簿中説明 神の核と怪獣 

 怪獣は、世界がまだ複数の国に分かれていたころ、まだ列島州が単一の国だったころから、確認されていた生き物だ。

 特殊な鉱石物質によってなる第二の心臓、神核を持ち、それによって法力と呼ばれる世界の力の流れを操る。法力は自在に姿を変える力で、その性質はあらゆる生物にとっては毒となる。神核は宿ったものの属性読み取りそれを宿し、その属性の形の通りに法力を変化させて操るのだ。神核の属性は、列島州においては漢字一文字であらわされる。『火』や『水』はたまた『音』や『食』というように。

 この力であるものは火を噴き、あるものは波を起こし、またあるものは自然界のあらゆる音を再現するのだという。その威力、脅威は、過去の人間たちからすれば太刀打ちできないほど強力なもので、故にか過去の人々は、怪獣を神や妖怪の一種としてあがめ恐れていたという。


 その怪獣優位、人類劣勢の状況を覆したのは、人類側の怪獣の存在だった。神核を持つ少女たち。

 彼女らは理性を有するがゆえに、自身の神核の力を理解し、操り、怪獣たちを打ち破る。その力の優位性と、神核の持つ強大な力が示されたのは、今から八十年も前のある戦いがきっかけだった。


 とある一体の怪獣が、無数の怪獣とその眷属の大軍を率い、砂海より列島州に接近。列島州の守備隊と各地で激突、これを蹂躙し、進軍していた。この大軍は一夜にして列島の三分の一を破壊し、列島の人間に怪獣への恐怖を植え付けた。

 列島州はこのまま、怪獣の群れに蹂躙されるのかと、誰もが思った。


 しかしそうはならなかった。


 一人の少女によって、この怪獣の群れは全滅したのだ。一夜にして、跡形もなく。群れを率いていた怪獣の腕だけが、戦場には残されていたという。

 彼女は、怪獣だった。神核を持ち、法力を操り、怪獣から生み出した剣を手に、同胞たちを殲滅した。その彼女の活躍と存在をもって、人類は怪獣に対抗する最も良い方向へとたどり着いた。

 神核を持つ少女たち、通称「巫女神」を戦力とし、怪獣との戦いにあてさせる。以後、多くの民間企業、また政府直轄組織にて巫女神は重要な存在として扱われるようになった。彼女たちの持つ神核も併せて。


 最初の巫女神が使った神核によってなる大剣。これを参考に多数の、神核をもとにした道具が生み出された。これらは神機と呼ばれ、既存のあらゆる道具を凌駕する、すさまじい性能を有していた。この道具群の登場も合わさり、怪獣と人間の実力は拮抗したとされる。


 それから八十年。怪獣によって過度な侵略の憂き目にさらされなくなった人類は、何物にも脅かされない平穏な時代を手に入れていた。

 言葉始と結以の兄妹はそんな時代の中、細々と探偵屋を営んでいるのだった。

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