その赤き衣を纏う美しさよ
柊
赤。
濁りも、淀みもない、澄み切った赤。
鮮やかに赤々と染まったその衣は、まるで血で染めたかの様で一際目立つのもあっただろう。
――何と、美しいのだろうか
赤は、魔を祓う。
赤き衣で身を包み、その手には桃の枝を携え目に見えぬ悪鬼を斬り裂く姿は、圧巻である。
ひらり、ひらりと長い裾の先まで計算された様に華麗であった。
そうして最後の悪鬼を斬り裂くと、玲凛は神々に向かって叩頭(地面に頭を擦り付ける礼)をした。
ゆっくりと体を起こした玲凛は、
「
陛下、という言葉で漸く目が覚めたのか、我に返った様に一拍置いて口を開いた。
「見事であった。これならば明日の神事でも問題無かろう。
純粋な褒め言葉に、玲凛は頬を赤らめて喜んだ。それもそのはず。本来、此度の神事の舞は別の者が舞う予定だったのだ。だが、残念ながらその者は脚を痛めてしまい、到底皇帝陛下の前になど出せないという神殿の意向により急遽、玲凛が選ばれたのだ。それが決まったのも、ほんの二日前のことである。
代理とはいえ、
今回の神事で、ひと騒動あったら……などと心配していた
「では、明日は宜しく頼む」
「はい!」
「また脚を痛めたなどという話にならないように、今日はもうゆっくりと休みなさい」
「わかりました」
「あと、舞が終わった後に舞台から飛び降りるなど、陛下の御前で不敬な事はしない様に」
あれは勢い余って……と、ごにょごにょと口の中で呟く玲凛は、自分が粗野な行動をとった事を思い出したかの様に、しゅんと丸くなってしまった。
「……気をつけます……絶対にしません」
「ああ、その方が良いな。其方の舞はとても美しかった、出来れば明日だけでなく、これから先も見たいから」
そう言って、
玲凛は、慌てた様に恥ずかしげに袖で顔を隠す。赤き袖の向こうには衣の赤にも等しく、頬が赤く染まっていた。
その赤き衣を纏う美しさよ 柊 @Hi-ragi_000
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