17 続記・聖なる現実逃避の章
此処から17章~22章までは本編との繋がりは薄く、断片的なスピンオフ的な1話完結が続きます。(なので気軽お読み下さい。)
17【蝉と少女】続記・聖なる現実逃避の章
年の瀬も迫る、世間はクリスマスで浮かれている深夜、少女のような金髪のバーテンダーと対面して薄暗いBARのカウンター席でとある企業の商品開発部の志摩統括部長が1人、酒を飲みながら頭を両手で抱えこむ体勢で眉間に皺(シワ)を寄せ悩んでいた……
彼の気分を察し視線を伏せ、静かに見守っていた、バーテンダーは口を開いた
「部長さん何かお悩みのようで、私この後、時間あります……また可愛がってくださいな朝まで……」
「……」
部長はゴツい多機能な自作の腕時計で時間を確認した。深夜の一時である、心の中で『今日はやめとこう彼女の身体にイラつきを打つけても何も問題は解決しない』と思った……
「……」
グラスの中の丸い氷を回しながら彼の思考もクルクル回転している、部長は溜め息を着いた「は~」1週間程前、役員会議で社長から言われた無理難題である、社長に頼まれた新商品を作れる技術は彼にはある、問題は道徳的な問題である、彼の務める会社は、世界で初めて「人型アンドロイドの制作」
※(化学的、生物学的に合成され、血と肉をもち、人間の姿かたちをした人造人間)
に成功し爆発的販売実績で急成長したのである、高額だがアンドロイドは売れに売れた、中には1人の客が数体も買ってくれてコレクションにしてくれる、また古いモデルもプレミア付いて長く売れる、そのメンテナンス専用子会社もおお忙しである。しかし30年もすると飽きられてくる、人間の欲には切りがないのだ、結局の所、人間と違って何でも言うこと聞く人形はゲーム機と同じなのである、パータンは見えて来る、またアンドロイドを分析する雑誌や専門家などもこぞって分析や批判をしてくる。
その打開策になりえる事は人間の核となる魂と同等の物を作る事であるがそれは現在及び近い未来に現実できる見込みは今は無い。そもそもそれは神が引いた絶対的なセーフティネットで不可能な事なのかも知れない。
科学でも解き明かせない謎である。
そこで社長は売り上げが低迷する中、苦し紛れに商品製造許可の審査に何年もかける帝国には内緒で生殖能力があるアンドロイドを作れと言ってきたのだ、理由の表向きは少子化対策、新薬の開発の為の治験利用、兵士や労働者の確保であるが実際の所はモテない男女や老人にも更に売れると幼稚な考えである。先に作っても有効性が認められれば後はどうにでも成ると言う。
マスターグレート超えるリアルグレートを作る……これには悩んだ、作ったとしても、アンドロイドから誕生した子供はどうなる? 更にまだ予想できない取り返しのつかない宗教的、生物学的問題が起きる可能性は十分ある。また予測ができない恨みを買い自分が命を狙われ続ける可能性もある、彼は帝国にこの事を危険性も交えて密告した、帝国の判断に頼ったのである……
しかし帝国のお偉さん方は戦争やり過ぎて人の命をなんとも思ってない酒で頭のイカれた権力者供であった!
なんと製造を許可承諾してしまったのだ!
帝国は頭から腐り初めているのである。
即ち最悪の失敗である、イカれた帝国に有効な軍事技術として目を付けられてしまった!
この日から志摩部長と真日本帝国との時空を越えた長い闘いが始まることになる。
部長はツマミのチョコを一つ口に含み残りのウイスキーで胃に流しこむと、
「また来るよ、お釣りは取っといて、帰りに何か食べなさい」と言って部長はカウンターに札を2枚置いてコートと帽子を壁掛けから取り、羽織り、ドアのノブに手を掛けた時、
「また、きっとですよ」とバーテンダーがつぶやく声が背から聞こえた……軽くうなずき店を出た、誰もいない雪が降る街の街灯の下で部長は立ち止まりタバコに火を着け咥えた。
街灯には季節外れの大ぶりな蝉の殻が張り付いていた……
「もう冬だぜ、遅咲きの蝉か?俺と同じ孤独だな」と独り言を呟いた、コートの襟を立て再び家路を歩きながらまた考え込む……
精神疲労で頬がこけた部長の眉間と目の周りには深い闇の影がまとわり付いていた……
生殖機能持ったアンドロイドは世界の社会秩序を作り替えてしまった原子爆弾の二の舞に成る可能性は十分ある、同時に彼は自分のやってる事の恐ろしさに気がついた、唯一の救いはアンドロイド用生殖器の作成情報を助手らにも明かしてなかった事である、しかし返事を渋れば情報が漏れる可能性はある。彼は悩んだ末に、彼のみ知るアンドロイドに対応した生殖器の設計図面やデータも全部消去してハードディスクも物理的に破壊し逃げる決断をした。
(私がやらなくても近い将来、同じ事をやろうとする科学者は世に出て来るだろう、しかし時はかかる、その時間の経過中に人類は生殖能力を待たせたアンドロイドがどれだけ危険な物であるかに気ずいてくれるかも知れない)
その可能性に賭けて彼は行方をくらませた……
帝国は総力を投入しても彼を中々見つける事ができたなかった事から、世間は彼の逃亡先として帝国も手が出せない独立国に匿われているとか、過去か未来にタイムループをしたとか、などと噂し合った……
後の世に彼の現実逃避的な逃亡行動は高い評価を受け、人類を救った英雄として国書にも記載された。[終]18へ続く。
=補填=
この小説を最初から読んでくれている読者の方はお察しだと思いますが、
志摩部長=仙身・志摩長(せみ・しまなが)であります。
蝉と少女 仙 岳美 @ooyama1252takemi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。蝉と少女の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます