第2話

 渦潮の中から巨大な龍としかいいようのない生き物が数匹でてきたのを、真っ青に見つめている宮本博士は、独りごちた。

「あの、巫女の言う通りだ……」


 今まで、呑気にドーナツを齧っていた小太りの研究員が思わず口を開けてドーナツを床に落としまった。

「古生物反応って、魚影じゃなくてあの龍ですね……。夢の中みたいで信じられないですが……。でも、あれから数年もかかったんですねー。聞いたことのない神社から一人の巫女が来て、なんでもお偉いさんたちとも仲が良かったんで、びっくりしちゃいましたが、あれよあれよとその道の権威の生物学者や考古学者の私などの研究者たちが集まって……一大プロジェクトの出来上がり……宮本博士はあのとびきりの美女の巫女のこと知ってますか? 電話番号とか? まさか名前すら知らないとか?」


 宮本博士は頬を膨らませた。

「ないんだよ。まったく……今まで一度も見たり聞いたりしていないんだ……名前すらね……残念だがね……」

 宮本博士は平静な顔で首を振りながら言った。


「そういえば、宮本博士は確か妻子持ちで……愛妻家でしたね……」


 そうこうしていると、床に落としたドーナツを屑籠に捨てていた小太りの研究員は、ハッとして端末に目を戻した。


 一斉に、他の研究員たちが驚愕した。


 そこには……。


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