水と葉巻とチューインガムから見た①【売者 トバシ 洗って 詰める】

『『『『代表!おつかれさっすっ!』』』』

『おう、お疲れ様。この住所に車向かわせといて、高速使えば2時間で行くだろ?2人いれば良いよ』

『ういっす!おい、2人向かわせろ』


 会社に入りながら部下に指示する。

 昔、2人でカズと一緒に立ち上げた【便器】というグループ。

 それが今や会社化し、増えたメンバーの1人が便器が嫌だというので【ヴァルキュリア】という名前になった。


 最初は四畳半のカズの部屋、2人だけが始まりだった。

 今は自社ビルを建て池袋を一望している。


『いや〜からお願いされちゃったなぁ〜』


 スゥ~…ヴアハァアアアアアアア〜


 シーシャ(水タバコ)から吸い込んで、大量の水蒸気を吐く。

 事務所の応接室に充満する蒸気。

 

 俺、山城やましろべに…親しい間柄ではベニーと呼ばれている。


 カズとは俺が17で渋谷をウロウロしてた時に、カズが18で東京に出てきた時にお互いに深夜の日雇いバイトをしていた所で意気投合した。

 俺は当時、非常に生意気な所があったし、193の身長に南米かどっかの血が混ざってるせいか、さらに見合った骨格…ゴツい身体に成長した結果、先輩やら地元の暴力団から目を付けられ喧嘩の毎日。

 関わってきても潰そうとするか、ご機嫌取りか、関わらない様にするだけ。

 

 だけどカズは…今考えれば馬鹿というか何というか…深夜の仕事の時にポロッと自分の話をしたら…


『そんな悲壮感のある語り口で自分の事話すならさ、お前、頭良いんだから高校行って就職しなよ。面倒くせぇな』


 何処が頭が良いのか?馬鹿にしてんの?って聞くと、


『だって俺、馬鹿だからお前の立場と身体があったら面倒臭くなってその金庫強盗やらヤクザの手下やるもんよ。それを喧嘩してでもやらないって事はそれが周りから見て頭の悪い事って分かってんだろ?だったら通信でも行って高卒の資格取ってさ、普通にやれよ。中身は別に普通なんだから』


 中身は別に普通の人…そんなストレートに言われたのは初めてだった。

 昔からカズにはタメ口だけど、もし兄がいたらあんな感じなんだろうな。

 俺とカズは常にイーブン、どんな時でもいくら離れても何もしがらみ無く付き合える。

 だから親友という言葉が1番しっくりくる。


 そんなカズだが仕事の規模が大きくなるに連れ、興味を失い、会社として動き始めた時、離れていった。

 煙草を大きく吸いながら『何か新しい事したい』…と、カズが言った。

 カズが嘘ついている時は大体煙草を溜息を出すように吸う。

 多分、ただ疲れただけだ。しかし、俺以外の幹部連中は本質を知らない。

 だから理由を付けただけだ。

 

 そして、すがる様に引き止める幹部連中…と言っても2人か…すがってんのに、再開するにあたって条件を出した。

 ちなみに俺は引き止めなかったから条件がゆるゆるだったなぁ(笑)


 プー…パンッ!プーッパンッ!

 

 『ねぇ…ベニー?アンタ、何ニヤニヤしてんのよ?なんか隠してない?』


 それに引きかえ、今、眼の前で、凄まじい眼圧で俺に疑いの目をしながら、ガムを膨らませては破裂させる女、シオン…呂伯リョハク紫音シオン…シオン名義でモデル、タレント、アパレル業等幅広くしている…中国は、華僑だかマフィアだか知らんが大陸系のヤバいのと繋がりがあり、主にVIP相手にアテンダー?モデルエージェント?みたいな事をしている。


