第11話
体育館では、武と湯築が皆を学園の屋上へと誘導しようとしていた。
「走れない人は、奥に待機! すぐにおれが連れて行くから!」
(できるだけ急いでくれよ!)
武は体育館の入り口付近で、人々を避難しながら素早く人数を数えていた。
「慌てないで! 学園の屋上からならヘリコプターの離着陸ができるわ!」
湯築は負けじと率先して誘導していた。
救援物資が着くころには、体育館も水没してしまうくらいの水かさが膨れ上がっていた。
四方から渦潮が、ここ鳳翼学園目掛けて近づいてきた。
まるで、意志があるかのように……。
ところで、この学園には生徒会長の吹雪 勇がいるのだが、すでに一人だけで屋上に向かって走っていた。
薄情のように思えるだろうが、本当は……やはり薄情なのである。
吹雪は屋上に辿り着いた。
応援のヘリなど自衛隊たちが何か巨大なものと戦っているのを目の当たりにして、震え上がった。
龍である。
旧校舎の捜索も終え、高取は麻生たちと屋上へと廊下を走りながら、今は屋上は危険だと警告をしていた。
高取は二番目に走っている卓登に近づいた。
「屋上には、今はあまり近づかない方がいい!」
「なんで?!」
「いいから! 立ち止まって、落ち着いて!」
卓登は真っ青な顔で屋上を目指しながら叫んでいた。
「落ち着けるわけないよ! もうすぐ水没するんだぞ!」
「世界中がね! 今はまだ行かない方がいい!」
高取は走りながら今度は卓登の後ろの美鈴に言った。
「もう始まっているの!」
「何が?!」
一番目を走る麻生は卓登よりも足が速い。武がいると思われる屋上の元へと一目散であった。
全員は、高取の助言を無視して屋上に辿り着いてしまった。
ボロボロとなった屋上のアスファルトの床には、元はヘリコプターであったであろう残骸が幾つも散らばっていた。
何匹もの龍がこちらを見た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます