色を付けてくれ

船越麻央

 遠未来ペット事情

「うーん、もう一声!」


「お客さん、カンベンしてくださいよ。これで目一杯ですよ」


「そうか、じゃあなにか色を付けてくれ」


「いや~まいったなあ。色ですか~うーん……」


「……ダメならいいんだぜ。他をあたるから」


「ええい、じゃあコイツを付けますよ。お客さん出血大サービスです、持ってけドロボー」


「ハハハ、ドロボーとは人聞きの悪い。よし買った、色を付けてくれてありがとうよ。さあ契約しようぜ」


 俺はさんざん粘って買ったソイツを持って帰ることにした。


「気に入らないからって返品はなしですよ。サービスしたんですから」


 ブツクサ言う販売員から説明事項を聞き、契約書にサインして支払いを済ませた。結構いい買い物だった。


 俺はソイツらを持って自宅に帰った。


 えーとまず一体め。いま人気のトイエイリアン。


 かつて凶悪な地球外生命体として人類に遭遇したヤツだ。わずか一匹で宇宙船のクルーを全滅寸前まで追い詰めたこともあったらしい。ずいぶん昔のことだけどね。


 だが今は品種改良されてカワイイペットとして販売されている。体長約30センチ、なにより丈夫で飼いやすいし、飼い主に忠実である。エサさえやっておけばまず問題ない。


 さてオマケに付けてもらったもう一体。ミニチュアプレデター。コイツもけっこう人気があるのによくサービスしてくれたなあ。


 そういえばコイツも昔、人類はずいぶんと手こずり苦しめたられたらしい。やはり品種改良されて体長約20センチ、知能が高く賢いペットだ。飼育しやすく手がかからない。こちらも問題なさそうだ。


 トイエイリアンとミニチュアプレデター。


 俺はそれぞれのゲージに二匹のペットを入れた。トイエイリアンがキーキーと鳴き、ミニチュアプレデターがカリカリと音を出している。


 どうもエサが欲しいようだ。俺は二匹のゲージにエサを放り込んだ。確かエサは共通のはずだ。うん間違いない。トイエイリアンは大きく口を開けてエサにかぶりついた。伸縮式のキバでかみつき飲み込む。いやはやいい食いっぷりだ。


 一方のミニチュアプレデターもしっかりとエサを食べている。エビのデカイやつと思えばいいか。


 二匹とも俺のカワイイペットである。待てよ今思いだしたが、二匹同時にゲージから出すなと言ってたなあ。

 この二匹、もともと仲が良くない種族らしい。大昔はライバル関係だったそうだ。


 トイエイリアンVSミニチュアプレデターか。どっちが勝つんだろう。ちょっと興味がある。


 いやいやダメだ、せっかく無理を言って色を付けてもらったんだし。


 俺たちの住むこの惑星の空の色はオレンジ色。太陽の色は燃えるような赤である。

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色を付けてくれ 船越麻央 @funakoshimao

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