『ねぇ?ベニー?聞いてんの?オイ!なぁ!?ベニィッ!!』


 俺は良く分からないから『手配師』とか『人身売買業者』とか悪モンの言い方変えてるだけだろ?と言うとキレる。

 そして今、目の前でキレている。会社内で、俺はともかくシオンにキレられて平気なのは、知ってる限りカズぐらいだ。


 ちなみにシオンはカズの元カノだ。

 顔が良く、金も人脈もあり、派手な世界の人間だ。

 可愛げは無いがとても美人だ、ただまぁ、大陸系の美人だな。日本人的な可愛さではない。

 そしてカズの為に何でもすると言っていたが、俺はコイツの問題点を知っている…というか今まさに問題が起きているからカズが意味不明な別れ方をした理由も何となく分かる。


 というか、カズの別れ方は問題をすり替えて『俺には釣り合わない』とゴリ押ししただけだったな。


『…………カズちん?まさかカズちん絡みの話なの!?なぁ!?そうなんだろ!?ベニーッ!おいっ!聞いてんのか!?』


『え?カズ?来るの?『オメェはだぁってろ!返事しろよベニッ!』…はい』


 シオンに提示したカズの再開の条件はなかなかハードだ。

 なんせ一応、短期間とは言え元カノで、シオンは5年ぐらい経っても未だにカズを忘れられないのに『結婚したらまた会おう、旦那と一緒にな。それまでは会えない』だからな。


 んで、もう1人、今ちょっと音声を発したが、シオンがイライラしてるとすぐ黙るメガネのイケメンオタク…中原なかはら進次郎しんじろう、アダ名がシン…ヴァルキュリアのシステム関係やお金の管理を主にやっている。

 ヤクザの家の次男坊でネットにやたら強い、カズとはエロサイトやエロ小説で繋がっている。


 シオンが女を用意して、俺が取り仕切り、それを管理するのがシン…会社が大きくなる前はカズが外部とやり取りしていた。


『絶対そうだっ!クソベニ!カズちんがなんだってっ!?言えよテメァ!オイコラァッ!』


 しかしうるせぇなコイツ…

 まぁ、俺だけが未だにカズと連絡手段を持っているからな。コイツも必死か(笑)


 俺の場合、連絡するのは高校卒業したらとか言ってきたが既に卒業した事を伝えると渋々メールアドレスを教えて来た。

 そして会うのはウォッカと煙草をやめてから。簡単な条件だ。

 既に俺は全てをクリアしてるからな、通信は卒業し、酒は日本酒だし、シーシャは紙煙草じゃねーし(笑)

 電話は酔って電話してきたらウザいから教えないとか言ってヒデェ話だわ。


 何か結婚するとか言ってたから、コソッと会いに行こうかな?嫁さんに挨拶出来るかな?ぐらいの感じだったが…


 後、シオンが『カズちんがやめるって言ってたけど煙草吸ってたら約束破棄する!』とか言ってたけど多分、カズはまだ吸ってるだろうよ。




 まぁそんな俺達にカズから依頼だ。

 ただ、1日か2日はかける事を1〜2時間でやろうとするから俺以外の奴にバレた。それだけ。


 俺はカズにメールする。

【終わったよー、でも皆にバレた】

 とだけ。


 すると面白い事に俺の業務用スマホに知らん番号から電話かかってきた。

 多分カズだが…知らんぞ俺は、シオンがいるんだぞ(笑)


 しかし、カズかと思ったら女騙して動画販売してた新沼って奴から電話が来た。


 とりあえず仕事だ。自分がやった事を理解して貰う。

 まぁ端的に言えば販売していたウチに迷惑かかってるからケジメ取れ、筋で言えば今までの売上は女に流れるから無効、その分借金になるからとか淡々と説明している最中にシオンが割り込んで来た…

 

『おい、ベニ、ビデオ通話にしろ、聞こえてんだろクソ債務者、お前も今すぐビデオ通話にしないと今から殺しに行く』


 俺の横でスマホから新沼という債務者に無理難題をふっかける。コイツ、カズの事になるとやたら勘が良いな。

 そして『はい…』とか言い出す新沼…マジで?


