから神官さん達経由で借りた地図を使って、私は街の外れの林に辿り着いた。
少し不安だったけど、しっかり地図どおりに進めてるみたいだ。
あとは少し坂道になっている林中央の一本道を抜けて、その向こうの吊り橋を渡ればいい。
正直途中で誰かに絡まれたりしないか心配だった。
大変失礼かもだけど、この世界に来たばかりなのでどのぐらいの民度なのか分からないですし。
こういうファンタジー世界ってかなりハードな世界観のところもあるからなぁ……。
ただ、どうも私は一人じゃないみたい。
私が警戒心バリバリで『私の中』で展開しているステータス欄には、近くにいるもう一人の名前が記されていた。
存在に気付いている事を告げるべきかどうか、悩みながら林を抜けると、そこには橋が――あれ?
「――えええ? 橋落ちてるんですが」
そう。
そこにあるべき吊り橋は、どういうわけか壊れていて、こちらとあちら……小さな谷の両岸でその残骸をぶら下げていた。
「こ、こういう時は慌てず騒がず、地図を確認、うん」
自ら冷静さを取り戻すべく呟きながら、私は地図を確認する――だけど。
「他に繋がってる場所は、ないみたい。うーん……」
他の橋や、迂回して向こう岸に向かうルートはない。
さらに言えば、お会いする時刻を決めている事もあり、今から引き返して街の人に訊く時間的余裕もない……というか、街の人に声を掛けるまでに時間が掛かります(陰キャ的な意味で)。
「うぅぅぅーん……こうなったら、やってみるしかないかな」
うーん、出た所勝負は好きじゃないんだけどなぁ。
ただ、いつも万全の準備で事に当たれればいいけど、そうもいかない時もあるからね、うん。
一応、こういう場合を見越しての準備は昨日テストしているし……やってみよう。
ふふふ、もし失敗したら崖から落ちて死んじゃうだろうなぁ。
そ、その時は蘇生出来るかの実験という事にしておこう、うん。
そんなネガティブなのかポジティブなのか分からない思考で自分をどうにか鼓舞した私は意識を集中――力を解き放った。
「よし……ふぅぅぅぅ……魔力、放出――!」
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