第18話 テキイ
「遅くなってすみません! おはようございます……?」
「……」
今日は午後からマリチェリのメンバー五人全員でのダンスレッスンがあるのだが、午前中の仕事の影響で少し遅れて到着した。しかし中に入るとみんなの様子がおかしく感じた。
「真桜、ちょっといいかしら?」
少し強い口調でそう言ってきたのは、長い黒髪に少しキツめの目が特徴のマリンチェリーのリーダー、
「……なんですか?」
「あなた……彼氏いるんでしょ?」
「!……」
突然の発言に私はドキリとする。なぜ華凛さんがその事を知っているのか。私はまさかと思い李砂ちゃんの方を見る。李砂ちゃんと目が合うと彼女はバツが悪そうに俯く。
「李砂が言ったわけじゃないわよ。……まぁ、李砂は知っていたみたいだけど。あなたこの前、山北に電話したでしょ? その時私一緒にいたのよ。それで会話が聞こえてきたの。彼氏に会うために地元に帰ったって」
「…………」
確かにあの日の夜、私は山北さんに電話をかけた。あの時は楓君の事でいっぱいだった。だから山北さんがメンバーの誰かと一緒にいるかなんて考えてもいなかった。
「私たちは恋愛禁止ってのは知ってるでしょ? もしあなたに彼氏がいることが世間にバレたらどうするつもりかしら?」
そう言って華凛さんは突き刺すような視線で私を見つめる。元々華凛さんとはあまり仲良くなかった。というよりもあの人は私の事をよく思っていない。
……悪い言い方をすれば年下で後から入ってきた私が自分より仕事が多いことを妬んでいる……。
「……」
「今私たちは仕事も増えてきてていい感じなのよ。もし彼氏と別れないっていうなら……マリチェリを辞めてもらうわ」
「か、華凛さん! ……な、何も辞めるまではしなくても!!」
さっきまで俯いてただ下を見ているだけだった李砂ちゃんは華凛さんに意見をする。
「李砂、あなたはよくても私達が嫌なのよ。ねぇ唯、葵?」
残りの二人、
「……」
これがみんなの答え。いくら社長の許可は出ていると言ってもルールを破っているのは私だ。そもそも私だけ特別扱いなのは良くないからみんなに隠していた。それがバレてしまったのならみんなの反応は仕方のないこと。
「……わかりました」
「?」
「私、マリチェリ辞めます」
「っ!?」
私の発言にその場にいたみんなが驚くのが分かった。私がそれなら彼氏と別れますというと思っていたのだろう。確かに普通のアイドルならそうかもしれない。彼氏か仕事、二者択一。
……けれど私にはマリチェリを辞めてもアイドルを続けることが出来る理由がある。
「ま、真桜……あなた本気で言ってるの?」
「はい。というか辞めろと言ったのは華凛さんですよね? 良かったじゃないですか。言った通りになって」
私はそう言ってじっと華凛さんの目を見つめる。先程までの高圧的な態度は無くなり、予想外の発言に動揺しているのが見てとれた。
「……今の私があるのはマリチェリのおかげです。感謝はしてます。……今までお世話になりました」
私は深く頭を下げてお辞儀をする。そしてちょっとと呼び止める声を無視して部屋を出た。
……マリチェリを辞めるのは確かに寂しい。けれど、丁度良かったかもしれない。みんなの態度で黒木さんの所へ行く決心がついたのだから。
私にとって一番大切なのは楓君。なんなら私は楓君のためにアイドルになったくらいだ。
楓君と一緒にいれないのなら……マリチェリに残る理由はない。
今まで楓君に会えないのを我慢してやってきたけど、この前会いに行って気がついた。やっぱり楓君がそばにいないとダメなんだって。それに麗奈ちゃんと二人でいるのかと思うと不安で不安で仕方ない。
黒木さんの所に行けば楓君をマネージャーとして雇ってくれると言った。それならずっと一緒にいられる。楓君も仕事が貰えるのだから、わざわざ意味の無い大学に行く必要もない。
「フフ……待っててね楓君。もうすぐだから……。これからはずっと一緒に……!」
★★★
〜おまけ〜
マリンチェリーのメンバー紹介。
19歳 AB型
イメージカラー:桜色
センターを務めるグループの人気No. 1。
ファンに対しての優しい対応と天然な言動が人気の秘訣。ふわふわしてるが意外と芯は強い。
22歳 B型
イメージカラー:灰色
マリチェリの最年長でありリーダー。立ち位置は真桜の右隣。長い黒髪が自慢のクールビューティー。華凛を女王様と呼ぶ一定のドMファン層がいる。
19歳 O型
イメージカラー:黄色
明るさと元気が売り。立ち位置は真桜の左隣。年齢は下だが古参メンバー。明るい金髪が特徴で派手なものを好む。学生時代はバンギャだった。黒木レンを崇拝している。
20歳 A型
イメージカラー:橙色
立ち位置は李砂の隣。グループ一の巨乳を活かしてグラビアの仕事が多い。多趣味で趣味系の仕事が多い。特に好きなのは麻雀と熱帯魚飼育。
20歳 A型
イメージカラー:水色
立ち位置は華凛の隣。大人しくて流されやすい性格。グループでは地味な方だが、ファンサが良く、一部に熱狂的なファンがいる。
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