16 切り裂きジャックの章

24.8.12加筆修正更新


16【蝉と少女】切り裂きジャックの章


※語り人兼作者不明……


 ※切り裂きジャック……物語の中での連続通り魔吸血殺人事件の犯人に付いたあだ名。

その事件の被害者には、前の戦争に勝利した帝国、その大陸から、敗戦国であるこの島国に移住して来た貴族達が標的になっていた。

当然、犯人には、先住人である島民達が疑われていた……その島の城塞都市でのお話。


* * *


※今夜も彼は屋根を飛び継ぎながら獲物を探す……


『しめた若い女性だ!』

若い少女の血は格別に美味い!』


後ろから飛びついた! 

少女は素早く側転してかわした!


「ほぅ素早い女だ、珍しい」


「吸血鬼……助けて、血は吸っていいから」


少女は腕を差し出し…


「腕から吸って……殺したら一回楽しんで、終わりでしょ、私の体で他の事もしたいでしょ? お、お願い」


『確かにこの女の言う事はもっともだ

たまには良いだろう』と

※彼は思い、彼女の命乞に従った。

『それに、この女、動きも素早い仕込めば助手にしても使えそうだ容姿も良い』※と気に入ってしまった。


※彼は早速、彼女の腕に特別に加工した二又のナイフを刺した!


「い、痛い」


※吸血鬼の彼は噛んだ様な傷口から血を吸う。


「たった、たまらん」


※ついでに胸も持て遊ぶ。


「あー 痛っーい」


「ししし」



※誰も元帝都一の双剣使いだった彼を捕まえることはできない。

彼は戦場で傷一つ負わなかった超天才である。

また彼の表向きの仕事は貴公子気取りの凄腕吸血鬼ハンターである。

『吸血鬼=牙』の存在を信じてる時代では彼のアリバイは100%完璧だった。

歪んだ性癖人間の吸血鬼もどきの彼はその事を利用した。


* * *


※ここから少し彼の軍人時代の回想。


……過去に戦場でやむ得なく若い女剣士を殺した、女は殺さない主義であったが手加減したら、こっちが殺されていた……初めて遭遇した刺客だった。

それに美しい女であった。

敵として会いたくなかった。

好きになった……

殺した後、焚き火越しにその女の屍を見つめていたら、妙な感情が湧き、気付いたら私はその女の肉を貪っていた……


※その時、彼の性癖は開眼した。

兵士を辞めた後も、殺しと、その歪んだ食欲も止めれず、彼は人間でありながら吸血鬼になったのだ!


* * *


 肘から下に向けて搾るように少女の腕を両手の手でしごいた。


《ちゅゅゅゅゅゅ》


『甘いコクもある、微かに苦味もある、病みつきなる血の味だ、後味もスッキリしている』


「はっはっはー あーもうダメ、壊れちゃう」


『このへんで止めとくか、余り吸いすぎると女が死んでしまう今宵は満足だ』


「ワッハハハハ」


※手を離された少女はフラツキながら後ろの壁にもたれた。

彼は持参したミルクが入った小さい水筒をポケットから取り出した。

何故なら血を吸った後、ミルクを飲むと口の中に残っている血と混ざり合いコクを感じ、なんとも良い感じに浸れる事に彼は気付いたらからである。

しかし今回は水筒の蓋を開けようとしたら、手が言う事を聞かない事に彼は気付く。


「へっへッへ! あれ?」


『身体が痺れる何故?』


※彼はその場に倒れ込んだ……


少女の声が聞こえた……


「満足した? モノマネおじさん」


『こ、これは毒にやられた?』


※倒れた彼の横顔を少女は踏みつけた。

彼は顔上げて少女の顔見た……

少女は哀れな者を見る眼差しを彼に向けて言った……


『思い出した……見た事がある顔だった……私を疑ってた、あの牧師の教会に居た少女だ!』


『少女の血液の中に毒を仕込むとはそこまでやるのか!』


『私が毒なんかに……クソー、最初の少女の身のこなしに疑問を持つべきであった……』


『あの牧師、敵ながら見事だ……』


「人に血を飲ましたのは、初めてよ、美味しかったでしょ、ジャック気取りのロリコンおじさん、そして姉の仇の大陸の英雄さん、流石に人間の身で転生能力者の姉を倒し、更に狂気的な吸血鬼に迄、成ってしまった貴方と普通に真正面から勝負しても勝てないし、ふふ耐毒の訓練が実ったわ、後、貴方が大事に持っててくれた姉の髑髏は回収させて貰ったわよ」


※と少女は彼の手から水筒を引ったくり中のミルクを一気に飲み干すと長い犬歯を剥き出しにし、白いミルクを口から垂らしながら凶悪な瞳で彼を見つめニヤリとした。


「温いわね、何かで割っときなさいよ! でもサービスでミルクのお返しに、いいこと教えてあげるわ」


※彼女は彼の耳元で囁いた。


「……」


※彼は牧師と女の子の秘密を知った、すなわち死を覚悟した。


『私が吸血鬼? あのアルビノの牧師がジャック? 志摩長は私が殺したはずだ……なぜ?……仙身一族が復活……閣下にお知らせし……ダメだ気薄れてきた……』

『不死身と言われた私がこのまま死ぬのか?……でもあの女の妹に殺されるなら本望だ……』


※彼女は彼の懐から彼の身分を証明する手帳と愛用のナイフを取り出し、指紋が付かないようにハンカチで持ち、彼の首にナイフ当て言う。


「最後に一応、聞いとくは、私達の味方に成る気はない? お姉ちゃんにも会えるよ」


「……侮るな! 忠臣は……二君には……使えん」


「あ、そう、清次さん、さようなら、キャッハ♪」〆


「グッ! エッフ」


※彼の目の前の世界が赤く染まっていく……その光景が、世を震いあがらせた切り裂きジャックの正体を唯一知り、

かつては天才剣士と言われ、

前の大戦では、

大陸全土に恐れられた英雄である彼の最後に見た光景となった……


※そして大陸の英雄・平乃清次は切り裂きジャックとして不名誉な烙印を押された。[終]


登場した人物。


平乃 清次(たいらの きよつぐ 元帝国兵士 双剣の使い手 帝国大陸の英雄)


少女 (帝国に滅ぼされた亡国のプリンセス三姉妹のうちの三女)


仙身 志摩長(帝国に滅ぼされた亡国の大将)



=後書き=


 この本の内容は【廃教会の章】の作中で主人公が教会の中で見つけた本の内容を書いた物です。(設定)

混乱を避ける為に解説しますと、この物語は【蝉と少女】の前の時代の話であります。17へ続く。

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