【峰】2本目〜流出した頼子が示す道

 リアルタイムで、やれ800万だ、一千万だと騒ぐスマホの向こうの奴ら。

 本当にお金の話ってやーよねぇ…さてさて再構築…あ…


『…まぁそんな感じ!良いじゃん、カズちん、その女もアタシにチョーダイ!1000万プレイヤーにしてあげりゅ〜♥嫁なんてこっちで探せばイージャン!』


 再構築モノを探していたら見てしまった…例のやつを…昔、NTRを良くわかってなかった俺が…最初に読んで『こんな結末付けられるなんてシュゴイ…』となった作品…俺は怒りどころか悲しみが頂点になった…奥さん…死んじゃったらなぁ…後悔してもなぁ…乳癌検査はしないとなぁ…親友が死ねば良いんでしょ的な感じで飛び降りた時はイラッときたが…


『凄いな、逃げた魚はクジラになったぁ…で、おめえよ?』


 シオンに適当に話しながら、俺はNTR名作再構築劇場ってシリーズがあれば間違いなく当たる名作を見て、心で泣いた。

 やっぱり罪は許さなきゃな、許されない罪なんて無いゼ…

 俺は心のままに喋る。


『なぁケンゴっつったか?俺はこの女に責任があるんだよ、頼子を預かるつもりだ、オメェと違って見捨てる訳ねぇだろ?アイツは俺には犬みたいな笑顔でパアッと笑う顔がな、本当に可愛いんだよ。だから俺のコネを全部使ってでも責任は取ってもらう』


 チラッとスマホの画面を見る。

 シオンが怒りに打ち震えている、何でだよ。

 コイツマジギレするとガム飲んじゃうけど…今やガムをストレートぇ食っている…絶対真似しちゃだめだよ…身体に悪いよなぁ…

 でもまぁ、ベニもそれなりに強いから…なんとかするだろう…


『だからって何で僕が…そんなお金を?何でそんな目に…』


 まだ認めない間男、戦場カメラマン君。

 俺は…人に怒るのが苦手だ。多分、キレたこと事って無いんじゃないかな?

 いや、親戚の兄ちゃんちに居候した時に犬の散歩をどっちがするかって時に、親戚の兄ちゃんが朝、俺が夕方って決められて…実は朝散歩に行ってなかった時ぐらいか…

 

 俺は…怒る…頼子の為に…コイツは本来、地獄に落ちても可笑しくない男だ…だから…アレを見る…




「・・・あ♥・・・・・・」




 頼子が小さく声を上げる。


 その視線の先で、100円で置かれていた。


 タイタニックのDVDだ。




 普通は作り過ぎたせいで産業廃棄物置き場に群生しているものだが、棚に一個だけ置かれるのは珍しい。


 だが、いまやって来た店員によって、廃棄コーナーに行く事が決まったようだ。


 白いタイタニックのがDVDが…アダルトDVDと一緒にひしゃげている。




「・・・・・・タイタニック・・・・・・・・・」




 頼子が、とても悲しそうな顔をしていた。


 タイタニックの死を儚でいる。


 自らがこれ以上なく好きな作品であるのに、映画学校の人間に否定され可哀想に思っている。




 頼子はひしゃげた鈴蘭に近づいて、その花に手をやる。


 そして優しく手を添えて茎を伸ばそうとするが、それは叶わない。


 ケースの中身はパイパニックだったからだ。




「・・・タイタニック・・・・・・・・・」













 流行。


 資本主義の豚、流行を憎むサブカル達。


 流行大好きな頼子という邪悪。




 誰が言ったんだ、そんなこと。


 ガ■の手先か?




 だったら俺がそいつとカタをつけてやる。




 俺は約束した。


 頼子と約束したんだ。





 ────いいか頼子。良く聞いてくれ。俺の前だったら流行りもんのドラマ見ても良いからな。俺はそもそも映画に興味無いから




 ────頼子の映画、学校行ったのに、結局何も作って無いみたいだけど…もしできたら絶対見る。約束だ。





 俺に約束を守らせないつもりか?




 そうはさせるか。




 そうはさせるものかよ。


『これはよ…オメェの作品じゃねぇ…頼子だよ…』

 

 俺は某◯だらけの騎士の一番好きな所を見ながら頼子との思い出を思い出した。


『ふざけんなよテメェッ!撮影したのほぼ全部売る奴がいるかよ!シリーズはなげぇし…頼子さ、これ、誰かが何とかしねぇと死ぬからな?分かってんのか?そこんとこ?』


 俺は何に興奮しているのか分からなくなったが、とにかく6画面分割ぐらいの頼子の作品(サンプル)を再生しまくった。


『これはよ!オメェじゃねぇ!この頼子の映画はよ!20✕4ページを全部見る!俺は決めたんだ!頼子がプロデューサーだろうと主演だろうと!ジャッキー映画でも泣いちゃう、20秒CMでも泣く感受性が豊かというか人が泣いてるだけで泣くんじゃないか!?ってぐらいの!皆がやってると何でもやっちゃう、安易な頼子のビンビンの作品をよ!』


 俺は怒っていたと思う…だって…そうだろう?

 結局、頼子は映画を作らなかった。

 編集してただけ…でもよ…見た事あるんだよ…学生時代の絵コンペ。

 難病に侵された女を美容師が何かする奴…台詞に【ちよ、待てよ】…青いTWのバイク…講師から何処かで見たことありますね(笑)と言われた頼子の卒業絵コンテ… 


『お前は頼子の卒業制作『美容師の休日』とかいうタイトル見て何とも思わなかったのかよ!俺でも見た事ある再放送が百万回!は言いすぎたけども!なんも作れない奴なんかいない!頼子は…ん?』


 ただの頼子の悪い所を言いながら、主演頼子の『広◯ア◯スそっくりさん』シリーズを流しまくっていたら、寝てる筈の頼子が、こっちを指さしてプルプルしてる…


『イヤアアアアアアアアアアアアア!!!!!』


『え?頼子!?起きてたん!?マジ!?』


 頼子が起きていた、そして叫んだ…俺が黒歴史を晒したからだろう…こんな事で俺に再構築出来るのだろうか?

 とりあえず落ち着いて貰わねば…


『頼子!落ち着け!違うぞ!?これは違…くはないけど安心して下さい!ほら、手を繋いだ!安心ですね?』


 近付いて気付いた…指さしてるの動画の方じゃん…てか、バレたなぁ…まぁいつかバレるとは思ったけど…


『アアアアアッッ!?わたじぃがぁ!なんでっ!なんでぇっ!?ウアアアアッッ!!』


『大丈夫!俺がいるから!一緒にいるからな!』


 俺は安心させようと思うが何も思いつかない…自分がなったら多分、流出したー大変だーぐらいしか思わないから気の利いた一言が言えない…

 とりあえず悪は死ぬ事だけ伝えよう…


『いやぁァァァ!!こんなのっ!こんなァァァ!!』


『よーしよし、大丈夫だ。戦場カメラマンは洗浄された。これからは安全安心の家造り、住み慣れた、我が家は?ほら、歌ってご覧?』


 どうしたものかな…俺の知る限り壊れた直後は、話が出来ない。時間が解決する。つまりやる事はない。


『カズちん…どういう事?その、女…何なの?私は?答えて?その女?』


 元から…壊れている人間は時間で解決しない。

 解決の方法は来世に行くのみ。


『え?あぁ…俺はシオンの幸せを願う、ブチ狂った君はいつだって無敵だ…物理的に。おめでとう』


『本当に?♥ヤッタァ♥無敵だって♥』


 とりあえず頼子の頭を撫でる、体を引き寄せ軽く抱きしめる。

 安心感を頼子に与えねば…って思ってるのにスマホに映る殺人コスプレ女が五月蠅い。


『ねぇお願い♥その女寄越して?♥ねぇ♥悪いようにはしないから♥大丈夫♥ちょっと出演するだけだから♥世間に出れなくなるだけだから♥』


 コイツは頼子の【そっくりさんリターンズ】もしくは【4Kプレミアム版】でも作る気かな?4Kは容量凄いからな…一回パソコン飛んだわ…


 俺が再度、スマホ小説に逃げようとしたらベニがアイコンタクトして喋り始めた…片目でウィンクはやめろ。


『シオン、なるべくあの女に似てる奴用意してよ。顔出せる奴ね』


『は?何でアタシが?ベニがやれよ』


『シンはなるべく似てるシチュエーションで同タイトルで配信してくれ』


『あぁ…まぁやるけど…結構金かかるよ?数タイトルタダで出す金額だよ?そこまでする必要あんの?』


『あぁ…まぁ…祝いだよ、俺等からカズへの。シオン、カズも喜ぶぞ?』


『本当に♥絶対?♥違かったらキサマをぶち◯すぞ?』


 シオンが危険な事を言ってるなぁと思ったら戦場カメラマンの様子がおかしい…と、思ったら走って逃げた!?

 俺はとりあえず頼子の側に居続けてもしょうがないから追っかける…


『待てよコラァ!』『いやだ!僕は関係無い!』


 スマホから溜息混じりでベニが言う。


『とにかく間もなくウチのモンが着くから、その男拾ってもらって、ハイ終わり』


 玄関にどう考えてもカタギではない、中国系のスキンヘッドと、東南アジア系のドレッドの人が立ってた…もーやだぁ…



※色々と出来なくてすいません!誤字脱字関係ですぐ更新するかもです…


 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る