無色と魔導師
ねくしあ@カクコン準備中……
僕の手には何も、なかった。
薄暗い牢屋――僕の右手に繋がれた鎖が揺れる音と、
最早僕の
きっかけは単純なものだった。この王国は圧政を敷き、僕のような孤児は生活をするどころか、手に職をつけることも、食料を手にすることすら出来ない。
だから仕方なかったのだ。空腹で腹が鳴るたび、その音は死神の足音に聞こえていた。限界だった。
――そろりと手を伸ばして屋台の串焼きを取る。そして僕はできる限り早く走った。僕の視界にはその向こう側と串焼きしかなかった。
「兄ちゃん。その串焼き、見せてもらおうか」
後ろから心臓を突き刺すように届いた声。同時に、僕の身体は宙に浮いた。大柄の男――屋台の店主だ――に掴まれたのだ。
そこから先の記憶はない。気づいたら、ここにいた。罪の証明と言わんばかりに繋がれた鎖を残して。
だが、食料があるだけマシだとは思う。
「だ、誰だ! ここは罪人がいる牢屋だぞ!」
「知らぬ。妾の行く手を阻むなら、死ね」
「何を言って――」
突然響いた話し声。ここの唯一の出入り口からだ。
次に鳴ったのは、重い何かが落ちる音だった。グチャ、という気味の悪い音。
「敵襲だ! 総員、牢屋へ向か――」
「ちっ、増援を呼ばれるとは失態じゃったわ。よかろう、迎え撃ってやる」
再びのグチャっという音。
というか、先程から喋っているこの女性は一体……?
「死ねぇ!」
「一人で来た事を後悔しろ!」
「くたばれ!」
「煩い虫じゃの。《
地震のような足音が牢屋を揺らす。しかしそれも、数秒後には完全なる沈黙へと変わり果てる。
コツ、コツ……兵士のものとは違う足音。それが次第に近づいてくるのが分かる。
「やぁ少年。ここを出ないか?」
「……は?」
なぜ、僕の前に来たのだろうか。一切分からない。
「《
響く轟音、崩れる
「妾と共に来い」
僕の世界には、色がついた――
無色と魔導師 ねくしあ@カクコン準備中…… @Xenosx2
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