分冊③ー1【分記・家の章】
分冊③ー1【分記・家の章】
目の前の真っ白な光が薄れて、再び目に入った光景は見覚えがある自分の部屋の天井だった、夢を見ていたようだ、休職中の気が病んだ元精神科医が元の世界に戻って来たのである。
体が半分だけ非常に怠い、まだ体半身は
夢の中の大石の前に置いてきた感じである。
彼女と大石の前で抱き合った先の記憶は思い出せず曖昧で何かぼんやりしている。
ガッカリしてテレビで時刻を確認したら5時……
だが久しぶりに良い夢を見たような気がする。
本当に本当に良い夢の旅だった。何かしばらく荒んだ目で社会を見ていた意地悪な自分が何処かに行ってしまった様だった。
これから人生が良い方向に向かう気がした。
扇風機の心地いい風と台所から漂ってくる作り置きのカレーの匂いを感じながら少しボーとした、熱中症に成りかけのような感じがした。
窓を開けようとしたら開けっぱなしだった、隣の家の屋根から私が餌付けしている野良の白い雌の猫がこちらをジーッと見ていた微笑んでいるようにも感じる。
蚊に刺されて痒い鼻をカキながら、フラフラしながら台所まで行き冷蔵庫を開け、飲み残していたコーヒー牛乳を見つけ、飲んだら何やら命拾いした気がした。
まだ少し残っていたが朝の日課の散歩に待って行こうと思い、残りは飲まずにまた冷蔵庫に戻した。もう少しあのまま起きずに寝てたらどうなっていたのか?
考えながら寝室に戻ると、枕元に寝酒に飲んだビールの空き缶と、
次元を貫けるドリルの様な長くて黒い角が頭に生えた白い蝉が転がっている事に気づいた。
触ってみたら蝉は既に息絶えていた。
【分記・蝉の章】に続く。
【分記・蝉の章】
虹色に光る半アルビノ色の角蝉は夢の中に現れた少女の化身かもしれないと素直に思った。
違うとしてもこの蝉の鳴き声で熱中症になる前に目覚める事ができたのは事実である。
ここから蝉の説明になりますが長いので詠むのが面倒臭い方は飛ばして【完結の章】へ。
『蝉の新種と思われる調査報告書』
蝉を調べたら突然変異種でなく完全に新種の様である。
個体は現在確認されている油蝉と比較して調べたが性別は確認、取れず。
大きさは個体差もあると思われるが今回の検蟲は角を除いた全長は20cmほどあり普通の油蝉より大ぶりである。
角は身体の長さの7割位の長さがあり、生え際の辺りを調べると背中の方に折り畳める様で狩をする時、以外は背中に背負ってる感じに収まってるみたいである。
背中の方に角が向いてる時は猿や人間が手で掴もうとすると鋭く手に刺さり護身的な能力もあると思われる。
腹の方にも短い角が二本生えておりその先端には小さい穴が空いてる事からターゲットに張り付いたと同時に痺れ毒か催眠毒などを注入できる性能があると思われる。
恐らく自分より身体が大きい動物を眠らせるか麻痺させてから血を吸う物だと予想させる。
腹の角は真横に伸ばすこともできる様で頭角と合わせるて上から観たら三叉の槍か十字架の様にも見える、神の使いの神虫にも例えられて信仰の対象になるかもしれない。
角自体をよく観察したところヒビが自己再生したような跡が有り、この蝉は通常の蝉より長く生きるものであると思われる。
その事から一週間程しか生きれないため数で補う量産型の蝉よりかは数は少ないと思われる。
羽は広げて観ると大型の蝶位の大きさはあり、通常の羽ばたく飛行タイプと頭に生えたドリル角を回す為に体が回せる様にプロペラの形にも変形できる様で複雑な関節の羽である。
恐らく、ドリル角で小鳥位は仕留める事は可能では無いだろうか、また人間も動脈にこの角が刺さった場合、命を落とす事は十分あると思われる。考え過ぎがもしれないがこの蝉が軍事転用され人間の意思でコントロールできるようになったら恐るべき生物兵器である。口はストロータイプなので肉食より吸血生物の方だと思われる。また樹液も食料として摂取できると思われる、この事から一年中通して餌となる物が多く有り、生存能力は極めて高いと思われる。
目は4個付いてるので視界は個体を中心としたフル360度見渡せる可能性あり、また獲物との距離感を正確に測る事ができると思われる、この事からハンター性が高いと思われる。
目の下の当たりに左右に小さい穴があるのを確認した穴の中を針で穿ってみたら直径3ミリ程度の丸い骨の様な物を確認、恐らく飛ばして使う武器と思われる。
左右の穴に3発ずつ入っているのを確認、骨弾は時間の経過で再度体内で生産される物と思われる。
弾を割ってみたところ中は空洞で破裂性があると思われる。
角以外の皮膚はゴムみたいで衝突のショックを吸収するためだろうと思われる。
本当に毒を待っているかの有無は専門家に依頼し更に詳しい調査が必要と思われる。
以上が調査結果である。
2011/8/15 臨時自宅研究室より
【完結の章】へ続く。
【完結の章】
防虫剤と一緒に小箱の中で保管していた蝉は標本にとも考えたが見せ物にせず自分の心の中にのみ大切に残したいと思ったので敬意と感謝をもってリンドウの花を一輪添えて和紙に包み、紅葉の葉が積もりだした家の庭に埋葬し目印の墓標にする石を置いた、今住んでる賃貸の借家は昔の寺院後なので石はゴロゴロ転がっていた、適当な大きさの石を選び墓石とした。石にノミで十字架を掘り黄色の油性ペンで黄色く塗装し十字を切った後に祈った。埋葬中、近くに餌付けしてる野良の白猫も居たが、蝉を齧ろうとしたり、転がしたりしたので叱ったら、遠くで首を横に向けて不貞腐れていた。
夢を見た日から遡るほど1ヶ月前参拝の時に拾った蝉の抜け殻と購入した御守りを忘れている事に気づき、上着のポケットの中を確認したところ、蝉の殻はバラバラになってしまっていた。
蝉の抜け殻と御守りを手に取ってみたら御守りが入れてあった星柄の紙袋はグシャグシャに破れ、御守りは蝉の抜け殻の破片まみれになっていた。
更に数日後ジーパンのポケットに違和感を感じたので探ったら、ガタガタの力を使い果たした様な古い小刀を見つけた。
ここで少し考えてみた……
抜け殻と神力を帯びた御守りがポケットの中で一緒になった事で西洋の黒魔術士が呪物とトカゲの干物など使い合わせ異界の生物を召喚する様な呪術作用がポケットの中で偶然発生し異界の角蝉を召喚した結果、不思議な現実世界と重なったような夢をみたのか?
すっかり忘れてた神社の御守りの存在を私に気づかせるため、あの夢を見せたのか?
熱中症なる前に御守りの効果が働いて私を眠りから起こすために御守りが異界の角蝉を召喚し家の中に飛び込ませたのか?
そもそも神様を余り信じて無かった私がなんで今、超常現象の事を考えてるのか?
何かが私の中に芽生えたのか?
それとも唯の偶然の連鎖か?
最後に夢の中の彼女は、もしかして何かの術を使い、次元を貫ける角を持つ蝉に変化し夢の中の世界から私を追いかけてきたのかも知れない。
しかし次元をうまく貫抜いて、この世界に来ても、結局は別の次元の生き物であり、次元の歪みに耐えきれず命を落として、しまったのだろうかと、考えたら急に現実感が湧き、悲しくなってしまった。
人間の脳は左右にある、また潜在能力の90%以上もまだ使っていないという、私は無意識のうちに特殊な能力を使い、半身は夢の中に残してきているのかもしれない、また彼女の魂も蝉を抜け出し元の世界に戻ってるかもしれない。
私の半身は彼女と大石の前で抱き合った後の光り輝く様な2人の物語の続きを展開しているのかも知れない。
彼女の事は夢の世界に残った私に任せる事ことにしようと思った。
夢の中の私も私である。
その後も色々、考えもしたが考えるほど無限の思考回路に囚われてしまう気がし結局のところ……
『夢はどこまで行っても夢でしかなく』
実際に夢の記憶自体も彼女の顔の記憶もだんだん薄れて曖昧になってきている今それ以上の検索は精神的にも良くないと思い考えるのは止める事にした。
はっきりしてる事は夢を見た後、完全ではないが私の気の病は回復に向かってる事が実感できてる事である。夢の中だけど新しい彼女ができた事で前の彼女に対しての未練を断ち切れた事が大きな原因だと思う。
夢の中の新しい彼女は永遠に別れが来ない。最後にこれだけは言いたい。
「目に映らない仲間もいる。君は1人では無い。君ならできる。私も無理しないで頑張る。」
分冊③ー2補填【蝉と少女】角蝉の正体の章へ。
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