みんな訳ありヘイウッド商会
||*||:||*||:||*||:||*||:||*
ブランドン・ヘイウッドは、長い黒髭と厳つい外見とは裏腹に、情に厚い男だった。
彼はマチルダのあまり良くない家庭環境について話を聞き、大いに心を痛めた。彼女が没落した家の為に無理矢理結婚させられそうになっている現状を知り、心配してくれた。
「元々あまり良い親ではなかったのですが、無理矢理結婚させられそうになったことでほとほと愛想が尽きました。これを機に家を出て自立するつもりです」と、マチルダはブランドンに告げた。
「マチルダさん、もしよければわしの商会で働かないか。読み書き計算のできる人を探していてな。マチルダさんは女学校で勉学に励んでいたそうだし、申し分のない人材だ」と彼は申し出た。彼の声は静かだったが、その誠実さは明確に伝わってきた。
マチルダは驚きと感謝の表情を浮かべ、心が躍った。
彼女はブランドンの申し出を受け入れ、その日からヘイウッド商会で働くことになった。
「ブランドンさん、ありがとうございます!」
マチルダは喜びを隠せなかった。家を出て、職を探すところから始めなければならないと思っていたところに、助けの手が差し伸べられたのだ。
仮にブランドンの営むヘイウッド商会が怪しいところだったとしても、本当に蹴ってでも脱出する覚悟は出来ている。
ブランドンは、彼女が新しい職場で頑張ることを願い、彼女を温かく迎え入れた。マチルダは、ブランドンの優しさに心から感謝し、新しい人生のスタートを切ったのだ。
||*||:||*||:||*||:||*||:||*
マチルダの不安とは裏腹に、ブランドン・ヘイウッドは、マチルダを孫娘のように可愛がってくれた。そして、彼の商会で働く人々も同様に彼女を温かく迎え入れた。彼らは皆、ブランドンに助けられた者たちであり、それぞれが訳ありの事情で商会に身を置いていた。
ブランドンの優しさに触れ、彼らは新たな希望を見出し、再出発することができたのだ。
料理人のカーティスは、理不尽な解雇を受け、酒に溺れかけていたところをブランドンに拾われた。
掃除婦のシンディは、三人もの子供たちを抱えて路頭に迷っていたが、商会で働くことができる場を見つけた。
そして、冤罪をかけられた会計士のパスカルは、ブランドンに冤罪を晴らす手助けをしてもらった。
そして自殺を図ろうとしていた所を救われた事務員のロブも、ブランドンに声をかけられたことがきっかけでヘイウッド商会にいる。
彼らは皆、ブランドンの優しさによって再び立ち上がることができたのだ。
彼らは皆、挫折と苦しみを知る者たちであり、そのためにマチルダにも優しく接してくれた。マチルダは、彼らの温かさに触れ、深い感謝の気持ちを抱いた。
ヘイウッド商会で雑用から手伝うことになったマチルダは、掃除婦のシンディから、ブランドンの人生についての話を聞いた。
ブランドンは、元々お金持ちの家系に生まれたが、詐欺師に騙されて両親を含めた全てを失い、孤独な人生を歩んできたそうだ。
しかし、彼は諦めずに再起を果たし、自らの商会を興した。
そして、行き場のない人々を雇い入れて、周囲を幸せにしているのだと。
「あの人がいてくれるから、あたしらは生きていけるんだ」と、掃除婦のシンディは目を細めて語った。
ある日、ブランドンはマチルダに、自身が長い黒髭を生やしている理由をこっそり教えてくれた。
「わしは実はとても童顔で、髭がないと迫力がなくて舐められてしまうんだ。だから、従業員の助言に従って、すごく強そうな髭を生やしているんだよ」
彼は唇の前に人差し指をつけて『内緒』のポーズをとった。
マチルダは、楽しそうにくすくす笑った。
||*||:||*||:||*||:||*||:||*
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます