第3話

 ガチョウの飼育先がどこなのか。

 ノクティスの市内だという。正確には、下町で飼育をしているものから仕入れたそうだ。

「ホテル。下町。ガンスの胃袋。うん~繋げるのが――」

 ミックス君と私は知りたいことを聞き出すと、注文した飲み物に口も付けずにパブを後にした。

 結局、注がれたコップの中身がなんなのか、確認できなかった。

 同居人は今更ながら「昼間から酒は飲まない」そうだ。しかも、わざわざ駅のホテルまで来て、ラウンジでお茶を飲んでいる。

 先程、彼が口にしたのは、私のポケットにしまわれた『カーバンクル』の動きだ。

 私にも、おぼろげな線が見え始めた。

「パブの亭主にしつこく聞いてきた客室係は? 十分に何か知っているとおもうが」

「……」

「宝石が盗まれた夫人の客室担当者のリストぐらい、情報部の君なら簡単に――」

「そうだ。そうなんだよ! もう少し楽しませてくれると思ったが――」

 まあ、だいたいそうだと思った。

 彼はこの宝石の件について、暇つぶしに楽しんでいたようだ。だが、問題はひとつある。


 宝石が偽物だということだ。


 ミックス君は慌てて紅茶を飲み干すと、私のほうに手を差し出してきた。

「先程のガラス玉。返してくれない?」

 別に持っていて得にはならない。

 私はすぐさま、ポケットからその宝石を出した。

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