(1)

 翌朝、扉を開けると目の前にメェルは立っていた。ちょっと怖かった。だって、結構な早朝だと思うんだ?まだ日が昇り切ってないし。扉開けたら、下から覗きこまれるこの感覚、どんなにかわいい子でも怖いだろうな。

「おはよう」

「おはよう…ございます」

「それじゃあ、行こうか」

「はい…行きます」

 もしかして眠いか?何か機械的な返事しか返ってこない…アンドロイドにすり替わってしまったとか?!そんな馬鹿な事はあるまい。とりあえず、森に向かって、そこら辺に居る魔物を観察して決めるか。街を出て、森の中に入る。

「あれとかどうかな?」

「どう…とはなんでしょう…?」

「狩れるかな?」

「多分…ですけど…?」

 見るからにカモノハシが巨大化しただけの魔物が居る。ここは異世界だっていうのに。カモノハシってどう戦うんだ?そもそも、なんでどの魔物もでかいんだ?いいご飯でも貰ってるのか?う~ん…とりあえず、戦ってみるとしよう。

 今回の戦闘は二人での共同作業!初めての二人の戦闘に緊張が走ります!どの世界でも、おとりに使うのは良くない、という事もありますからタンクとしての役割をしっかりとこなしてもらう必要があるのですが…オーキチ選手は理解しているのでしょうか!聞いたことは会っても、理解は出来ない、といった所でしょう!

「こっち…です」

 おっと?メェル選手、自分がタンクをするためにヘイトを貰う作戦をする!こうなると、オーキチ選手が飛び込んでいくのは、メェル選手が攻撃を弾いた直後という事!短いと数秒、長くても数十秒で飛び込む準備をしなければならないでしょう!さぁ、カモノハシは飛び込んできて…見事に弾いた!このチャンスを逃すまいとオーキチ選手がメェル選手の背後から飛び出して果敢に切りかかる!誤算だったのは、このカモノハシが身軽という事だけです!

「なんで空中でジャンプ出来る?!」

「獣人も…できます…」

「まじか?!」

 ここで初めでの情報、獣人も二段ジャンプが可能という事です!物理の限界を超えている!このカモノハシ相手に敗北してしまう可能性すら出てきたわけです!今日限りで解散してしまうのか?!メェル選手は前に出て、もう一度弾く準備をしています!しかし、魔物はそれを見据えて急に方向転換!オーキチ選手の方へ一直線です!

「うわ?!俺かい!」

 オーキチ選手はこれを切り上げで躱していくが…なんと?!やはり見た目通りの生物だ!毒爪を出して相手をひっかこうとしている!これにはオーキチ選手も驚きです!身軽な上に毒爪まで持つ完全無敵の生物相手に、どう対処しようというのか!ここで、メェル選手が後ろから角で渾身の一撃!!

「良い攻撃だね」

「びっくり…しました…体が勝手に動きます…。」

 オーキチ選手が能力を隠した影響でメェル選手は驚いている!実況能力はやはり他者にも影響を及ぼすようだ!魔物は背中を気にしている様子です、痛がっているというのか。両者態勢を立て直すが…魔物が何かを飛ばして来た!メェル選手はここで前に出て、その何かを弾く…これは毒爪だ!クナイのように飛ばして来たそれに、驚きを隠せない!

「マジか…飛ぶんだこれ」

「ですね…」

 そんな二人を見て、魔物はさらにお怒りの様子!これは…魔物はイチャイチャはおてんとうさまが許しても、この俺様が許さない、そういっているのかもしれない!地団太を踏んでいると思ったら…高速移動を繰り返し始めた!標的をとらえる事は困難になりました!

「手札多すぎでしょ?!」

 魔物の姿をとらえようとしても、何も見えない!羊はあまり目が良くないですからね、これは二人とも万事休すか?!おっと…?魔物は強さを見せつけようとしたあまり高速移動のし過ぎで疲れてしまった!なんというあほかわいい行動なのか?!いや…違いますね?これは背中の傷が痛んでいる!メェル選手のファインプレイです!

「行きます…!」

 メェル選手はそのまま、前に詰めていく!オーキチ選手も同時に詰めます!この試合においての最大のポイントはメェル選手にあると言っても過言ではない!角攻撃によるカウンターと大楯からのパリィが有効な相手だ!ここで決めきることができれば、無事勝利となりますが、違和感に襲われている様子です!こんなに弱るはずがないのだ!

「メェル待って!」

「はい…え?きゃぁ?!」

 瞬く間にメェルの大楯は魔物によって弾かれてしまった!これは…大ピンチです!メェル選手は立ちすくんでいて、魔物は今にもメェル選手に噛みつこうとしている!魔物の嘴にはきっと毒がある事でしょう、カモノハシですから!このままいけば、毒を喰らってしまう事に…どうしようというのか?!

「いや…あった、方法が!」

 メェル選手が綿毛になった!ふわふわっと相手の嘴を躱していく!いくら高速で動ける魔物と言えど、オーキチ選手の思考力には勝てなかったようだ!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る