6 あ、その、まだ準備が……今はバレたくなかったです
「――。ご、ごめんなさい、遅くなったけど次の人どうぞ……」
引き留めようとするラルをどうにか説得して、個室から神殿の大広間に戻った私・
すると私の次、あいうえお順の
それを見届けた私は広間の隅の方に移動、クラスの皆の様子をぼんやり眺めた。
クラスメート達は今、暇潰しに謎の声(推定神様)に与えられた力の確認を行っていた。
というか自慢大会だね、あれ。
こちらを監視――というか見守ってくれている神官さん数人は苦笑しつつそれを眺めていた。
いやもう、神聖であろう場所で騒がしくてホントすみません。
もしもうちょっと騒がしくなったら謝りに行きます――私は心の中で謝意を込めて神官さん達に手を合わせた。
ひとまず今はそれで、と考えを切り替えて、私は幾つかのグループに分かれている事に気付く。
――うん、大体はいつもの感じだ。
こうやって団体行動を取っていると、自然に作られていく波長が合って行動を共にする集団。
それは異世界でも基本変わらない、いや異世界だからこそ、不安を打ち消す為に尚の事いつもどおりなのかもしれないね。
一番大きいのは、
彼の幼馴染たる
和気藹々という雰囲気で武器の召喚とかの見せ合っている……いいなぁ――楽しそうで羨ましいです、はい。
次はこのクラスの委員長、
ちょっと個性的な面々が集まるクラスなので、河久くんはいつも振り回されていて、そんな彼を助けたいと思う面々がここには集まっている。
河久くんは今もちょっと胃を痛めているのか胸を押さえている――気持ちはめちゃ分かります。胃薬持ってたら差し入れしたいです。
そして大きなグループで言えば最後、なんとなく威圧感のある面子のグループ。
一番目立つ
二つの大きなグループに入り辛い人達がなんとはなしに集まっているだけのようで、そこまで会話は弾んでいない――二つのグループをどこか羨ましそうに見ているのは気のせいかなぁ。
もしそうだとしたら私の仲間だね、ふふふふふ……。
他はと言うと、二人組だったり、私のように一人だったり――既に出来上がっちゃってるグループには入り辛いもんね、うん。
さておき、面談を終わらせてしまうと手持無沙汰だなぁ。
皆能力を披露してる訳だし、折角だから皆のステータス(プライベート的情報除く)を改めて確認させてもらおうかなと思っていると。
「おーおー、皆楽しそね☆
「ひゃぁっ!?」
いきなり背後から声を掛けられて、驚いた私はちょっと飛び上がり気味になった。
慌てて振り向くと、そこにはクラスメートの一人、
麻邑さんはいわゆるギャル的な人で、ぶっちゃけ私とは真逆の人だと認識している。
だが、別に仲が悪いわけではない、というか彼女はクラスの誰であっても日々気さくに話しかけている。
まさに陽キャの中の陽キャ――正直尊敬している所が多い人である。
まぁ
ともあれ話しかけてくれたのだから、と私はひとまず苦笑を返した。
「そ、そうだね――元の世界に帰れるかもわからないから不謹慎かもしれないけど、えと、その、ちょっとワクワクしてる所も、ある、かな」
「いやいやとりま死んじゃったりした子はいないんだし、不謹慎とか気にしなくていんじゃね?
相変わらず
「く、くーまじめ?」
「そ☆ 暗くてクールで真面目だからね。
四文字熟語だと……謹厳実直かな? 暗い要素ないけど☆」
そう言ってケタケタと笑うのがまたかわいい――私には無理だけど、やっぱり憧れちゃうなぁ。
「ところでさ、
「え? えーと――自分や誰かの強さを見れる、みたいな。
えと、麻邑さんは、ゲームとかのステータスって分かる?」
「――。
ああ、うん、わかるわかる。レベルとかのやつね? なんでそんなのにしたん?」
「い、色々な状況で自分の何が足りないとかがすぐにわかって便利かなって思って……。
そ、それに、あの声がファンタジー世界に向かってるって言ってたから、何かと戦うのなら弱点とか見抜けるといいなって考えたのもあったけど」
「おおー賢い! 敵を知り己を知れば百戦危うからずって言うもんねー」
「そ、そうそう。やっぱり知る事って大事だと思うから……」
「それなー。あたしも
「え、ええぇ? 曲者かなぁ?」
「うん、割とマジで。
わかりやすいのにしないのが侮れない感じでおもしろ☆
ね?ね? あたしのステータスも見れんの?」
「うん、――えと、見れるよ」
「おお、じゃあ、どんなんなってるか教えてー?」
そう言って麻邑さんは私を抱きしめて来た――うわー……ぎゃ、ギャルの香り?!
