僕はあの色を知らなかった

かねおりん

僕はあの色を知らなかった

生まれてこの方、僕はどうも人と違う部分があることに気がついた。


人は世の中はとてもカラフルなのだという。


僕の目に映る世界には特定の色しか映らない。


白黒テレビなんかとは多分違ってもう少しだけ知っているような色があるけど、


きっと他の人が言うほどカラフルには見えていないんだろう・・・。


でも、幼い時に気がついたから、それから中学2年生にもなった今特に見えなくて困ることもない。


幼馴染のサクラは保育園からの腐れ縁だ。


僕が小さい頃に人と違う色に見えている事を教えてくれた友達でもある。


小学校もいつでも僕についてきて毎日一緒に遊んでいた。


でも、中学生にもなると幼馴染とばかり遊んでいるなんて周りからみるとどう思われるだろうと気になって最近はサクラが寄ってきても無視して他の友達と遊ぶようにもなった。


世間体が悪いとかじゃない・・・僕が知っていたサクラは小さくて、五月蠅くて、甘えん坊で、泣き虫で、僕が遊んであげないとグズッてしまうような女の子だったのに、


ここ最近のサクラは一気に大人びて、学校の先輩たちや同級生の男子に相当モテているようだったから、僕がサクラと仲がいいことがバレるとちょっと怖い想いもしそうで、避けていた。


ほぼ1年くらいは学校で無視ばかりするものだから、サクラはしびれを切らしたのか、夜中に僕の寝ている部屋の窓に小石をぶつけてきた・・・。


サクラは隣に住んでいるからなにかあると、いつもこうして小石をぶつけてくる。


昔から夜中眠れないとそうやって僕の部屋の窓を開けさせては、屋根づたいに僕の部屋に来て、眠くなるまで一緒に絵本を読んだりしたものだ。


その絵本たちの色がサクラと僕では見えている色が違うんだと気づかされたきっかけでもあった。


久しぶりの小石に仕方なく窓を開けるとすぐさま僕の部屋にパジャマ姿のサクラが飛び込んできた。


「ねぇ、なんで最近サクラのこと避けてるの?感じ悪いんだけど」


と言う。


「いや、お前最近ほら、先輩たちとかと色々あるんだろ?僕がいると邪魔かなって思ってさ」


ちょっと違うがまぁあながち間違ってもいないようなことを言った。


「何色々って・・・変な噂立ってるの?サクラ」と本人はよく分かっていないようだった。


「いやさ、お前学校でモテてるって話題もちきりだぞ・・・そんなプリンセスの傍に僕がいたらダメだろう」


ちょっと話を盛って話したけどまぁ、伝わればいい。


「サクラ好きじゃない人からモテても嬉しくないもん」とふくれている。


「お前好きなやつなんかいたの?意外と好きなやつからはモテないもんだよな」


というと


「なにそれ・・・好きなひと・・・いるの?」と少しテンション低めに聞いてきた。


中学二年生って言ったら好きな子がいたっておかしくないどころか、妄想に拍車がかかるお年頃だぞ・・・。


「まぁ」とだけ答えると今度は


「誰?サクラの知ってる人?学校の人?」とグイグイ来る・・・。


僕はサクラの事が好きだ・・・でも、僕は人と違う色しか見えない。


これはきっと遺伝するタイプのものだ・・・。


サクラと将来もし付き合って結婚して子供が出来てその子が僕と同じ色しか見えなかったらサクラはどう思うか・・・なんて妄想するとサクラに告白することなんてできない。


「ねぇ!教えなさいよ・・・」と少ししょんぼりするサクラ。


知ってどうするつもりなんだろうか・・・他の子だと思っているなら応援でもしてくれるんだろうか・・・でも、僕はサクラに嘘はつきたくない。


「ああ、お前のよく知ってるやつだよ、五月蠅くて泣き虫で甘えん坊ですっごく可愛い子」と嘘は言ってない。


すると下を向いたサクラは俺のパジャマを掴んでとても静かに涙を落した。


「え?どうした?大丈夫か?サクラ」というとふいに、顔をあげて


僕の唇にキスをしてきた。


「バカ!ずっとずっと好きだったのに・・・他の子になんかファーストキスあげないんだから!」と喚いている。


僕はそんな泣き虫を抱きしめて、耳元で囁いた。


「ほら、よく泣いて甘えん坊で五月蠅くてすっごく可愛い子だろ?」と


サクラはそれを聞くと「じゃあ・・・サクラの事彼女にしてくれる?」と言い出した。


「僕はさ、お前が知ってるように空の一部の色とお前の名前のサクラの色の区別が出来ないんだよ・・・いつかもし、いやほんともしもだよ・・・結婚したりして子供が出来たりしたらさ・・・遺伝したらサクラ嫌じゃない?」と聞くと、


キョトンとしながら「サクラには君が見えない色が見えているかもしれないけど君にはサクラが見えていない色が見えているかもしれないんでしょ?それって二人合わせたら誰よりもカラフルな家庭が出来ると思わない?子供がどっちに似てもどっちかは同じ色が見えているかもしれないし、違う色が見えているかもしれないじゃん?」


まぁそうかもしれないけど。


サクラは続ける「それにね、言ってなかったかもしれないけど、サクラはね・・・右目で見える色と左目で見える色が少し暗さと言うか明るさというかちょっと違う色に見えてるんだよ・・・視力検査の時に気がついたんだけどね」


そうか・・・サクラの目の色僕には左右同じに見えていたけど・・・そういえば親が昔言っていたような気がするな・・・。


サクラの目はオッドアイで緑と赤なんだって。


そのせいでサクラは虐められて友達が小さい頃から居なかったから、僕とばかり遊んでたんだっけ・・・。


そうか僕には見えていなかったんだサクラの右目と左目の色の違いが。


そっか、


「僕はサクラがずっと好きだよ今までもこれからも、一緒にいろんな色を見て生きよう」


そして、僕からサクラにキスをした。


「ていうか、お前もう子供じゃないんだからここで寝たらダメだろ・・・」と言ってもどうやら今夜は帰ってくれないらしい。


我慢の一夜だ・・・。


おしまい

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