四話 仲間の特徴と連携

 どうしたものかな。メェルを見つめて悩む。別に、メェルが問題を運んできたわけではないのだけど…セットで考えなければならない問題に直面している。仲間との連携とスキルの詳細だ。多分、これから先はどんどん魔物も戦闘もレベルアップしていくと思う、今から先を見据えてトレーニングしたって早くはない、むしろ遅いかもしれない。

「どうしようか?」

「どう…とは?なんでしょう…?」

「なんていうの?連携の練習とかしないとかな?って」

 メェルは目を細めてこっちを見つめてくる。お腹がいっぱい過ぎてちょっと思考が出来ないけれど…多分だけど戦闘を数多くこなしていくしか方法はないんだろうな。強い魔物と戦う必要はないだろうし、出てきた魔物をかたっぱしから倒していくか?

「そういえば、他の獣人とメェルだけ違う見た目だよね?」

「はい…毛を収納できます…!」

「そっか…明日また狩に行く事にしようか」

「はい…?」

 羊の特性を当てはめるなら、動物の中では賢い方ではある。問題は臆病な性格。群れで生活する羊は仲間と別れたりするときにパニックを起こしたりする。戦闘の場面でパニックが起きると非常に危険だな。逃げてくれればいいんだけど、その場で立ち尽くすとかだと…まずい。

「今日は…解散ですか…?」

「そうだね、どこかに宿泊できる場所はあるかな?」

「あっちに…あります…!」

 メェルの指さす方向に視線を向けると大きな建物がある。あれの事か、遠目で見ても大きいんだけど?あんなに止まる事なんてあるのか?まぁ、大きい分にはいいか。ギルドの調理場から動きだして、その方向に向かう。何故かメェルもこっちに着いて来る。ん?どういう事?

「もしかして、あれに泊ってる?」

「はい…狩人には安いんです…」

 すごい…充実してるな?!こんなにいい領土なのに、戦争の真っただ中とは…本当に嘆かわしい。いつ攻めてくるか分からないし、住民も今は居心地が悪いだろうな…。

「まじか…?!本当に大きいな」

 宿を見上げると首が痛くなるぐらい大きい。この文明の感じでどうやってこんなに高くまで建設出来たんだ?この建物以外は二階、三階建てぐらいなのに。これは…少なくとも十はあるだろ。木製の重い扉を押して入ると、真ん中に受付があって両脇に階段があった。

「宿泊をお願いします」

「お二人分の宿泊ですか?」

「いえ…?メェルはここに泊ってるんじゃ?わっ?!」

 メェルは何故かふわふわの綿毛みたいな見た目になっていた。全身もこもこで顔も見えない、どうなってるんだこれ?!触ってみると、結構しっかりした硬さをしている。ウールか…確かに少しちくちくしたりするしな、うん。

「メェルさんですね?」

「はい…そうです…」

「お部屋は三階なので、メェルさんの隣の部屋にどうぞ」

 鍵を渡されて、階段を上る。メェル…俺を盾にしてどうする?!これからいろいろな所に戦闘に行くのに、受付に緊張して綿毛になっていたら…逆に刈られちゃうよ?!

「ていうか…ここすごくない?」

「そう…ですか?」

 階段は螺旋階段で渦巻くように、二本の階段が混ざり合わないように出来ている。片方の階段は奇数の階に、もう片方の階段は偶数の階にしか行けないように出来ている。さらに、長い廊下には、部屋がちゃんと間隔をあけて並んでいて、木の扉で施錠できるようになっている。

「天才が建てたんじゃないか?」

「へへ…ありがとう…ございます」

「え?メェルが建てたのか?!」

「いえ…私の両親…です」

 両親か。そういえば、前でも思ったけど、羊は群れで暮らす習性を持っている。何故メェルは一人で生活しているんだ?うん…何となく想像できるから、聞くのはよそう。

「連れ去られました…人間に…」

「うん、聞くのはよそうと思ったら予想外だった」

「…?」

「それは許せないな。」

「はい…両親を連れて帰ります…」

 メェルの目に一瞬炎が宿った気がした。意思は強いんだ、俺をもし群れとして認識できるのなら、これからの戦闘でなくてはならない存在になるはずだ。

「俺…人間だけど良かったの?」

「裸サル…じゃないんです?」

「誰がハゲ裸サルじゃい!!」

「ふふ…そこまで…言ってないです」

 メェルは楽しそうにクスクス笑っている。俺の事を信用してくれているのか…はぁ…重たい。期待とか信用とか…言葉で簡単に言い表せるけど、言われた本人は気づかないうちにプレッシャーを感じているんだよね。

「明日は部屋の前から直接行こうか」

「はい…分かりました」

「じゃあ、お休み」

 そういって扉を閉める。ベッドに寝転がって考える。これだから人間はとか、人間なんて、そう思っている自分も人間だ。難しい問題に直面したな…俺の外見だけで襲ってくる程憎いと思う魔王国民なんかも出てくるだろうな。そんなことを考えていたら、眠りに落ちていた。

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