6月11日(火)_数年越しの告白?《2巻2章》
「…………、ふ」
「ふふ、ふ…………くくっ」
「?」
「
「やけに口角が上がっていますが……何なら不審者のようですが。ひょっとして、何か良いことでもあったんですか?」
――ある日の夜、【
無言のまま幸福を噛み締めていた俺に対し、左手側の定位置に座った
「ん~……」
「あ、なるほど」
ふわりと銀色の髪を揺らした彼女は、やがて真意を得たとばかりに口元を緩ませる。
「無粋な質問だったかもしれません」
「そういえば、例の告白――ではなくチームメイトへのお誘いは今日でしたか」
「ああ」
小さく一つ頷く俺。
良いことがあったか否か、という問いなら〝宝くじの1等から5等がまとめて全部当たるくらい良いことがあった〟と返すのが妥当だろう。
何しろあの
「しかも握手までしてくれたんだよ、一条さん……!」
わなわなと右手を見つめる。
「もう一生手が洗えなくなった」
「ふふっ」
「ですが、次に手を繋ぐときに困ってしまいますよ?」
「! 確かに……」
人生何が起こるか分からない、という言葉もある。もしかしたら崖から落ちる一条さんを死ぬ気で助ける場面だっていずれあるかもしれないんだ。
じゃあやっぱり、手は洗わないとダメか。
「それにしても……」
そんな風に納得する俺のすぐ隣で、天咲が手袋越しの指先をそっと自身の顎に当てた。
「もしかして積木さん、異性として脈ありということなんでしょうか?」
「思っていた以上にすんなりOKされてしまいましたが」
「え? いやいや……そういう話じゃないと思うけど」
「あんなに喋ったの、人生で初めてだし」
「はじめて」
ぱちくり、と大きな目を瞬かせる天咲。
「確か小学校が同じだったということですが、その時に接点はなかったんですか?」
「ないよ、全然」
「俺が一方的に追い掛けてるだけだ」
一条さんは、一条
圧倒的な輝きを放つSランク
「――なるほど」
俺の覚悟が伝わったのか、天咲は珍しくからかうでもない優しい笑みを浮かべた。そうして彼女はふわりと銀色の髪を揺らして、悪戯っぽく俺を見て。
「では……ここにきて、ようやく一歩前進ですね?」
そよ風みたいな声音でそう言った。
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