補填・分冊③ー2【蝉と少女】角蝉の正体の章

補填・分冊③ー2【蝉と少女】角蝉の正体の章


※分冊③ー1の続きです(後から付け加えたシナリオです・補填)


登場人物

私   (30歳 主人公・元精神科医・今はニート)

薄羽景子(21歳 ヒロイン・うすば けいこ・倉庫会社社員・趣味で小説を書いている)


 私の体調はだいぶ回復したが前の仕事には戻る気にはなれなかった、

迷ったあげく退職し、

その後は実家に戻りハッキリ言って今はニートである。

幸い前の仕事が給料が良かったので、

貯金は沢山あり退職金も入った、 

親に自分の食い分くらいの生活費をしばらくは渡すことはできると思う。

要は実家にいた10年前に生活が戻ったのである。


 しかし最近思うのは、何か最近もう自分の社会的役目は終わった気がする……とはいえ生きるしかなかった……

私の人生に自殺はあり得ない。

秋の日の涼しい平日、運動不足解消の為、近くの川辺りを散歩をしてみる。

平日の昼頃であるが川辺には老若男女、結構な数の人はいた。

前職の経験から来るのだろうか、人相、又は身体全体から出るオーラみたいな陰気な雰囲気を感じ取れば大体は推測できる様に私は成っていた。

多分当たってる思う、無職や気が病んでる人は見るだけで判断ができた。

そんな人達は今の自分と同じ状態の人達ではあるが絡む事は、お互い良い方向には行かないと思い、自分からは話しかける事は決してしない様にした……

歩いているとそのうち腹が減って来たので、少し先にある大型スーパーに併設しているマクド○ルドに寄って適当な物を頼んで食べる、やる事も無いので引き続きポテトをツマミながら周囲を見渡し人間観察をする……斜め向かい側に一人で座っている女の子が可愛かった、ビッ○マックを食べている、飲み物のサイズはLLで随分健康的だ。

歳は20代位だろうか?

タイプの顔なんで眺めていたら目が合ってしまった!

彼女は私をジーと見つめた後に軽く微笑んでくれた、その眼差しは何か……懐い物を感じた。

その時はそれだけであったが数日後、散歩中に遭ってしまった。

純粋に嬉しかった、何故か彼女には違和感なく前から知り合いだったみたいに気軽に話しかけてしまった。

「こんにちは」

彼女は一瞬だれなのと顔したが直ぐにニッコリしてくれて、

「ふふ、こんにちはマックで私を見てた人ね」


「あ、ごめん、あの時はついその……」


「いいわよ別に」と彼女は再び微笑みかけてくれた、

白いワンピースに白いスニーカーを履いていた……このチョイダサスタイルどこかで見たような?


 彼女とは話が合った、縁もあったようでしばしば散歩中に偶然会い、会うたびにそこで立ち話をしたりマックやファミレスで食事などをし良い感じなっていた。ある時、彼女が無職の私の事を心配してくれて、自分が務めている倉庫会社のパートの仕事を紹介してくれた。仕事は彼女がサポートしてくれるので非常に有り難かった、そのうち彼女と男女の関係なるのは当たり前の事であった。

ある日、食事中に彼女は私に石が嵌め込まれた腕輪をくれた。


「何これ」


「精神が安定するパワーストーンの腕輪よ、前に友達のノルマに付き合って買っちったの馬鹿よね、私」


「効くのかな? この腕輪」


「君しだいかもね、家で私の分身だと思ってキスでもしてみてよ、元気にはなれるんじゃないかな」


「あ! 私、自信過剰ね……」

と薄羽さんは笑った。

私も釣られて笑ってしまった。


 そのシルバーの腕輪は小ぶりで女性物の様な気もするがシンプルなスマートなデザインでカッコよかった、大変気にいった。


 ベットでは彼女は意地らしく最中も声が出ないように口を必死に結んで耐えていたり口を抑えたりして兎に角喘ぐ声を

聞かれるのが恥ずかしい人みたいでそれが反対に男としては燃えた!

その時、思った彼女とは違う……


(彼女?)


(私は誰の事を今思い出したんだ?)


(薄羽さんと誰を比較してるんだ?)


その時……夢の中の様に全ての出来事が走馬灯の様に思い出した、あの神社、遺跡公園、夏の下り山道、よろず屋、十字架大石、そして彼女の事……何か急に寂くなってしまって下半身も萎えてしまった。

薄羽さんは私の変化に気ずき、

「どうしたの? なんか凄い暗い顔してるよ」


「あー いや、なんでもない、今日は少し風邪引いてるみたい」


「そう、じゃ今日はもうこのくらいにしとく?」


「うん」


 家に戻り自室に篭り[夢の中の彼女]との会話を思い出していた……

彼女に逢いたくなってしまったが直ぐにアレは夢だと思った……

でも何故か現実感がある、ひょっとして今、付き合ってる薄羽さんが夢の中の彼女となにか関係があるじゃないかとか思えてくる……

記憶の沼に沈んでた彼女の顔もだんだん思い出してきた……

薄羽さんに非常に似てる気がした。


 何かキッカケがあればあの夢の世界に戻れる気がした……

彼女と言えば女王様……


 ある晴れた爽やかな晴天の午後に薄羽さんにホテルで思いきって、ある事をお願いしてみた。


「あの薄羽さん、鞭振れる?」


「え、ムチってあの鞭?」

僕は首を縦に振った。


「……」


「ダメかな」


薄羽さんの目は点になっていた。

「む、無理よ、私そんな事やった事ないし! 冗談やめてよ!」


「頼むよ」


「……へーそいうのが好きなんだ」


薄羽さんの顔はキョトンとしていた……

その顔は夢の中の彼女に似ていた……


「わかりました、貴方の彼女だから女王様やってあげる」


薄羽さんはホテルの設備の鞭を手に取った! 目が座っている……初めて見る薄羽さんの顔だった。


《ピュッート》鞭が風を切る音をたてながら飛び、私の腹に当たった!