 そしてビデオ通話に切り替わると…


 目が座った状態で煙草を吸ってるカズ、コートに全裸で白目向いて寝てる女、そして黒いタンクトップにスウェットの男3人が何か作業している。

 何やってんだカズは?相変わらず意味わからないな…


『え?何?は?ビデオ通話?あ?あぁベニか、ひさしぶ…?』


『おう、《ガズ》ひさしぶ『生カズちんダァ♥!かぁっこ良いなぁ♥あ!煙草!約束破ってる!もう住所調べるからっ!約束無効だから!絶対に約束!ちょっと待って!』


 なんかよくわかんねぇけど、本題をサクサク進めよう。

 カズの顔も、そうしろと言っている気がする。


『とにかく、新沼?だっけ?テメェはルールを破った。だからけじめは必ずつけてもらうんだ…が…』


 俺の視界には全裸のシオンが…何か着替えている…何か前開きのキャットスーツみたいな服に着替えて…狐の耳…尻尾…眼鏡…何やってんのコイツ?

 え?何かの銃を持ってんぞ…


『ほら!カズちんの好きなコスプレしたよ!何かゲームのキャラ、何かのスパイなんでしょ?♥ね?♥嬉しい?♥会いたくなっちゃう?♥』


 画面から完全に俺が消え、画面一杯のシオンは何やら変な格好でクネクネしている。本物っぽい銃火器持ってるけど玩具だよな…


『それにほら!♥本物のAK74‐Mだよ!♥どう?カズちん会いたくなった!?♥』


『会わない間に綺麗になったな、シオン』


 シオンの身体がビクッ!と揺れる。


『だ、ダメだぁ…やっぱりカズちんだぁ…♥戻ってきて♥結婚しよう♥』


『どうやら逃したら魚は大きかったようだ…』


『うん♥うん♥だからもう一度!♥ね?♥一緒に住もう?♥』


『どうやら大きな魚…出世魚…だったようだ…逃してしまったな…遥か遠くへ…もう俺の竿では釣れないな…それでこの配信者なんだけど…』


 会話になってねぇし、シオンはお前がリリースしたんだろうが…しかも竿って…

 

 俺はシオンをどかし話を進める。

 

『だからまぁ、さっさと俺等の所に来い。借金額について話してやるから…』


 まぁ数百万だろうよ。女が警察やら裁判に持ち込まない限り。

 ところがこの新沼、馬鹿なのか逆ギレした。


『ど、どうせ前から話しつけてたんだろ?半グレに頼んで何かやってんだろ!?僕は春山組の人知ってんだぞ!?』


 スゥ~…ヴアハァアアアアアアア〜


 スゥ…ハアアアア…


 俺とカズか同時に吸った、懐かしいなぁこの感じ。カズが先に話を始めた。


『俺は原田組の若中知ってんぞ?そういう話にすんなよ?バックなんて、おいそれと出すもんじゃねーんだ、特に自分の筋が間違えている時はな…』


 カズ…名前忘れてる、間違えてるわ。お前を懇意にしてた爺さんの組は原口組だよ、若中じゃねえよ、会長だよ。多分『お前、何中?』のノリでやってんだろうな…

 あんだけ仲良くやっていた爺さんを忘れるなよ…お中元を送れないって爺さん嘆いていたぞ?


