魔法使い戦記

大道寺司

第1話

 世は大魔法使い時代!

 この世界の魔法使いたちは攻撃手アタッカー補助手サポーターの二人一組でペアを組んで戦い、頂点を目指していた!

 そしてここにそんな高潔な戦いのスタートラインにすら立っていない者たちのしょうもない戦いが幕を開ける!


「白とニコイチなのは赤だろ」

「あ? 黒に決まってんだろ。タコ」

「あの......喧嘩はやめましょう?」


 補助手サポーター最強格筆頭の白魔法使いの一人であるビアンカ。

 彼女とペアを組むべく二人の攻撃手アタッカーの男が争っている。


「年末の歌番組......タイトルは知ってるよな?」


 赤魔法使いのレッド。それ以外に説明が要らないレベルの脳筋だ。


「それは厳密には赤ではねぇよ。パンダ、オセロ、チェス......白黒のものは多い」


 黒魔法使いのノア。頭はいいがカッとなりやすく、すぐに知能が低下する。


「ぱんどせろちぇす? 何を言っている! 俺がバカだからって誤魔化そうとしているな!」

「だぁ! 言葉もろくに聞き取れねぇのかボケェ!」

「ボケとは何だ! 悪口を言う方が悪口なんだぞ!」

「チッ、テメェと話してても時間の無駄だ。白黒つけようぜ」


 ノアは杖を構え、先端をレッドに向ける。

 対するレッドも臨戦態勢入る。


「いいだろう! その方が俺のせいに合っている!」

「ああ......そうだな」


 ノアはツッコむのも面倒で適当に相槌を打っている。


「俺からいかせてもらう!」


 レッドの背後の地面から炎が噴き出す。

 彼の得意の赤魔法は炎や熱に関する現象を扱うのが得意な魔法。

 その業火がノアを焼き尽くす!


 ことはなかった。

 噴き出した炎はただの演出。特撮で見かけるようなアレである。

 彼の主とする攻撃方法は鈍器(杖)による物理攻撃。


「バカが。暗黒魔法ダークネス!」

「何!? 前が見えない!」


 対するノアの黒魔法は闇を司る魔法。

 視界が暗闇に包まれたレッドの物理攻撃は空振りに終わる。


「魔法の無駄遣いに目つぶし魔法......子供の遊びか?」


 突如、レッドとノアの前に現れた男。虹魔法使いのレイン。とにかく最強。

 その身体は魔法で七色に輝いている。


「よく分からんが、お前には言われたくない!」

「ってか最強さんが俺らに何の用だ」


 二人とも決闘の邪魔をされてやや不機嫌になっている。


「白魔法の女は俺がもらう。雑魚は引っ込んでいろ」


 その発言が完全に二人を怒らせた。


「ザコだと......!?」


 意味はよく分からなくとも馬鹿にされるときによく言われる言葉はレッドの戦う理由として充分である。


「ビアンカは俺のモンだ。テメェが引っ込んでろイルミネーション野郎」


 ノアにそういう意図があったかどうかは彼のみぞ知るところだが、近くで聞いていたビアンカは白い肌を赤く染めている。


「いくぞ! スーパーファイヤー!!!」


 レッドには珍しく魔法で炎の攻撃を仕掛ける。


「その炎もらうぜ」

「何!?」


 レッドの赤魔法にノアが黒魔法を合わせる。

 炎に暗黒の力が加わり黒く変色する。


「正面からじゃ勝てねぇからな。黒炎魔法ブラックフレア!」

「面白い。虹色魔法ザ・セブン!」


 その後、普通に負けた。

 ビアンカは不本意そうだったがレインとペアを組むことになった。


「クソ! 勝つ流れじゃねぇのかよ!」

「でも合体技はカッコいいな!」

「あ?」


 悔しそうなノアだったが、この瞬間こそ攻撃手アタッカー同士の異色のペアの誕生であった。

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魔法使い戦記 大道寺司 @kzr_

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