「痛った~」


「ほら! ボッサとしない! 私にお尻向けて! こっち! この変態!」

薄羽さんに背を向けた。


「久しぶりに可愛がってあげるわよ、ダーリン」


「! 久しぶり?」


「そう久しぶりに……」


「君なのか?」

薄羽さんの方に身体を向けた……

「久しぶりね、やっとこの子に憑依できたわ」


「迎えにきたわよ、帰りましょ裏の世界に」


「確認だけど向こうに分身は残らなかったかい?」


「いるわよ、最近は帰りたいとか言いだしたわ、困ったもんよ」


「君の悪いところだけ残った感じね、なんか違うわ、直ぐに気づいたわよ、何かが抜けたのが、いえ元々は裏の世界の君と表から来た君が同化してしまったのよ、だから別れたと言うより元に戻ったと言うのが正解ね……」


「残った分身はそんなにダメかい?」


「うーん やっぱり違うわね、何か冷たいとこあるし、私が惚れたの表の君よ」


「だから、島長に相談して秘薬を使ってその効果で今、表の世界の私になるのかしらこの子……薄羽さんに憑依したのよ、裏の世界では普通とは言えないけどできなくはない事よ、神隠しとかあるでしょ、アレは半分以上は裏の人間の仕業よ、理由は色々あるみたいだけど……」


「ところであの白い蝉は君かい?」


「あーアレは失敗、結局あの角蝉は唯の次空間暗殺兵器よ、人の意識でコントロールできるだけで所詮は虫だしメッセージは相手に伝えられないし、君とコンタクトを取るのは無理があると思って途中で中止したけど、どっか飛んでちゃって君のとこには一応は次元を超えて行ったみたいね……

もうこの話は終わり!

ややこしいわ説明も面倒だし」


「さあ、私と手を繋いで次元を飛ぶわよ、行くわよ」

手を差し出した時、手首の薄羽さんから貰った腕輪に気づいたその時……何か急に行く気がなくなった……


「待って! 彼女はどうなる?」


「ん! 何も変わらないわよ、君が前から消えたくらいにしか思わない、じゃなくて」


「親は?」


「同じよ事よ、君はこの表の世界では行方不明者よ、どうでもいいでしょ、表の世界にも薄羽さんにも未練ないから私に対して強い思いを念じたんでしょ? そのおかげで秘薬の効果も発動できて、私も君の居る表の世界に来れたの、でも居られる時間はそんなにないわ、早くしてよ! 残した彼と同化して」


「もう行くことはできないよ……ごめん」


「は! 何を言ってんのよ? 私の事が好きでしょ?」


「うん、でも薄羽さんを一人にして置いてけないよ」


「……」

彼女は私を怒りのような静かな目で見つめた。


「後は向こうに残った私に任せるよ、薄羽さんの不幸の上に幸せは成立しないよ……」  


「はー 相変わらず優柔不断ね、やはり片割れの分身ね、裏の君は反対に頑固よ、決めた事は曲げないし……君は反面凄い優しわね、なんで君の方が裏の世界に残らなかったのかしら」


「私は私の分身を信じるよ、一回は同化した彼だ、

『彼は私し自身だよ』君の手で至らないとこは治してあげてよ」


彼女は呆れた顔したが急に悲しい顔をした

「私が居なくても大丈夫なの? 君は」


「大丈夫です、ごめん」


彼女の目から一筋涙が流れた……


「そう、彼の心を矯正するには少し荒くなるわね……はー 確かに君の言う通り彼も一回は君と同化した身だから君から引き継いだ優しさは少し残ってるみたいだし……魂も……じゃもう行くわよ! 君も強く生きてね」


「……あっ!」


「何よ! まだ何かあるの? 薄羽さんの身体借りて最後にセックスでもやる?」


「いや元気でな」


「君もね」


「寂しいな」


「私もよ……

なんで早まって表てで女、作ったのよ、だからこんなコンガラガッチャッタでしょ……そもそもなんで裏の世界に来たのよ君は?」


「それはわからないよ、あの海底鉄道に何か原因があったのかも、駅を出た時に自分に似てる人を一瞬見たんだ、今思えばあの時に同化したんだよ……神様て本当に意地悪だな、そもそも私の裏の世界へのリープ自体が神様のミスだったじゃないかな?

気づいて私を表の世界に戻した時はもう遅かったんだよ、それがこの始末だよ」


私の目からも涙が流れた……


「……」


彼女は私と目を逸らし……何か言いたそうだったがニッコリとして、

「男なら泣くな、わかったわ、今から教える【言葉】をどうしても私に逢いたくなったら唱えて、何か繋がってるだけで違うでしょ、お互いに心の整理も時間かけて作れるし」


彼女は私の耳元で囁いた……

「・・・・できる」

彼女は私の頬に手を当てて、

「楽しかったわ」

と言って戻ったようだ……

彼女が抜けて倒れかけた薄羽さんの身体を支えた……

私は完全に心も身体もこの表の世界に戻れた様だ……冬はもう間近に迫っていた。……君なら・・・【完】

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