第4話 色肉寝皮(ショクニクシンヒ)
「カ、カグヤ生徒会長」
「魔法を使っての遊戯は魔法場のみと決まっています。いけませんよ」
遊戯と言われてしまったシエンは顔を歪めるが、序列一位であり学園の生徒会長であるカグヤ=ツキノミヤには逆らえず忌々しそうにカグヤの胸元で輝くバッジを睨みつけた。
「カイガ君。どういうことですか?」
「まあ、イロイロだ」
「分かりました。では、ソウ=ハヤカワ君、そのイロイロの説明をお願いします」
カイガに問いかけた笑顔のままくるりとこちらを向いたカグヤに、何故自分の名をと聞けぬままソウは出来るだけ詳細に状況を語った。
そして、一通りの説明が終わるとカグヤは頷きながら口を開く。
「なるほど、話は分かりました。それで、カイガ君、あなたはソウ君を手に入れたいと」
「その通り」
「え、ちょ、ちょっと待ってください! ボクは物じゃないですよ!?」
慌ててソウが抗議するがカグヤはにっこりと微笑むだけで何も答えない。代わりにカイガが口を開く。
「ふむ、君の意見は通用しない」
「なっ!? そんなの横暴だ!」
「そこのうすぼやけた紫が言っていただろう。序列が全てだと。いや、そうなると、やはり、序列二〇位が序列七位に逆らうこと自体がおかしな話なのだが」
カイガがギョロリと視線をシエンに向けると、シエンは悔しそうに唇を嚙みしめながら睨み返し口を開く。
「そ、そもそも! てめえが序列七位ってのが、気に喰わないんだよ! 定期試験も出ない実戦経験もない奴がよお!」
「わかりました。では、こうしましょう! 模擬戦です」
「は?」
カグヤの提案にシエンは思わず間の抜けた声を上げるが、カグヤはまるで意に介さず話を続ける。キラキラと輝く髪を揺らして踊るようにステップを踏みながら間で楽しそうに語り出すカグヤ。
「貴方とカイガ君の模擬戦を行いましょう。彼はカイガ君が序列七位なのが納得いかない。カイガさんはソウさんが欲しい。であれば、模擬戦で決着をつけるのが手っ取り早いとは思いませんか?」
カグヤの提案にソウは思わず身体を乗り出し、カグヤに詰め寄る。
「いや、手っ取り早いっていうか……!」
「……へ、俺はいいぜ。そこの絵描き風情が模擬戦でいいのなら」
シエンはニヤリと笑い、カイガを挑発する。だが、当のカイガは気にした様子もなくカリと傷を掻くだけ。
「絵描きに風情を付ける意味が分からないが……ふむ、そうだな。それはそれで面白そうだ」
「決まりですね!」
カグヤがぽんと手を打ち、ソウに笑いかける。だが、ソウには笑えない。何故自分と【七傑】が並んで景品になっているのか分からず困惑していた。だが、その直後、シエンの提案がソウをより大きな困惑へと導いてしまう。
「……そうだ。2対2にしようぜ」
「は?」
突然のシエンの提案にソウは思わず声を上げる。カイガも怪訝そうな顔をしてシエンの方へと向き直る。
「ふむ、それは何か意味があるのか?」
「……まあ、色々だよ」
(意味が分からない!)
いや、ソウにはシエンの魂胆が、発言の意味は分かっていた。
恐らく、シエンは強力な助っ人を呼ぶ。この男は、徹底的に人をいたぶるのが好きな人間だとソウは分かっていた。入学して以来初めて汚れなかった水色の自分の制服を見ながらシエンのこれまでのソウや序列の低い人間への嫌がらせを思い出していた。
ソウは額に汗を浮かべながらカイガへと視線を向けたが、カイガはにやりと白い歯をのぞかせる。その様子にソウは今日何度目か分からない悲鳴を上げた。
「そうか! イロイロか! いいだろう」
「ああー! もう!」
こうして、カイガ・ソウ対シエンとシエンの呼ぶ強者とのタッグマッチが始まる異なり、それが学園中に一気に伝わっていくこととなる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます