6月26日(水)_暗躍の裏側②深見瑠々ver《2巻4章終盤》

 ユーギの電子音声、カグちんの消しゴム攻撃、ミキミキの羽交い絞め拘束コーソクが立て続けに決まって【迷宮の抜け穴アナザールート】の作戦が順調に滑り出した後。


『頼むぜ、俺が厳選した最高にクールな秘密結社のメンバー共――!』


 ミキミキのそんな鼓舞が聞こえた……わけじゃないけど、ウチなりの想像ソーゾーでしっかり汲み取って。


「ほっ、ほっ、ほっ……っと」


 深見瑠々ウチは廊下を走っていた。


 今日のウチはなかなかの働き者だ。ユーギの不法侵入がバレた時の対策に〝ねむれるくん5号〟を準備して、ベランダに隠れるカグちんに〝まもるくん試作4号〟を渡して、それから今はくーちゃんを背中に乗せて走ってる。


 人気ひとけのない大円校舎の3階。


 監視カメラはくーちゃんの《電子潜入シグナル》で封印されてて、例の調査隊チョーサタイはいっそのこと無視。一応《好感度見分キューピッド》もちょくちょく使ってヤバそうな子は避けてるけど、今は最悪サイアク見られても問題ない。


 それよりも速さの方が大事だ。


「うぅ~……」


 体力にはあんまり自信がある方じゃなかった。徹夜で実験なら大歓迎だけど、運動は別に普通フツー。疲れるし、少なくとも〝好き〟ってわけじゃない。


 だけど、今は。


「楽しすぎ、かも……!」


 ――【迷宮の抜け穴アナザールート】での暗躍アンヤクが楽しすぎて、ニマニマな笑顔が収まらない。


 こういうのだ。こういうのがやりたかった。あの時、不審な声を疑わずに飛び込んだ自分自身を褒めてあげたくなる。ウチは選択を間違えなかった。


 あとは、ミキミキの……じゃなくて、だんちょーの立ててくれた作戦をウチらがバッチリ完遂させるだけだ。


「よしっ! ……くーちゃん、大丈夫そ!?」


 言いながらウチは、背中に乗ったくーちゃんに視線を遣った。



〜第36話『6月26日(水)_暗躍の裏側③潜里羽依花ver《2巻4章終盤》』に続く〜

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