6月26日(水)_暗躍の裏側①天咲輝夜ver《2巻4章終盤》

『――今この瞬間、柊色葉ひいらぎいろはに対する《擬装工作ミスリード》を全て解く!!』


 数日前の夜中に積木つみきさんと不時着した永彩えいさい学園女子寮のベランダにて。


 隣の部屋との境目さかいめから、行動開始の合図である電子音声――もとい、音無おとなしさん謹製の《四次元音響エコーノイズ》が流れてきました。


「ふむふむ……」


 瑠々るるさんからいただいた〝まもるくん試作4号〟を使って《才能クラウン》による探知を防ぎつつ、窓に空いた穴から部屋の中を覗き込みます。


 ……窓に空いた穴?


 いいえ、私がこの前空けた穴というのが正しいかもしれません。特に工事せず応急処置だけしておいたのですが、音漏れに覗きに大活躍です。【迷宮の抜け穴アナザールート】を代表して功労賞をあげましょう。


『えっと……あれ、わたし…………え、え?』


 ベッドの上に立った色葉さんはおろおろとしていました。


 きっと《擬装工作ミスリード》が解けたのでしょう。状況が把握できていないようですが、手にはまだ物騒なカッターナイフが握られています。ふとした拍子に大怪我をしてしまってもおかしくはありません。


 火遊びスリルは大好物なのですが……積木さんや他の方が一方的に危ない目に遭っても、私は愉しくありません。


 ――なので、


「えい」


 いつも通りに《森羅天職アームズ》を介して超高速で消しゴムを投擲とうてき


『きゃっ……!?』


 相手が因縁のライバルである羽依花ういかさんならそろそろ躱されてしまいそうですが、これでも天下の大悪党と謳われた【怪盗レイン】です。


 大型のカッターナイフは、狙い通り。


 あっという間に色葉さんの手から弾き飛ばされたのでした。




〜第35話『6月26日(水)_暗躍の裏側②深見瑠々ver《2巻4章終盤》』に続く〜

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