神々の気まぐれ

酸性元素

第1話

「うーん…」

創造神は困っていた。作り出す生物の色が決まらなかったのである。

「どったのどったの。」

軽々しい口調で、仕事仲間が彼の隣に座った。

「いやーね…この生物どうすっかなーって。虫食う生き物なんてごまんといるでしょ?

なんかこう…独創性を出せって言われてもさあ…」

彼の上司の口癖、それは

「独創性のある創造を」だった。独創性?一体どうすれば良いのだろう。先ほど言ったように、虫を食う生き物なんて、この世にいくらでもいるだろう。

「あ、じゃあさ!状況に応じて色が変わるとかどうよ?」

「おお!良いじゃん良いじゃん!それにしよう!名前はどうするよ!」

「そりゃとっておきよ!カメレオン!」

ギャハハハ、と笑いながら仕事仲間は言う。なんだかそれでしっくりときたので、それで提出することにした。

「んじゃよ…これはどうするかよ。」

「うーん……ずいぶん変わった生き物だなあ……まあ、あとは頑張れや。」

仕事仲間は、創造神の肩にポンと手を置くと、自身の席へと戻っていった。

「え?!あ、おいちょっと!待ってくれよ!」

ボリボリと創造神は頭を掻きむしる。仕方ない、家で決めるとするか。と彼は後回しを決め込んだ。


「ういーはは…帰ったぞっと…」

その日、創造神は酔っ払って家に帰った。

すると、よろよろとする彼の鞄から、ポロリと一枚の紙がこぼれ落ちる。

「んあ…?なんだこれ…ああ、仕事か仕事。そうだしなきゃねー。」

酩酊しかかった頭で、創造神はアイデアを絞り出す。

そんな中、仕事仲間の言葉を思い出した。

「状況に応じて色が変わるとかどうよ?」

そうだ、この生き物も、いろんな色をつけてやろう。同じ種類で、いろんな色を持っている。これなら、多様性があってみんな良いじゃないか。

「よっしゃあ!できた!」

そのまま、創造神は寝てしまった。




そうしてその後、提出された生き物、人間は、その多様性故に争い合い、みーんな絶滅してしまいましたとさ。めでたしめでたし。

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神々の気まぐれ 酸性元素 @sanseimotonari

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