5月19日(日)_秘密結社のふしだらな掟《2巻開始前》
5月の中旬から下旬に差し掛かった頃のこと。
かくかくしかじかで完全犯罪組織【
「はっっっや……」
寮の近くに隠された入り口から
「うわ、うわ……待って、
俺の隣で興奮しているのは白いカーディガンの似合う一軍女子・
彼女はアジトの話を今日知って、事前情報ナシでここを訪れたところだ。心構えのあった俺ですら目を疑っているんだから、度肝を抜かれるのも無理はない。
「広い会議室! キッチンっぽいとこ! 個室いっぱい! シャワールーム!」
「あと……え、何ここ、
「はい、その通りです」
ぱたぱたとアジト内を駆け回る深見の質問ににこやかな肯定を返したのは、お伽噺のお姫様みたいな銀糸を揺らす【怪盗レイン】――もとい天咲
「実験好きの瑠々さんがいるなら必須かなと思い、作っていただきました」
「小規模な爆発くらいならいくら起きても大丈夫な設計……だそうですよ?」
「やっば!」
「カグちん、マジで
そう言って天咲の目の前に駆け寄る深見。……元々、気に入っている相手に関してはとにかく距離を詰めたがる少女だ。キラキラと目を輝かせて、やがて我慢できなくなったのか、むぎゅうと正面から天咲に抱き着く。
「
「もうカグちんと
「そこまで喜んでいただけたなら私としても本望です」
「奮発した甲斐がありました」
深見に抱き着かれながら天咲がくすくすと軽やかに笑う。何かとライバル視している
「それと……」
と――。
俺が密かにそんなことを考えていたところ、
「先ほどはスルーされてしまいましたが……このアジトには、内側から鍵が掛けられる個室やシャワールームまで完備されています」
「
「えっ」
「――……ちょわっ!?」
途端、抱き着いていた天咲から――ではなく、その近くにいた俺から露骨に距離を取る深見。彼女は両手を前に出し、謎の拳法みたいな構えを取る。
「こ、個室……シャワー……そういう気分……」
「やっぱり、妙に可愛い子が揃ってるなって思ってたんだよね、うん」
「この秘密結社では、リーダーであるミキミキの
言いながら徐々に照れを加速させていき、今となっては首筋や耳までかぁっと真っ赤に染め上げているピンクレッドの髪の美少女。赤とオレンジで構成された太陽みたいな瞳が『むむむ……!』とばかりに俺を見ていて。
「……そーゆーこと、なわけないだろ」
見た目の割に素直で純情な彼女だからこそ、釈明するのが大変だった。
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