黒歴史

だら子

第1話

1人暮らしをして早5年。時は平成。


合コン、あり。

出会い、なし。


合コンでの出会いは難しい。


図書館で同じ本を手にとって目を合わせる。

「これ落としましたよ?」と声をかけられる。


そんな素敵な出会いはないのかね?


「はああー」


今日も出会いに嘆きながらパーカとスエットパンツのままマンション向いのコンビニに行く。


セコマだ。

癒しのセコマ。


今日も私はビールとつまみを買いに行く。


エレベータに乗り込むと、上の階から降りてきた、見たことがないイケメンがいた。


なぜだろう。すごく視線を感じる。


ああ私が絶世の美女だったらここで話しかけられてススキノ行くんだろな。

ああ私が北川景子だったらここで即‥


という妄想中に1階に到着。


イケメンはエレベータの開くボタンを押してくれる。


そして。

イケメンは私を追い越さない。


えっ。もしかして、もしかして、


あると思います。


そんなことを考えつつ牛歩で進む。


すると


「あの」


きたー!!

やっぱり、「あの」から始まるんだよ。「あの」から。


はい!!


気分もハイ!!



彼は私から目を逸らす。


このマンションのエントランスに彼と2人。

静寂が訪れた。


「あの、言いにくいんですけど」


そうかそうか。


言いにくい!?

え、そんな謙虚なの。

ま、人を誘うときってそうなるよね。


私は、人生一番可愛い「はて」顔する。


するとなんとも言えねえという顔で彼が口を開ける。


「パーカーの中にストッキングが入っています」


「では」


彼はダッシュでセコマに走っていく。



パーカーの中にストッキング?


私は恐る恐る首の後ろのパーカーに手を入れる。


そこには、本当にストッキングが入っていた。



「っつ!!」


1人ぐらしの洗濯物。

つっぱり棒と呼ばれる、壁と壁の間に棒を挟んだ棒で干される。


ストッキングを吊るした隣、ハンガーで干したパーカーを取り込む時に入れたんだ。



わたしはセコマには行かずもう一度エレベーターの上ボタンを連打する。


心の中のピンクもセコマのオレンジも消えた。



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