いや、その具体的に例えは出来ないんですけど、めちゃ良い香りと言いますか……それに身体の密着が!?
ふひひ、今日はなんか、他人に沢山接してもらえてうれしいなぁ……明日私死ぬかも。幸せで。
でも陰キャゆえのパーソナルスペースの広さゆえに落ち着かなさもある私……なんと罰当たりな――やはり死ぬしかないのかも。
うぐぐ、よく分からなくなってきた――と、私は少しドキドキしつつ彼女の全体的な数値を読み上げて言った。
彼女のステータスは全体的の半分ほど私を一回り上回っていた。
残り半分は私が少し上だったり同じだったりなので、ステータスだけ見れば同じレベル1でも彼女の方が強い、そう言っていいと思う。
「ほほぉなるほどなるほど。確かにそういうのが見えてたらワクワクするねー☆
「そ、それは――うーん、今はちょっと待ってほしい、かも」
別にこの力について話す事自体が嫌なわけではない。
でももしこの事を皆に話したら、彼女のように皆が皆自分の
その場合、全員分を伝えるのはさすがに大変だ……というかテンパった私が正しく情報を伝えられるか超不安だし。
人と話すからには私に出来る範囲にちゃんとしないと、うん。
それに、この能力についてはもう少し検証して、より利便性を把握したいし――
そうして彼女に話すのは待ってほしい理由をどう説明しようか、と考え込んでいると。
「八重垣さん、ステータス見れるってホント――?!」
「う、うん、そうだよ――って、え?」
尋ねられた声に振り返ると、そこにはクラスの全員が私の周囲に集まっていた。
というか、代表として尋ねてきた守尋くんはじめ、皆が目を輝かせてるんですけどぉ!?
「だったら俺のステータスとか教えてほしいんだけどー! あともらった力の詳しい説明とかある?!」
「――確かに、それは気になるな」
「おいおい、そんな能力を手に入れてたんなら教えろよなー」
「私のも教えてー!」
「ぼ、僕も気になるから教えてほしい……」
そうして皆は思い思いの異口同音で自身のステータスについてを要求してきた。
いや、あの、ちょ――距離が、かつてないほどクラスメートたちの距離が近いっ!?
そうして戸惑っている視界の向こう側では麻邑さんが、申し訳なさげに「ごめんね?」と手を合わせていた。
(あ、麻邑さぁぁぁんっ!? 私話していいって言ってないんだけどぉぉっ!?)
などと大声を出せればいいのだろうが、如何せん陰キャの私には無理でした。
そんな訳で私は、ラルが面談を行ってくれている間中、クラスの皆のステータスや技能について不慣れながら伝達する羽目になったのでした。
勿論噛むはどもるわ声が裏返るわで、皆様には大変失礼いたしました……やはり私は死ぬべきでは?(重度ネガティブ状態)
さておき。
それによって私はクラスの皆の現時点のステータス傾向と『神様からの贈り物』について把握する事となった。
―― 一応、それについて知っちゃっていいのか前置きした上で。
私はステータス数値の比較がしたかっただけで『贈り物』については見ないつもりだったんです、はい。
まぁ皆がOKならいいんだけど――でも、いいのかなぁと思ってしまう私でした。
そして、その際幾つか気になる事を知ったけど、それについてはまた今度。
ただ、元よりそのつもりではあったけど、どうやら当面私ははレベルアップを目指さなくちゃならないみたい。
ふふふ、私が生きていていい資格の為にも、憧れに恥じない生き方の為にも強くならないとね、うん。
そうして、皆に情報を伝えながらも思考を巡らせていた私は、その時気付かなかった。
ただ一人。
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