他校交流戦 5

                  2115年7月18日(木)「秋津島学園」

                                1年1組教室



 PAに通知があって呼び出された俺たち秋津島学園のアンダーティーンとそのチームメイトは一年一組の教室に集められた。


 座席が足りていないので、机類はすべて床に収納されている。


 定刻になってすぐに教室の扉が開き、秋津島学園のバトルダンス監督が姿を現した。


 まあ、この教室に集められていることから分かる通り、さつきちゃんなんだけどね。


 さつきちゃんは教室の一番前に立つと、俺たちを一瞥した。


「よーし、おまえら、揃ってるな。これから交流戦の組み合わせを発表する。まずはこちらの出場者からだ。先鋒は長島直弥ながしまなおや


 学内四位、先の日曜日に俺を倒した相手だ。

 三年生。

 俺をメタるために重装甲型バトルドレスに乗っていたが、本来は戦闘機型の乗り手だ。

 戦況判断が早く、熱量管理がべらぼうに上手い。

 流石の三年生だ。


「次鋒は船瀬昭文ふなせあきふみ


 学内三位、生粋の重装甲型バトルドレス使い。

 三年生。

 でかい放熱板に圧倒的な火力で短期決戦を仕掛けるのが得意。

 被弾しながら、先に相手を落とすタイプだ。

 当てられる数よりたくさん当てればいいと思っている。

 重装甲型の基本だな。


「中堅は平田亮二ひらたりょうじ


 学内二位、戦闘機型バトルドレス使い。

 三年生。

 もともとは重装甲型の乗り手だったらしいが、瑞穂に感化されて戦闘機型に乗り換えた。

 まあ、俺と戦うときは重装甲型だったんだけど。

 操縦技術が高く、回避が上手い。

 瑞穂に影響されたと公言するだけのことはある。


 こうして見ると秋津島学園は本来は戦闘機型の乗り手が多いんだな。

 俺をメタるために重装甲型に乗り換えた相手に負けていると思うと悔しい。


「副将は秋津瑞穂」


 もはや説明の必要もないだろう。

 学園最強の戦闘機型バトルドレス使い。

 二年生。

 回避、射撃、熱量管理、戦況判断、どこを見ても高いレベルで完成されている。

 秋津島学園の在校生では唯一のマスカレイド出場者。

 二年生になってからは俺以外には一度も負けていない。


 さてこうなればチームオーダーが出たと考えるのが必然だ。


 秋津島学園はチームとして勝つために星をひとつ捨てる気でいる。


「大将は三津崎青羽だ。なぜこうなったのかは分かるな?」


「俺しか世界一位に勝てないからでしょ」


「アホは置いといて、選ばれなかったメンバーもなんらかの事情があれば急に出場ということもありうることは念頭に置いておいてくれ。我々は勝つぞ。三津崎に出番を作らせるな」


 とは言っても交流戦は交流を目的とした試合なので、勝敗が決まった後も試合は行われる。


 だからこっちが四タテして俺の出番とかでもいいのよ?


 でもできれば二勝二敗で出番が回ってくるのが望ましい。

 でなければエリザベス・ベイカーを追い詰めることが難しいからだ。


 国を背負っていると思いこんでいる彼女に現実を分からせるためには、その背負ってる国ごとぶっ飛ばしてやるしかない。

 それでアメリカという国が小揺るぎもしないことが分かれば、彼女も肩の荷を下ろせるだろう。


「向こうも出場者の発表が終わったようだ。組み合わせが出るぞ」


 PAの画面に目を落とすと、すでに組み合わせが表示されていた。


 興味があるのはただ一点。

 俺の相手。ジェファーソン記念校の大将だ。


 エリザベス・ベイカー。


 当然、その名前がそこにあった。

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