ピンクのオーラ
クロノヒョウ
第1話
「ねえ知ってる? おでこのニキビの意味」
「知ってるよ、想われニキビね」
「えっ、想われニキビってアゴじゃなかったっけ?」
「えー、そうだっけ?」
「えー、どっちだろ」
放課後、教室を出ながら私たちはいつものように他愛もないおしゃべりで盛り上がっていた。
「あ、じゃあこれ知ってる? オーラってあるじゃん」
「オーラ?」
「オーラってあの、あの人のオーラハンパない、とか言うやつ?」
「じゃなくて、人間はオーラっていう光みたいな物に包まれてるんだって」
「へえー」
「なんかコワッ」
「それがね、人によって色が違うんだってよ」
「何それ! ヤバいね」
「ヤバいヤバい。私真っ黒とかだったらどうしよう」
「あはっ、黒はないわ」
「それでね、相手のオーラがピンクだったら、その人は私のことが好きなんだって!」
「えーっ!」
「うそ!」
「それ便利じゃね?」
「でもさ、私たち、オーラ見えないじゃん」
「そうなんだよねぇ~」
「あははっ、意味なし!」
皆で笑いながら校舎を出てグラウンドの中を歩く。
新学年が始まり、仲良しメンバーがまた同じクラスになれたことで私たちのテンションは上がっていた。
「あ、あ、見て! 水原先輩だよ!」
「本当だ!」
「カッコいい~」
サッカー部のキャプテンである水原先輩はとにかく顔もスタイルもよく、学校ではアイドルなみの人気だった。
その姿を見れただけでも今日はラッキーだ。
そう思った瞬間グラウンドに強風が吹き荒れた。
カバンでスカートを押さえもう片方の手で乱れる髪の毛を押さえながら水原先輩の方に目を向けた時だった。
もうほとんど散っていた大量の桜の花びらが風で宙を舞っていた。
それがちょうど水原先輩の周りをピンク色に染めていたのだ。
「あ、ピンクのオーラ」
「ピンクのオーラだ」
風が止み、私たちは顔を見合わせた。
「先輩、私のことが好きだったんだ」
「いや、私だって!」
「私だもんね!」
「絶対私だった」
そう言って笑いながら、私たちはまた歩き始めた。
ピンクのオーラ クロノヒョウ @kurono-hyo
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