 まぁ、 当時もこうやって適当にやってたな、そんであれよあれよと言う間に会社がデカくなったんだよな…


『もう良いだろガズ…信じよう信じまいとウチはケジメつけるだけだ。女を情でくいもんにした末路はこんなもんだぜ?』


 さて、俺も演技してさっさと終わらせるか。

 何故ならシオンが俺の頭にAKとやらの銃口を向けてるからだ。


『《ガズ》よぉ…そいつ殺してぇなら原口組に頼め、その女から金絞りてぇシオンに預けろ、両方ならウチに戻ってこいよ?歓迎するぜぇ』


 シオンの名前を出しとかないと殺されかねないからな…案の定、銃口を下ろした。

 カズがまとめようとする。


『全部嫌だわ…たださぁ…新沼君?これでわかったろ?自分がどんな事してたのか?』


 そして、シンが会話に参加しようとドヤ顔で会話に参加してきた。


『皆〜そいつのデータ出たよ〜新沼賢吾、何人かオンナいるのね、それに…まぁ、コイツ救いようねぇな』


『シン、貸してよ…あぁこのクソ、嫁いるしね(笑)とりあえずぅ〜アタシの方で800万ねぇ?シンの所で?』


 いや、金額盛り過ぎだよ。コイツ等、なんか知らんがカズに良い所見せようと無茶苦茶言っとる。


『300万だよ、だからシオンと合わせて計1200万。親族と嫁でかき集めて貰って駄目なら漁船2年、後、臓器頂きマンモス』


『な、なな、何で僕が!?そんな大金を!?』


 カズも何となく金額が目茶苦茶なのに気付きているがシオンと話したくないんだろう…俺の目をビデオ電話越しに見るな(笑)


『契約書書いてないんだろ?レ◯プして配信したようなもんだからよ?こっちは大損害…デリケートに終わらせる案件何だからな?』


 一応、俺だって終わらせに向かおうとするがシオンが…


『そっから先はア・タ・シから〜…』


 この女は、本当に悪どい。本当の様な、嘘じゃない話をペラペラ喋り800万に説得力をもたせる。

 良い所を見せようと必死だな…


『…まぁそんな感じ!良いじゃん、カズちん、その女もアタシにチョーダイ!1000万プレイヤーにしてあげりゅ〜♥嫁なんてこっちで探せばイージャン!』


『凄いな、逃げた魚はクジラになったぁ…で、おめえよ?』


 カズが流した、雑に。そしてカズがテレビ電話終わってから言えば良いのに余計な事を言った。


『なぁケンゴっつったか?俺はこの女に責任があるんだよ、頼子を預かるつもりだ、オメェと違って見捨てる訳ねぇだろ?アイツは俺には犬みたいな笑顔でパアッと笑う顔がな、本当に可愛いんだよ。だから俺のコネを全部使ってでも責任は取ってもらう』


 今のはアウト。どういう意味かと言うとシオン的にアウト。

 カズ…お前ウチの会社にはダイナマイトがあるんだよ?炭鉱にでも見立てて爆破したいのかな?

 シオンがこっちにいるのに何故煽る?

 

 ミシミシ…ギリギリギリ…カタカタカタカタ…


 シオンが怒りに打ち震えている。

 コイツマジギレするとガム飲んじゃう…身体に悪いよなぁ…

 そのブチギレのシオンこと、自称女スパイは今まさに、真っ直ぐ行って女をぶっ殺そうとしている。

 カズがシオンの前で他の女を褒めたからだ。

 カズ、責任取ってくださいよ、今、戦争で使う本物の銃持ってるんだから…


『だからって何で僕が…そんなお金を?何でそんな目に…』


 新沼君、君は話を伸ばすな。

 カズ、頼むからその白目向いてる女をフォローするな…てゆーか女…頼子ってのか?起きてね?


『ふざけんなよテメェッ!撮影したのほぼ全部売る奴がいるかよ!シリーズはなげぇし…頼子さ、これ、誰かが何とかしねぇと死ぬからな?分かってんのか?そこんとこ?』


 良く分かんねぇけど…その頼子っての、多分目が開いているんだが…カズ、そんなにその女が出ている広◯ア◯ス似シリーズのエロを流しまくるな…何とかしねぇとじゃなくてお前が今まさに殺してるぞ?その女、起きてるから。


 シンが葉巻を吸いながら楽しそうに笑う。


『ハハハ、カズだけ気付いていない件(笑)カズWEB小説好きだもんな、流石(笑)俺なんかやっちゃいました?(笑)やっちゃいました(笑)』


『イヤアアアアアアアアアアアアア!!!!!』


 急に女が叫んだ…そりゃそうだろう。


『え?頼子!?起きてたん!?マジ!?』


 さて、どうするのかしら?とオカマ口調になるぐらい、とりあえず俺は…シオンから銃口を突きつけられ住所を言えと言われている…カズ、流石だな(笑)

 




※諸事情で更新遅れましたん、雑に更新したから改稿するかも…すいませぬ。今夜あたりコメ返ししたりしなかったり…

⇛2時間後に更新、誤字脱字か多過ぎた。

 

 

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