3話
自分の見えている世界が、ほかの人と違うことは、物心ついた時にはすでに理解していた。
白と黒のみで作られた世界はつまらない、とたくさん言われた。
小学校でもたくさんからかわれた。
「お前、きいろとあかの違いもわかんねーのかよ!」
と言われて、人知れず涙を流した。
みんなと見える世界が違うせいで、小学校で友達はできなかった。
けれどしょうがないと、子供ながらに割り切っていた。
紫と、出会うまでは。
同じ小学校以外の子供と知り合うのは初めてだったので、紫にはすごく興味がわいた。
神主さんから、彼女が人ではなく『あやかし』というものなのだと聞いた時は全く意味が分からなかったが、色を操る力を持っているのだ、と聞いてなんとなく特別な子なのだな、ということだけはわかった。
「ほら!青くなった!ね?」
紫は、いつだって‘‘色を楽しんでいた‘‘。
彼女が楽しそうに作る青色の桜や桃色の水を見ることができないのはとても残念だったが、それ以上にこちらまで楽しくなってしまうほど、紫は楽しそうに色で遊んでいた。
そんな紫が、葵は大好きだった。
それ故に紫を中学校に通わせようともした。無理だろうと思って提案したので、紫が学校へ行く、と言った時は驚いた。
だがそれ以上にうれしかった。
これからはもっと近くで紫の色を感じていられるのだ、と。
たとえ、色というものがわからなくても、葵の中学の3年間はこれ以上ないほど色鮮やかだった。
白と黒だけの世界であろうとも、ここまで美しい世界を葵は身をもって知ったのだった。
それゆえにか、中学の3年間は瞬きひとつの間に終わったような感覚だった。
ここで関係が終わりだというわけでもないのに卒業式でぼろぼろと泣いたのを覚えている。
紫は、人と年を取る速度が違う、ということもあり一緒に高校に上がったりはしなかった。
それでも、何も変わることはない。紫は今までもこれからも変わらず葵の大親友なのだから。
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「?なにこれ」
「明日来ればわかるよ」
ただそう言われ、紫から綺麗な石を受け取った。
紫と祭りを回れないのは残念だが、気にしないことにした。
帰ることを促すかのように、神社の鐘がごぉんと鳴った。いつもより耳に残るその音色が、美しく、寂しく体の内側で響いた。
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