四本目〜何でクイズの司会みたいなポジになってんの?

『あっ!?和樹さん!聞いて!お願い!聞いっあ!?』プーップーッ


 とりあえず自決を止める為に電話をしたが、正直話す事がまとまっていないので電話を切った。

 電話が切れて困惑しながら叫ぶ、頼子の音声がマイクに拾われてる。

 

『なんでぇっッ!?切っちゃうのぉっ!?』

 

 お前が手首を切ろうとするからだよ。

 

 俺も落ち着く為に4本目の煙草に火をつける。


 スゥゥゥゥゥゥゥゥ…ハァーーーーーーーーーーーーー


 ちょっと焦って深めに吸ってしまった…


 しかしまぁ、誰に言ってるのか分からないが、聞いて欲しい。


 俺は確かに、頼子…お前が浮気している事を知っているぞ…と、明日まで時間を使ってじっくりと、心の含め準備をしてから伝えようとした。

 しかし頼子は行動力が高過ぎて後続を振り切って敵の本陣に食い込んじゃう武将みたいな動きをした。


 では本陣にいる俺は?

 パニックに決まっているじゃん?

 しかも本陣に食い込んだ猛将・頼子もパニックになってるからタチが悪い。

 一見、『計画通り…』みたいな動きをしたが、実際は『そこに壁があったから曲がった』みたいな虫みたいなノリでこの状況になってしまった。


 俺はじっくり考えながら動くタイプなんです。

 好きなゲームはメタル◯アシリーズや影牢シリーズです…こんな、ゲームが始まった直後に見えない弾(頼子)で死ぬのは嫌だ。


 関係無い事を考えながら落ち着こうとすると頼子がまた手首に刃物を…

 仕方ないから電話をかける。


『あ!和樹さん!切らないで!ちょっあ!?』プーップーッ


 包丁を離したら電話を切る、何だコレ…クソゲーみたいだな。


 おや?…頼子の動きが…


 『もしかして…和樹さん…どっかで見ている?…この声も聞こえてる…の?…』

 

 いきなり頼子がタンスの何センチかの隙間を覗いたり押し入れを開けたり、壁の隙間。覗いたりと不審な動きをし始めた…

 てゆーか、俺がやってるのって、昭和の誘拐犯とかの…それじゃね?

 そして逆探知しようとする警察・頼子。


『お願いっ!出てきて!話を聞いて下さいッ!』


 俺は昔の心霊映像に出てくる隙間の奴じゃないんだからそんな所にいない。

 俺はカメラがバレたらそれはそれで面倒くさいので電話で話す事にする。そして作戦は…


【俺も被害者、お前も被害者、理由は聞かないけど裸がちょっと出たぐらい大した事無いよね作戦】


 ガッツリ本番動画が各所に流出するのはほぼ確定しているが、今のうちに慣れさせて頼子のダメージを軽減するのだ。

 勿論、別に新たな動画を撮って流出させる訳ではない。


 色々、頼子の姿を見た時に思ったが…この性流(出)哀れみの令の気分が抜けないと、正しいジャッジが出来ない。

 しかしその悪条件をクリアするには、徐々に流出に慣れてもらうしか無いと思う。


 なかなか難しいミッションだが落ち着け…俺は煙草を燻らせながら電話の発信ボタンを押す。


『こんにちは、元気で『和樹さんッ!お願い!ぎらないでぇぇ!!』


 冗談から入ろうとしたのに食い気味で消された…


『いや、切らないよ…ただしそこを動くな』


 カメラやマイクを探されたら困るからな。

 何故か直立不動になる頼子…


『は、はい…従います…従ったら話を…聞いて頂けるんですね?』


 何だこのプレイ…しかし、理由とか聞きたくねぇな。

 小説とかだとね、ドラマチックだったり人の話だとドキドキも凄いけど、現実はクソみたいな理由ばかりだしな。

 どうせ聞いた所で浮気の理由なんて大した理由じゃないし、本題はそこじゃないし。

 裸の流出に慣れてもらわないとな。

 

『頼子、黙れよ、それよりそこで裸になれ』

『え?和樹さん?』

『なにか?』

『いえ!はい!やります!』


 ビチャビチャのスーツを脱ぐ…裸になった頼子…ちなみに頼子は中学時代に陸上の中距離で全国大会に行ってる。未だに走ってるもんだからプロポーションがやたら良い。胸はそれなりだが。

 いるだろう?高校に入って急に青春謳歌しようとする奴、頼子はそれだった。

 大人しく部活やっときゃ良いのに…キラキラしたものに憧れたんだろうな。部活をいきなり辞めて映画研究会に入った。

 何も才能が無い俺がベース始めたのとは理由が違う。真の才能の無駄使いとも言える。


 そして電話を持ったままがに股になった…何故に?

 泣きながら全裸がに股で何か言っている…


『何でもするからぁ…わだじぃ…ぜっだいぃ…がずちゃんがぁ…良いからぁ…病院行ってぇ…ぎれいにするからぁ…おねがいします…すでないでぇ…ヒグッエグっ…ウゥ…』


 何だよコレ、何で俺が遠隔ドS調教マンみたいになってんの?

 

『かずくぅん…どこにいるのぉ…綺麗にしたんですぅ…だからぁ…みてくださぃぃ…』


『え?じゃあベランダの方に…』

『ベランダ!?…キャッ!』


 泣きながら、がに股をこちらに向けて…


 ガアン!バタン!ガタン!


 ん?あれ?頼子が転んでテーブルが倒れた。

 瞬間、頼子が消えた。いや、小麦粉か?何か白い粉が飛び散って見えない。

 ノートパソコンで確認するが居ない。望遠鏡で確認するが部屋にも居ない…というか粉で見にくい。


 どこだ?


 ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!ザッザッザッザッザザザザザザ


――…和樹…さん?…――


ハァッハアハァッハアハァ ザッザッザザザザザザッザ


 ん?何の音…望遠鏡を下げると…俺は心臓が止まった。


 山の斜面、竹林を、全裸スニーカーの頼子選手が、こちらに向かって全速力で、鬼の様な形相で、駆け上がって、参りました。素晴らしい、走りですねぇ。


「うおおおおおおおおおおお!!??」


 ついつい実況になるぐらいビビって声を出してしまった…赤っぽいのカラコンが光を反射して激しく動くから、赤色の光の線が出来る。

 まるで赤外線ゴーグルを付けた殺人犯に追っかけられてる気分だよぉ!?


「先輩!ハァハァ!待って!お願い!ハァハァハァ!聞いてぇ!こっちを見て!」


「ヒイイイイ」


 何で高校の時の呼び方になってんだよ!?

 とにかく逃げる、殺される!?分かんねぇけど怖い!

 バイクに跨る、エンジン!鍵は!?鍵さした!まわした!かかった!アクセっ!?


 バイクで逃げようとしている人を逃さない方法を、皆さんご存知だろうか?

 これね、警察が良くやるんですよ。アクセルの方の前ブレーキ、手の上から握っちゃうの。

 そうするとね、発進出来ないの、知ってる?


 ガシッ


「ハァハァハァハァハァハァハアアアア…おね…はな…」


 ガっ!


 絶対逃さんぞとばかりに肩を掴まれた。

 何で浮気されたのに窮地に立たされるのか?


 とっくに4本目の煙草は消えてた…駄目だ…煙草…吸わせてくれ…

 

 

※とりあえず書き溜め放出終了です。この話はササッと明日と明後日でほぼ終わりにしたいです。

沢山の応援やコメント、ありがとうございます!

 

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