#01-1-12 それでもノゾミは「ダンジョンマスター」になるの?
「じゃ、シバの
そう言ってテュセルに案内されたのは狭い小さな部屋だった。
今の家の僕の自室くらいの広さだ。
天井に電灯のような明かりがあるのでとりあえず部屋の中の様子はわかる。
ぱっと見て目に入るのは隅に置いてある西洋風の甲冑らしきもの一式。
それと部屋の真ん中にある台座とその上に乗せられた透明な球状のモノ。
よく占いをする時に使われる水晶玉、それのサッカーボールくらいの大きさのもの、と言えば伝わるだろうか。
「ここが? 随分狭い部屋みたいだけど」
「それはそうだよ。ここは
テュセルはそう言って笑った。
その笑顔はどこか寂しそうだ。
「シバがいなくなっちゃったから、今はこの部屋だけになっちゃったけどね。で、これが」
部屋の真ん中にある水晶玉を指し示す。
「
「なるほど」
僕は近づいて手を伸ばし、その水晶玉に触れようとしたけれど。
それを遮って、テュセルが僕の目の前に立った。
「本当に、ほっっんとーーーーに、
「あ、うん」
「そっか。そっかぁ……じゃあ、しょうがないなぁ……」
テュセルは腕組みをしてため息をついた。
「……これは、できたら言いたくはなかったんだけど。でも、ノゾミの気持ちが変わらないなら、言っておかないといけない」
そう言うテュセルの声は重苦しい。
「ノゾミ」
「何だよ?」
「僕がノゾミの所に来たのはね。ノゾミを
「はぁ!?」
確かにさっきからテュセルは妙に僕に
けど、何度も言うことになるけど。
そもそも最初に
……ん?
あれ?
昨夜のテュセルの言葉をもう1度思い出してみる。
よくよく考えてみれば。
「
次の日に真田さんと歌鳴さんがやって来て
それは、つまり。
「……あ、いや。あれ? もしかして、テュセルって……僕を
「そうだよ。ずっとそう言ってたじゃん」
ぶすっと不機嫌そうに口を尖らせるテュセル。
昨日の夜、テュセルが来て
色々な話が怒涛のように湧いて出てきた。
事情と状況の全てが僕に「
思い込んでいた。
「いや、だったら何でいきなり『僕が
「だって、どうせ事情を知っている人間……コーセイとかがノゾミにそう言って
何か滅茶苦茶な理屈のような気もするけど。
じゃあ何が間違っているのか具体的に反論しようとすると難しい。
そういう意味では一応理屈は通ってる、のか……?
「ま、まあ、一理はある……のかな? でも、それじゃあテュセルは何でわざわざ僕を
とても。
とても言いにくそうに。
テュセルは呟いた。
「……だって、それがシバの望みだったから」
「え?」
「シバはね。ノゾミを
◇◆◇◆◇◆◇◆
初めて
では、「
それは「所属する世界が変わってしまう」ということらしい。
本来、人間を含めた生物は自分の生まれ育った世界に所属している。
しかし
それが完全に書き換わってしまうと、所属が生まれ育った世界から
そうなるとどうなるか?
その場所に適した姿に肉体と精神が変異してしまうというのが1つ。
もう1つが元いた世界には居られなくなってしまう。
「
「
所属する世界が変わるということは、当然、元居た自分の世界からも別世界の存在、「
そして「
自分の生まれ育った世界には居られなくなる、ということになる。
さらにそれは。
「
◇◆◇◆◇◆◇◆
「……シバは元々はこの世界の生まれだった。でも、もうほとんど自分の
初めて聞く話だ。
あのクソ親父は僕に
「だからシバはノゾミにはなるべく関わりを持たないようにしてた」
「は?」
「シバは
それはつまり。
あのクソ親父がほとんど連絡を取ってこなかったのはちゃんとした理由があった、ということか。
「いや、理由があるんだったら言えよ!? ちゃんと説明してくれたら僕だって……!」
「今のノゾミだからこの説明を聞いて納得できるかもしれないけどさ。シバがいなくなったくらいの年の時にこんな話されてノゾミは納得できた?」
うぐっ……言葉につまる。
あのクソ親父が帰ってこなくなったのはだいたい10年前だ。
その頃の僕はまだ小学校低学年。
テュセルの言う通り、
むしろ父親について行ってそのまま
「……無理、かな」
「だよね」
悔しいけど、それ以上は言い返せなかった。
「シバが言わなかったことをボクが言うのはアンフェアかな、と思ったけど。でも、ノゾミが
テュセルが一歩、横に動く。
僕の前に無色透明の
「これが
手を伸ばせば
そうすれば、僕は
「その守った世界に、ノゾミはいられなくなる。それでもノゾミは
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