6月26日(水)_暗躍の裏側③潜里羽依花ver《2巻4章終盤》

「くーちゃん、大丈夫そ!?」


「んむ……よゆう。るるるの、おかげ……ばつぐんの、安定感」


 仲間るるるの背中にしがみつきながら両手で端末でばいすを弄る。


 はっきんぐ。手慣れた操作。何も考えてなくたってできるから、ぐんぐん進む。


「……ん……」


 頭の中を占めるのは、今朝の作戦会議で積木来都らいとに託された大事な言葉。


一条いちじょうさんの《絶対条例エンペラー》を温存する場合、最後の鍵は潜里くぐりになると思う』

『【人形遣い】が具体的に何をしてくるかは分からないけど……俺と音無おとなし天咲あまさきでどうにか隙を作る。一条さんにも誰にも、危険が及ばない状況を作る』

『……そこまで来たらあとは思いっきりやってくれ、潜里』

『【人形遣い】がひいらぎに干渉するためには、電子機器デバイスを使わなきゃいけないんだから』


 ――そう。


 ここまで全部、全部が【迷宮の抜け穴あなざーるーと】の作戦通りだった。【人形遣いせんせい】が何かしらの抵抗をするつもりなら絶対にでばいすを使う必要がある。なら、その瞬間にわたしの《電子潜入しぐなる》で居場所を辿れるようになる。


 あとは、人質……いろはさえ解放されればこっちのものだ。【人形遣い】の隠れ家に乗り込んで、直接成敗すればいい。とっちめてやればいい。


 それで親友いろはが助かる。


(らいとにも、ほめてもらえる……)


 ふにゃ、と無意識に頬が緩くなる。……何だか不思議な気持ちだった。単なる依存心とはまた違う、少しドキドキするような温かい感情なにか


 でも、まだ気を抜くわけにはいかないから。


「るるる、るるる……るるるるる。たぶん、この部屋……っぽい?」


「ほんと!? りょーかいっ!」


 快適などらいぶで【人形遣い】の住処に到着して。


『――なッ!?!!??』


 厳重な電子錠をあっという間に攻略し、その扉を大きく開け放った。



〜『黒幕ゲーム』本編2巻P288辺りに続く〜

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