4月18日(木)_スリル好きのお姫様《1巻2章冒頭》
「――というわけで、よろしくお願いします」
色々あって――本当に色々あって――スカウトに成功したクラスメイト、もとい天下の大怪盗がふわりと長い銀糸を揺らす。
幻想的で可憐な容姿は、まるでお伽噺のお姫様だ。
「ふふっ」
「雰囲気を出すためにも、ここでは〝
「せっかくの秘密結社ですから」
「ああ、そりゃいいな」
「……えっと」
軽快に返事をしてから間もなく言葉に詰まる俺。
――スカウトが終わって、話せる限りの事情や目的は既に共有した。
これから〝仲間〟になるんだから親交を深めるべきかもしれないけど……一体、何を話せばいいんだろう?
「あー、その、何ていうか……」
「……ご、ご趣味は?」
「ふふっ」
上品な仕草で髪を掻き上げ、からかうような笑みを口端に浮かべる大怪盗。
「もしかして
「うっ」
図星を突かれてわずかに
慣れていないのもあるけれど、すぐ隣に座っているのが極上の美少女だから余計に緊張している――とは、さすがに言い難い。
そんな俺を見ながら、怪盗は軽やかな声音で続けた。
「ちなみに、私のご趣味は〝火遊び〟――もとい、悪いことです」
「ギリギリの
とろんと
人差し指でそっと頬を掻きつつ答えを返す。
「……まあ、それに関しては良かったけどさ」
「利害が一致してて」
何せ、完全犯罪組織なんてドキドキするに決まってる。
彼女がこんな性格じゃなければ、きっとスカウトは上手くいかなかっただろう。
「それで……」
そよ風みたいな声が紡がれる。
「
「俺か?」
「俺は――もちろん、
何も迷わずに断言する。
一条さん――フルネーム・一条
誰もが知るヒーローにしてアイドル、捕まりたくない
そして俺にとってはずっと前から憧れの女の子、である。
「一条さんの活躍と言えば2年前のテロ未遂を思い浮かべる人が多いと思うんだけど、ああいや、それももちろんとんでもなく凄いんだけど、俺はやっぱり3年前の強盗事件を被害者0で解決したのが最強だと思ってて、あの事件って実は一条さんじゃなきゃ手も足も出せなかった事情があって、っていうのも――……」
「(にこにこ)」
「――はっ」
「わ、悪い……ちょっと、一人で盛り上がってた」
「いいえ」
悄然とする俺に対し、嫌味のない笑みでふるふると首を振る少女。
輝くサファイアの瞳でこちらを覗き込んだ彼女は、微かに口元を緩めて言う。
「何も問題ありません」
「きっと、私にとっての〝スリル〟が
「それなら――もちろん、恋焦がれてしまうに決まっていますから」
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